インタビュー

ファーウェイLi ChangZhu氏が語るライカとコラボした理由

AI、スマートデバイス――次の狙いは?

 ライカとのコラボによりデュアルレンズというスマートフォンのトレンドを作り、業界をリードしてきたファーウェイ。同社はなぜカメラにこだわるのか、また、今後どのようなことにチャレンジしていくのか。深センにあるファーウェイ本社にて、Director, Handsets Strategy & Business Development Deptとして端末事業を担当するLi ChangZhu氏にグループインタビューする機会を得たので、その模様をお届けする。

Director, Handsets Strategy & Business Development DeptのLi ChangZhu氏

長く使ってもパフォーマンスが落ちないファーウェイのスマホ

Li氏
 私の担当は、ハンドセットの戦略およびパートナーシップです。ファーウェイに入社して21年になるのですが、元々はネットワークインフラの部門で3Gの無線システムを担当していました。そして2011年にコンシューマービジネスグループに来ました。無線の方では3Gのシステムと試験用の端末の開発を手掛けていたのですが、こちらに来てから、端末というのは基地局と比べると小さい製品ですが、複雑さでいうと基地局などよりもはるかに複雑だと思います。

 かつては数百社にのぼる通信事業者を相手に仕事をしてきたのですが、コンシューマービジネスグループに移ってからはお客様は数十億の端末のコンシューマーに変わりました。しかも端末業界の方がよりお客様のニーズが要求が高く、過去10年間はフィーチャーフォンからスマートフォンに変わったというというような大きな変化がありましたので、非常に競争が激しい業界です。その中で生き残るためには、継続的にイノベーションを起こして、より品質の高い製品・サービスを打ち出すことで消費者の信頼と理解を勝ち取ることが大事だと理解しています。

 過去10年間、非常に幸運なことに確かに私たちのいるところはチャレンジとリスクに溢れていたのですが、スマホへと移り変わる大きな変革が起きて、弊社はその流れにうまく乗ることができました。このようにしてグローバル市場である程度の実績を打ち出すこともできるようになりました。今後も多くのチャレンジが我々を待ち受けていると思います。

――ファーウェイは最近急速に魅力的になってきたメーカーですが、注力してきた技術分野は何でしょう。

Li氏
 弊社が一貫して注力してきたのは、技術のイノベーション、品質、サービスの3つになります。これらに持続的に取り組んでいます。まず品質ですが、どの消費者は手に取った端末には簡単に故障してほしくないわけですから、社内の各プロセスのチェックや材料のサプライヤーとの間で品質を保証するための仕組みを構築してきました。

 数字を引用して説明させていただきますが、FFR(Fractional Flow Reserve)という故障率を表す指標があるのですが、こちらを用いて計っております。弊社の場合、全てのハンドセット製品、ハイエンドのものから100~200ドルのエントリーモデルまでを網羅した時の平均FFRが3%です。これは世界基準と言えるほどの良い成績です。製品によっては、数千万台出荷しているモデルもあるのですが、こちらのFFRでも2.x%と、やはり高い数値が出ています。しかし、我々はこれに満足はしておらず、より高いレベルの要求を設けることで社内に改善を促しています。

 技術革新について少しご紹介させていただくと、イノベーションについては長年取り組んできている分やではありますが、前年の売上の10%の金額がR&Dへつぎ込まれています。新技術の開発などに用いられます。消費者にしてみれば、新しい端末を手にした時、まずその見た目、触り心地、主にこの2つを真っ先に見たり触ったりして試すのですが、技術的な用語に言い換えるとID(Industry Design)とCRF(Conditional Random Field)になるのですが、今回初めて面白い試みを始めました。今回、P10とP10 Plusに新しいカラーを導入しました。ダズリングブルーとグリーナリーの2色になるのですが、PANTONEと業務提携することで新しいカラーを導入しました。

 端末で一番よく使われるのはカメラ機能だと思うのですが、これは上位3位に入るほど頻繁に使われる機能だと思います。他にはブラウジングやSNSといった機能です。弊社の場合ですと、P9の時からライカとの業務提携を行っています。昨年はMate 9、今年はP10と、ライカとパートナーシップを組むことで写真の品質を上げてきました。例えば、写真を撮る時に絞りが大事になるのですが、P9では2.3、P10では1.8と機能を向上させてきたのですが、これも絞りだけでなく周りの部品にも影響されますし、さらに絞りの数字を向上させながら端末自体を薄くしなければいけませんので、弊社でも工夫をしました。こうした画像生成技術でライカの力を借りながら、それをどんどん向上させてきました。ライカとは戦略的なパートナーシップを組んでいます。

