ケータイ用語の基礎知識
第808回:Bluetooth 5 とは
2017年5月30日 11:12
倍速、中継通信でエリア4倍、同報送信データ量8倍の新BLE
Bluetoothは、2.4GHzの免許不要な電波を利用する無線通信です。もともとPAN(パーソナルエリアネットワーク)と呼ばれるジャンルの無線通信規格でした。携帯電話からヘッドフォン、あるいはパソコンからキーボードやマウスなど、短い距離で電波をケーブル代わりに使う規格として開発されたのです。
2010年にリリースされたバージョン4.0では、Bluetoothには大きな特徴ができました。それは、従来の通信に加えて、大幅に低消費電力化した「Bluetooth Low Energy(BLE)」というモードが加わったことです。
これにより、ボタン電池で動くような機器でもBluetoothが使えるようになりました。おかげで、ウェアラブル機器や、遠隔センサー、IoT(Internet of the Things、モノのインターネット)機器にもBluetoothが使われ始めました。
前置きが長くなりましたが、今回紹介する「Bluetooth 5」では、BLEをさらに進化させ、さらにIoT向けに仕様が強化されました。具体的には、BLEにあったビーコン用の送信データ長を長くすることで、さらに詳細なデータを送れるようになったり、「コネクションレス」IoT関連機能が追加されていたりします。低電力モードのほかに最大出力は10倍に増加、約2Mbpsの倍速通信モードも追加されました。通信距離を最大では約4倍、同報送信機能で送れるデータ量は従来の約8倍になっています。
なお、ブランドとしては「Bluetooth」のみとされ、「Bluetooth 5」というブランド表記は用いられません。4、5といったバージョン番でブランディングすることはユーザーにとって混乱を招く可能性があるというBluetooth SIG(Bluetoothの規格化推進などを進めている団体)の判断です。
コアの仕様バージョンについて触れるときのみ、「Bluetooth 5」という用語が使用されます。これに関連して「Bluetooth Smart」と「Smart Ready」表記は、2017年1月1日で使われなくなっています。
さらに技術仕様などについて触れる場合は、「Bluetooth 5.0」「Bluetooth 5.X」を表記してよいことになっています。
中継機と同報通信であらたな応用
2016年12月にBluetooth SIGがリリースした「Bluetooth Core Specification v5.0」(Bluetooth コア仕様 バージョン5.0)によれば、Bluetooth 4.xと同様に低電力通信を志向しながらも、IoT関連の機能を強化するため、Bluetooth 5.0はさまざまな仕様追加、改良が行われています。
Bluetooth 5.0の特長は、通信速度を柔軟に変えることができるうえ、通信距離の延長/通信高速化、同報送信機能の拡充、低消費電力の維持、などを達成したことです。
そして、誤り訂正能力を強化したうえで、たとえばBluetooth 5.0では、通信速度を1Mbpsから半分の500kbps、1/8の125 kbpsと通信速度を順に落とすことができます。こうすることで、これまでより通信可能距離を伸ばせるようにしています。
なお、Bluetooth 5.0では、物理層でのデータ転送速度がBLEの2倍となっています。つまり、条件さえよければデータ伝送速度をこれまでの2倍の約2Mbpsに引き上げることも可能です。これだけの速度があれば、音楽鑑賞用ヘッドフォンなどでの利用も可能となるでしょう。
また、通信距離という点では、Bluetooth 5では「メッシュ」という新たな概念が追加されました。バケツリレーのようにデバイスを経由し、さらに別のデバイスへ中継する機能です。これまでBluetoothといえば1対1のダイレクト通信のみだったのが、中継通信で可能になったのです。
中継する機械にはあらかじめ共通鍵を設定しておく必要があるのと、基本的にリレーの制御をする機構がないためあまり中継段数を増やすことができないという仕様上の弱点はありますが、通信距離は数倍に伸ばせることになります。
しかもBluetooth 5では同報通信で多くの機器を1度に制御できるようになりました。
これらを組み合わせると、Bluetooth 5では、たとえば新たな応用としては、1台のスマートフォンで家の中の照明を一斉に点灯させる、ということも可能になるでしょう。