インタビュー

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

“Yahoo! JAPANとのシナジー”で新サービスも

 ソフトバンクは9月13日、新iPhone発表にあわせて「ウルトラギガモンスター」などiPhone向けの新サービスを発表した。その場で登壇したのは、この4月に同社代表取締役副社長 兼 COO(最高執行責任者)に就任した榛葉淳氏だ。

 榛葉氏は日本ソフトバンク時代からの生え抜きで、近年ではスプリント買収の際に、立ち上げ責任者として単身渡米するなどの経験を持つ。今回、榛葉氏に新iPhoneの販売動向や今後の取り組みについてお話を伺った。

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後 代表取締役副社長 兼 COO 榛葉淳氏
代表取締役副社長 兼 COO 榛葉淳氏

新iPhone、出だしは好調

――9月22日にiPhone 8/8 Plusが発売されましたが、売れ行きはいかがでしょうか。

榛葉氏
 ひと言で言えば好調です。今年はiPhone 8/8 Plusの発売後、遅れてiPhone Xが発売される点が、例年のiPhone商戦と異なります。iPhone X発売後の動向は読み切れませんが、スタートダッシュは切れたと思っています。

――ケータイ Watchの読者にはiPhone Xを待つ方も多いようですが、どちらがユーザーの支持を集めると思いますか。

榛葉氏
 最初の3カ月は、iPhone Xを求めるお客様が多いのかなと思います。その後はiPhone 8/8 Plusを求める方も増え、1年経ってから振り返ると、iPhone 8/8 PlusとiPhone Xで半々というイメージでしょうか。

――iPhone Xは、当初の入荷がかなり限られるという噂もありますね。

榛葉氏
 こればかりは我々にも予測が難しいところですが、iPhone Xを待ち望んでおられる日本のお客様へ1日も早くお届けできるように取り組んでまいります。

新iPhoneで目指した「3つのストレス」解消

――iPhoneは3大キャリアに加え、Y!mobileやUQ mobileといったサブブランドでも扱われるようになってきています。ハードウェアとしてはすべて共通なので、サービス面での差別化が重要になると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

榛葉氏
 今回のiPhone 8は、久々にキャリアによる特徴が出たローンチだったのかなと思います。

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

 iPhoneは、どんどんどんどん進化して便利にもなってますし、エンジョイできるようになって、生活の中で欠かせないものになっています。一方で、お客様がiPhoneを使うときに、ストレスを抱えてるシーンはまだ多い。そこでソフトバンクは「あなたファースト ~ストレスフリーへ~」というコンセプトで、iPhoneを使うお客様の“3つのストレス”の解消を提案しています。

 9月に実施した発表会でもお話しした内容が、「月々のお支払い料金の負担」「通信速度制限への不満」「サポートへの不安」という、大きく3つのストレスを解消することを目指しました。

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

 まず料金ですが、新iPhoneが高額なモデルになるという予想はついていましたので、「半額サポート for iPhone」をインパクトをもって発表させていただきました。新iPhoneを48回払いでご購入いただき、24カ月目以降に機種変更される際に、残額をソフトバンクが負担する、というプログラムです。その際に端末を回収させていただくという条件はありますが、このプログラムを利用しても月月割は適用されます。お客様から見て、月々の端末代が半額になり、お財布への負担が軽減される。これが料金での1つのポイントです。

――「半額サポート for iPhone」は、iPhoneのみを対象にしたキャンペーンですが、最新のAndroidを購入するユーザーも同じ悩みはあると思います。Androidユーザー向けの購入支援策なども検討されているものはありますか。

榛葉氏
 最終的な決定はしていませんが、まずは「半額サポート for iPhone」の反響を受け止めつつ、お客様にとって一番いい形でご提供できるよう、検討している段階です。

50GBプランで“速度制限フリー”に

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

榛葉氏
 2点目として挙げた「速度制限への不満」ですが、月間容量50GBのデータ定額プラン「ウルトラギガモンスター」でお答えしました。せっかくiPhoneをお持ちいただいたからには、遠慮なく、ストレスなく使っていだたいて、スマホライフを楽しんでほしい、そういった思いで提供したプランです。