 製品にどういった形で反映されているかというと、一つが光学のパフォーマンス、もう一つが画像の品質なのですが、ライカと共同開発してチューニングして、最終的にはライカの専門家による主観的・客観的な試験などを通してチェックすることで合格したものだけライカとプリントできます。ようやくお墨付きがもらえるのです。画像の品質についていろいろな取り組みを行ってきたのですが、例えばポートレートモードというのがあるのですが、それにもよく表れています。アップルが新製品を発表したばかりですが、同じようにポートレートモードが研究されています。消費者が何を求めているかの表れだと思います。

 また昨年、大きな投資を行いました。それはAndroidのOSに対して最適化を行うことです。Androidのスマホを使い続けると、だんだん遅くなったり、動きがカクカクしたりするという問題があり、メモリーもなぜか少なくなっているというような声が聞こえてきます。Androidはオープンソースで門戸が大きく開放されているということで、いろんなアプリと互換性を持って、どんなアプリにも対応できるようなものです。しかし、そのデメリットとしてアプリの管理が緩くなってしまう。そこで使われるアプリが制限されずに長い時間使われてしまうと、そこでメモリーが消費されてしまったり、電力が一気に食われてしまったりすることが起きます。これまでAndroidのスマートフォンではこうした問題が頻繁に起きていました。

 弊社では組織的に専門家を集めて、こういった問題の切り分けからシステムの最適化に着手しました。具体的には、ファイルやドキュメントの整理であるとか、メモリーをどう効率よく使うか、アプリの権限の管理、CPUのスケジューリング、バックグラウンド、ウェイクアップ機能の仕組みをどうすればいいのかといった、さまざまなところで改善を行って、当初設けた目標というのは、端末を12~18カ月使った後でもそのパフォーマンスが当初より20%以上下がることがない、というものだったのですが、今のところ達成できています。

 弊社の場合、自前でこういったエージング用のラボを持って、そこで試験をしているだけでなく、外部の試験機関とも協業して一緒に評価しています。例えば、ドイツのconnectという評価機関でも評価してもらったところ、弊社の端末のパフォーマンスが年間目標を達成できています。もし日本でも同じように評価できるメディアやラボがあれば、弊社としてもぜひ一緒にやりたいと思います。これは消費者にとってメリットのあることですから。

光学ズーム関連の新機能にチャレンジ

HUAWEI P10 Plusのデュアルレンズ

――デュアルレンズは他社もどんどん搭載してきていますが、どうやって差別化していくのでしょうか。

Li氏
 デュアルレンズを搭載し、ライカと提携した一番の目的は、ユーザーに最もよい画像品質をお届けしたいからです。こうしたカメラ撮影を通して体験をよくして、撮影を楽しんでいただきたいという思いがあったからです。今となってみればデュアルレンズというのは大きなトレンドになっています。

 もちろんレンズが1つと2つとで大きな違いがあります。弊社の場合、デュアルレンズにするためにいろんな取り組みを行っています。

 1つが光学のモジュールで、この品質を良くすることです。それにはモジュール自体の設計から手掛ける必要があるのですが、精密機器に関わる製造技術が関わってきます。日本の企業がこの分野で世界に先行しているので、数多くの日本企業と連携・協業しながらそれをやっています。

 2番目は画像の品質をよくしていくことです。カラーもモノクロ、動画も含めて、画像品質を良くしています。それにはデジタル処理であるとか、スローモーション、スーパー夜景撮影といったいろんな機能を搭載することによって良くしています。

 3つ目は、デュアルレンズを搭載するにあたって、いろいろな機能をあわせて開発しなければならないのですが、深度(奥行)を検出するための機能であったり、絞りを大きくしていくものだったり、新しく被写体が人間だったり物だったりするときに、それを立体スキャンできるような機能も今後導入していく予定です。

 4つ目は、新しいカメラモジュールの開発を行っているところです。それはデュアルレンズに限らず、新しいものを開発中で、それは光学ズームに関する新しい機能をライカとともに取り組んでいます。今後、1~2年後の新製品で実現していきます。

――もう一つ、トレンドとして狭額縁で縦長の有機ELを採用する例も増えています。ファーウェイとして、どう見ていますか?

Li氏
 弊社ではフレームレスと呼んでいますが、これも大きなトレンドになっています。18:9というアスペクト比も今後主流になっていきます。同じように複数のメーカーがこれを採用することで、同じチャレンジに直面することになります。例えば、アップルの場合ですと、指紋認証をなくして顔認証にしました。それも一つの方法です。ファーウェイも他のメーカーも、もちろんいろいろな方法を考えています。縦長になったことで、UIのデザインもそれに合わせて変えなければいけなくなります。ファーウェイとしてもフレームレスには取り組んでいきます。

――防水防塵への対応や耐衝撃性能については、どうお考えでしょうか。

Li氏
 弊社はスマホに関しては、まだIP68のような防水防塵の基準に合わせた形では導入していません。それにあった設計の仕方が求められます。それを実現するための弊社ならではの取り組みがあります。

 私はP10 Plusを使っているのですが、ちょうど1カ月半前、出張でホテルでの会議に参加していました。その夜、ホテルの部屋にいて、バルコニーが付いていたので、そこに立っていました。下にはプールがあって、夜はライトアップがされていてきれいだったので、端末を手すりのところに置いて写真を撮ろうとしました。それが落ちてしまったんです。急いで水着に着替えて下に行ってプールに潜って端末を見つけることができました。時間にして10分ぐらいでしょうか。回収して電源ボタンを押してみたところ、無事に起動して使えました。その後、各機能が使えるかチェックしたところ、大部分の機能は問題なく使えました。一部の機能はちょっとおかしかったりするようなことがあったのですが、会社に持ち帰ってサービス部門の同僚に見てもらったところ、ドライヤーで乾かしたら問題なく動くようになりました。

 私自身の実例からも分かるように、スマホの落下、防水防塵に関しては、いろんな工夫がなされています。ただ、対外的にあまり宣伝していないだけです。弊社としては、こうした起こる確率が低いアクシデントが起きた時に、それがプロテクションとして役割を果たす機能を持たせることが目標です。。

――光学ズームを搭載するというお話ですが、ファーウェイはカラーとモノクロという2つのカメラで高画質を目指してきました。他社はすでにワイドとテレを組み合わせたデュアルカメラを作っていますが、ファーウェイも同じ方向になるのでしょうか? その時の画質はどうなるのでしょう?

Li氏
 これまでモノクロとカラーでズームをせずに撮った写真というのはきれいにできるのですが、そこでもしズーミングが行われるのであればデジタルズームになり、解像度が損なわれ、その分、画質は落ちます。そこで、1つが23~25mm、もう1つが50mmと、だいたい2倍ほど違う異なるレンズを使うことで、1つのデジタルズームと比べた場合と画質は当然良くなります。昨年発売したMateでは、すでに業界で共通している方法を使って実現しています。

 今後、光学ズームを実現したいのであれば、光学のモジュールと設計に対して新しい技術を導入しなければいけません。このチャレンジというのは主に2つあって、1つが画像がズーミングした後に大きく変えられないこと、そして、ズームした後にサイズが大きくなってしまうことで、これを乗り越えて、さらに高い信頼性で量産できるようにしなければなりません。そこで方法として挙げられるのは、画像センサーの設計を変えることでデジタル信号を直接処理することです。すると画像センサーの設計がこれまでと大きく違ってきます。光信号を直接デジタル処理するという技術については、海外のいろんな研究機構や大学でも研究されていますので、弊社はそこに非常に注目しています。

 せっかくなので、弊社のカラーとモノクロのレンズによる画質をどのように保証するかについてご説明しますと、まずカラーレンズは画像全体を担当します。モノクロレンズはフィルターを取り除いているので、光を多く取り込めます。ですので、カラーレンズで撮った写真をベースに、モノクロレンズの光、影、色の濃淡などの情報を使って調整します。モノクロレンズだけを使って白黒写真も撮影できます。ライカのモノクロームと同じような白黒写真が撮れます。その画質はライカの専門家がチューニングして、お墨付きをもらっています。ですから、モノクロレンズだけを使って撮った白黒写真も評価が高いのです。