 昨年はiPhone 7の発売にあわせ、20GB/30GBの「ギガモンスター」を提供しましたが、非常にご支持をいただいていました。ギガモンスターを利用されるお客様は毎月のデータ通信量が平均で2倍近くになったというデータを目にしたことで、「やっぱり我慢されていたんだな」と実感しました。

 そんなギガモンスターですが、それでも3人に1人のお客様が20/30GBの月間容量の上限まで使い切ったことがあるというデータもありました。そこで今回の「ウルトラギガモンスター」では、月間容量を50GBに拡大しています。月間50GBあれば、一般的な用途では、ほぼ無制限と言えるくらい通信容量を気にせず使えます。

 「ウルトラギガモンスター」で容量制限を50GBまで引き上げたとしても、比例して料金が上がるのでは意味はありません。容量を上げる一方で、月額料金は7000円と、これまでの「ギガモンスター 30GB」よりも値下げしています。

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

 さらに、ウルトラギガモンスターでは、「みんな家族割」という新しい家族割を用意しました。家族2人でウルトラギガモンスターを契約いただくと1人あたり1500円引き、4人なら2000円引きです。「データ定額 5GB」と同じ料金で、その10倍の50GBという大容量を、家族1人1人が使えるというものです。

 例えば家族のうち、お母さんは5GBにいっていないけど、息子さんはいつも20GBの上限に達しているというようなご家庭でも、「みんな家族割」にすれば、全員ストレスなくお使いいただける。そういった意味でもメリットがあるプランです。

 しかも、この「みんな家族割」は、血のつながりがある“家族”でなくても加入できます。ただし、契約のためにはなにか定義を作る必要があるので、同住所であればよいということにしています。一つ屋根の下で志を共にしている仲間であれば、ソフトバンクの定義では家族です。これも大きな差別化ではないかと思います。

――今回の「ウルトラギガモンスター」は他キャリアにはない攻めた取り組みだと思いますが、反響はいかがでしょうか。

榛葉氏
 初動は、本当に明るいです。具体的な数字では申し上げられませんが、聞かれたら間違いなくびっくりされる実績がでています。

 売り場でデータプランを強制することなく、お客様にお任せするようにしていますが、むしろ「ウルトラギガモンスター」に変更されるためにご来店いただくことも多いくらい、ご支持いただいています。

――速度制限への不満に対する取り組みとしては、制限時の速度を現在の128kbpsより高速化することで解消するという方向性もありますが、その点ではどのようにお考えでしょうか。

榛葉氏
 実際にお客様からすると、上限に達したあと128kbpsだろうが256kbpsだろうが、そもそも速度制限自体がストレスになると考えています。そこでまずは、上限にいかずに思う存分お使いいただけるようなプランをご用意しました。

Yahoo! JAPAN との連携でサービス拡充へ

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

榛葉氏
 3点目の「サポートへの不安」では、さまざまなサービスを充実させることで答えました。アフターサービスでは新たな取り組みとして、ソフトバンクショップでのiPhoneの修理受付を開始しました。これは現在180店舗程度での提供にとどまっていますが、大変ご好評をいただいており、順次拡大していく予定です。iPhoneの場合、これまでは不具合があると、Apple Storeなどを利用していただくよう案内していました。とはいえ、身近なソフトバンクショップで対応できないのはお客様にとってはストレスです。これは解消していきたいと考えています。

 そのほか、毎週金曜日に特典をご用意するスーパーフライデーが、のべ4100万回利用されました。今月はサーティワン アイスクリームで実施中です。

 ソフトバンクにとって兄弟会社にあたるYahoo! JAPANでは、ソフトバンクユーザーはYahoo!ショッピングのポイント10倍になる特典を提供しています。今回、ウルトラギガモンスターの加入者にはその特典を強化し、ポイント15倍で提供しています。

――50GBという大容量プランが登場すると、データ容量を使うコンテンツの需要も高まるかと思います。ソフトバンクのコンテンツサービスについての取り組みをお聞かせください。

ソフトバンクCOO榛葉氏に聞く~新iPhoneの反響やPHSの今後

榛葉氏
 コンテンツサービスについてもデータ定額プランと同じように、お客様に必要なものを選んでいただくように徹底しています。継続してご利用いただけるよう、魅力的なコンテンツのラインナップを増やしていきます。

 その上で、ソフトバンクの強み、差別化ポイントと言えるのは、Yahoo! JAPANという兄弟がいることです。コンテンツサービスにおいては、Yahoo! JAPANと共同戦線を張って展開していこうと検討しています。