――これまでカメラ機能の向上に注力してきた背景を教えてください。

Li氏
 一番はユーザー体験です。最初にたくさんのユーザーの声があって、もっと良い写真が撮れるようになりたい、というニーズがあったからです。我々も写真の品質が高まれば高まるほど、どんどんユーザーもカメラ機能を使い始めるという現象に気が付きました。

 カメラが好きな人はいろんな写真を撮って楽しみたいですし、一般のユーザーも写真の画質に関していいものを求めますので、そもそも従来のカメラの光学の画質をどうスマホで再現するかというのは、非常にクレイジーな考え方ではあるのですが、どうすればいいのかと考えが至りました。従来のカメラのセンサーとレンズは非常に大きいものです。それを非常に小型なスマホの中でどう再現するかは、そもそもすごく難しい挑戦でした。できるだけ従来のカメラの画質に近づけることによって、ユーザーの満足度も目に見える形で上がっていきました。

 従来のカメラ産業でいろんな技術や経験が持ってわけですから、そこで何とか勉強できないかと考えました。特に光学の設計です。それから画像の品質もそうなのですが、自分たちのように分からない人が悩んでいても仕方ないので、パートナーシップを通して一緒にやろうと思いました。そこでパートナーを探そうとなった時、やはり一緒に組むなら最強のパートナーがいいということで、ライカとの協業という話になりました。これがライカと協業したかという、そもそもの始まりです。

 ライカは特に光学設計に関して100年の歴史があり、カメラの製造も手掛けています。ライカアカデミーというものもあれば、世界の名立たるフォトグラファーがライカのカメラを愛用しています。ライカの画質やセンスが世界中で広く認められていますから、ぜひ一緒にやりたいと思いました。

 スマホを使った写真撮影というのは、非常に面白いターニングポイントに差し掛かっていると思います。ちょうど100年ほど前、ライカから35mmの携帯型のフィルムカメラが登場しました。それまでは非常に大きくて重たい、高価なものばかりで、限られたお金持ちの人たちしか使えないものでした。この35mmのフィルムカメラが出てから、持ち運べるようになったので、撮られるものの内容が一気に豊かになりました。動くものだったり、戦争だったり、ジャーナリズムにおいても非常に活用されるようになりました。

 今のスマホの写真の品質も十分に高いので、毎日数十億枚と言われるの写真がSNSにアップロードされています。その内容は、人々の生活だったり、社会だったり、100年前と同じように撮影する人が増え、撮影する内容が大幅に豊かにすることができました。ですから、カメラの文化が大きく変わる時代に来ているのではないかと思っています。

 ファーウェイでは、専門機関と一緒にスマホによる撮影が写真文化にどういった変化を与えているかという研究も行っています。先日、ニューヨークのInternational Centre of PhotographyというところとNEXT-IMAGE Awardsを共同で開催するということもアナウンスしました。ユーザーの皆さんには自分の生活の素晴らしい一瞬をカメラに収めていただき、投稿していただければと思います。こうした活動を通して、カメラの文化が今後どう発展していくかを研究していきたいと考えています。

ポストスマホ時代にどう立ち向かうか

――世界シェアを伸ばすファーウェイですが、スマートスピーカーなどのポストスマホと言われるようなデバイスにどう取り組んでいくのでしょうか。

Li氏
 スマートデバイスに限らず、スマホでは大きな変化が起きています。スマホに関しては脱構築が起きているのだと思います。具体的には、今までスマホに集結していたような機能がどんどん分解していって、いろんな他の端末に移し替えられて、そこでも発展していくということになります。例えば、これまでコミュニケーションを主にスマホでやっていたものがスマートスピーカーになったり、モニタリング用に身につけるのであればスマートウォッチの方が適していますから、そういった機能がウォッチやリストデバイスで実現されて、その機能がどんどん専門家していきます。

 弊社はこのトレンドに着目して開発を進めています。例えば、弊社のスマートウォッチの第2世代ですが、今年の2月、MWCで発表しました。一番のセールスポイントはSIMカードを装着できるところです。先日、アップルの発表会を見ていたのですが、そこでApple Watch 3が発表され、同じように通話機能が搭載されていました。ウォッチという製品形態ですと、強みを発揮して、より通話や運動、健康管理といった機能が集約されて発展していくのだろうと見ています。弊社でも同じような製品をすでに発売していますし、また新しい製品も開発しているところです。

 かといって、全てのスマートデバイスが成功するかというとそうとも限らず、みんなと手探りでいろんなことを模索しながらやっているところです。まず改善しなければいけないのは、主にユーザーエクスペリエンスに関連した2つの問題です。

 1つはインタラクション。音声で操作すると効率は高いのですが、一度にたくさんの情報を得ることができるのは動画であったり手でタッチして操作することだったりします。AmazonがEchoを出しましたが、今ではタッチパネルが付いたEchoが売り出されています。それが多くを物語っていると思います。

 2番目の問題点というのは、ハードウェアを作るのは簡単なことですが、ユーザー体験というのは充実したサービスが伴っていないと体験が悪くなってしまいます。サービス面で追いつくことが大事です。これもEchoを例にすると、サービス面の充実が成功に繋がっています。

 その中でスマートフォンの重要性がさらに際立ってきます。いろんなスマートデバイスが出てくると、スマートフォンがコントロールセンターのような役割を果たすことになります。AI技術が出てくると、デバイスとクラウドの連携を取る意味でスマートフォンがより多くの情報を得る源となると私は信じています。

――今後、AI技術は標準的に搭載されていくのでしょうか。また、それは決定的な差別化の要素になり得るのでしょうか。

Li氏
 今後弊社の端末のユーザーには、AIによってもたらされる新しい能力とユーザーエクスペリエンスの改善を全て享受いただきたいと考えています。NPUの計算能力は独自開発したKirin 970で実現しており、より複雑な計算はNPUが行うのですが、CPUやGPUでも同じような計算は行えます。例えば、弊社のEmotion UIにはすでにAIの機能が備わっています。例えば、ファイルやメモリーのフラグメンテーションを無くすといったところでAIの技術が使われています。

 Kirin 970はAIの第一歩でしかありません。人間の神経細胞、ニューロに対応した計算処理能力をスマホで実現する世界で初めてのチップセットですが、第二歩としては、これを使っていろんな計算処理を最適化することで、具体的なユーザーエクスペリエンスに繋げることです。さらに、こうしたハードウェアとソフトウェアのプラットフォームを第三者の開発者にオープンにすることで、このプラットフォームの上で自分たちのアプリを最適化してAIの機能を搭載したり、向上させたりすることで、全体のユーザーエクスペリエンスが向上することを目指しています。

 デバイス側のAI能力は非常に重要であると考えています。アプリは早いレスポンスが求められますし、デバイス側で全て処理できるのであれば、ユーザーの個人情報、プライバシー、セキュリティも守られる形になります。

 電力消費が激しいんじゃないかと思われるかもしれません。例えば、ARやVRを楽しんでいる時に一気にバッテリーが無くなるということがあったので、その辺を重点的に取り組んできました。まず、チップセットを17nmのプロセスで作りました。これによってCPUと比べるとパフォーマンスが25倍、GPUと比べると電力消費が1/50に抑えることができました。

――ファーウェイが注力するカメラはユーザーのニーズが高い機能の一つですが、メッセージング、ブラウジングといったところもスマートフォンのユーザーにとっては大切な機能です。これらは最近、あまり進化していないような印象もありますが、機能改善の可能性はありそうでしょうか。

Li氏
 考えられるのは、先ほど申し上げたように、1つ目は脱構築です。今までスマホに集中していた機能がウェアラブルデバイス、IoT、スマートホームなどにどんどん分かれていくと思います。そこで重要になるのは連携機能です。連携を強化しなければいけません。今後、スマートデイバスを設計する時にさまざまな利用シーンを想定して連携を強化することを念頭に置いて行わなければいけません。

 そして、AIを導入することで、スマホはインタラクションセンターとしての機能、能力が格段に上がります。これによって今まで以上のユーザー体験を実現することができます。

 また、マルチメディアも非常に重要です。カメラ、動画、AR/VR、オーディオも重要です。新しい技術を導入する時、電池と効率が重要になります。効率については、インタラクションの効率です。今後、単独で動くアプリというのは消えていく可能性があると思います。トータルとしてスマートフォン、スピーカー、ウォッチなどを使って、すぐにサービスにアクセスできるようになりますので、いかに便利に使えるかという点で効率が重要な基準になってくると思います。