 その1つとして、Yahoo! JAPANの「スポーツナビ」と連携してソフトバンクが展開する「スポナビライブ」の例がありますが、そのほかにもYahoo! JAPANとソフトバンクのサービスを一本化していくことでシナジーを発揮できると考えています。具体的な構想はまだお話できませんが、ご期待ください。

エントリーユーザーはY!mobileで

――ソフトバンクとY!mobileというダブルブランドで展開していますが、その狙いをお聞かせください。

榛葉氏
 Y!mobileは、主にエントリーユーザーをターゲットとしたブランドです。月々の料金を抑えて使いたいというお客様のご要望に応えることを狙いとしています。

 おかげさまで、数百社のMVNOと競合するいわゆる“格安SIM”の市場で、Y!mobileは30%以上のシェアを獲得しています。それというのもY!mobileというブランドのコンセプトをご理解いただき、ご支持いただいてた結果だと認識しています。

 ソフトバンクとY!mobileという“両輪”となるブランドがあることは大切だと思っていますし、棲み分けもできているのではないかなと思います。

PHSの動向

――Y!mobileが旧ウィルコムから引き継いだPHSについて、サービスの収束に向けての現在の状況はいかがでしょうか。

榛葉氏
 4月に発表したように、PHSの新規契約の受付は今年度末(2018年3月)をもって終了する予定です。ただし、サービス自体の終了について、現時点で決定しているものではありません。当面はこのまま継続して提供していきます。

――最初にデータ定額をはじめたのもPHSでしたし、かつてはエリアカバレッジでも携帯電話に勝っていました。こうした利点から、テレメトリングやM2Mの用途ではPHSが多く使われていましたが、そのリプレイスはスムーズに進んでいるのでしょうか。

榛葉氏
 リプレイスはお客様ありきの話ですが、とはいえ最新の技術でもそうした用途をカバーできるようなものもでてきています。お客様のご要望に応じて提案していくことになるかと思います。

――最近ではLPWAでそういった用途をカバーする動きが広がっていますが、LPWAの技術の中には、ゲートウェイの配置間隔がPHSと近いものもあります。そうしたサービスを提供する上で、PHS基地局の設置場所を持っているというのは強みになるのでしょうか。

榛葉氏
 技術部門の担当ではないので具体的なコメントは控えますが、やはり有効に活用したいところです。社内ではいろいろと検討しています。

国際ローミングや新技術の活用

――スプリントのネットワークでソフトバンクのiPhoneを使える「アメリカ放題」ですが、現状はiPhone向けのみの提供に留まっています。他キャリアが国内と同じようにデータ通信ができるサービスを拡大している中で、国際ローミングを活用される方向性はありますか。

榛葉氏
 国際ローミングの活用は、お客様からご要望をいただいていますし、今後の課題としているものの1つです。ソフトバンクは、他社にないサービスとして「アメリカ放題」を提供してきた経緯もありますし、新サービスについても社内で前向きに議論しています。

――最近のトレンドとしてIoTやAI、AR/VR、ロボティクスなどが上がってきていますが、ユーザーからすると具体的なサービスのイメージが見えてこない状況です。ソフトバンクはPepperを提供していたり、IBMの「Watson」での提携など、いろいろな資産があるかと思いますが、それをどのように形にしていくのでしょうか。

榛葉氏
 ソフトバンクでは“次の一手”としてAI、IoT、ロボティクスの活用をグループ全体で進めています。

 ユーザーに近いところでいくと、IoTの分野では、「家」を大きな市場として捉えたときに、どのようなサービスが提供できるかは常に検討しています。スマートフォンの次の形がどのようにでてくるかは分かりませんが、IoTデバイスはやはりあると便利な存在ですよね。

 AIでは、法人向けに「Watson」を活用したソリューションを販売しています。例えば、企業の採用活動は、担当の人事のノウハウだけでは上手くいくとは限らないものですが、Watsonが採用候補者を、社風に合うか、将来活躍できるかも含めて分析して人事をサポートします。

 Watsonについては社内でも30~40の活用事例があり、法人向けの提供も進んでいます。近い将来、一般のお客様にも目に見える形で登場することになるでしょう。

――本日はどうもありがとうございました。