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機器同士がネットワークを作り上げるBluetooth Meshの特徴とは

 Bluetoothの規格を策定するBluetooth SIGは、今後本格的に展開が始まるメッシュネットワークの規格「Bluetooth Mesh」について解説する説明会を開催した。

 メッシュネットワークとは、機器同士が1対1ではなく多対多で接続し、網の目のように自網を拡張できるネットワークの総称。Bluetooth Meshは、低消費電力で小容量の通信に向けたBluetooth Low Energy(BLE/Bluetooth LE)を拡張する形で規格が策定され、Bluetoothの特徴ともいえる高い互換性と信頼性、数千というノードに対応する拡張性、攻撃から保護するセキュリティなどをメリットとして拡大を図っていく。

 Bluetooth Meshは、Bluetooth 5といった最新バージョンから提供される機能ではなく、Bluetoothの接続方法について、BLEから派生させて策定されたものとなる。このためBluetooth Meshの対象バージョンもBluetooth LE 4.0以上となっている。

 これによりBLEでは大きく分けて3つのタイプ(トポロジー)が提供されることになる。ウェアラブルデバイスなど、1対1の組み合わせで活用されるポイントツーポイント型と、ビーコンで利用される1対多のブロードキャスト型、そして今回の多対多のメッシュ型が加わる形。

 Bluetooth Meshは2017年7月に仕様書が公開され、テスト・認証ツールの提供が開始されているほか、すでにこの時点で相互運用性テストは完了、Bluetooth LE 4.0以上のチップで動作することが明らかになっている。

 8日に都内で開催された記者向けの説明会に登壇したBluetooth SIG マーケティング バイスプレジデントのケン・コルドラップ氏は、「ほかの技術では解決できなかったことが、Bluetooth Meshを導入することで最適な策を打つことができる」と、新しい接続方式であることをアピール。当初から産業グレードの規格として策定したとのことで、大規模な工場などでも利用できるよう、信頼性や拡張性、パフォーマンス、セキュリティにも優れることを強調した。

Bluetooth SIG マーケティング バイスプレジデントのケン・コルドラップ氏

Bluetoothオーディオに省電力駆動やマルチキャストを追加

 なお、BLEとは別の、クラシックな規格に位置付けられる1対1の一般的な接続方法であるBluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate(BR/EDR)については、ワイヤレスオーディオのアップデートも案内された。Bluetoothのオーディオ機能には今後、Bluetooth Low Energyの技術を導入することや、音質のさらなる向上、そして、複数の機器に同時に音楽データを転送するマルチキャスト、ブロードキャストの機能を追加予定としている。

 このほかメンバー企業を代表してWHEREと東芝デバイス&ストレージからそれぞれ、Bluetooth Meshビーコンの採用事例や今後の方向性について説明された。

WHERE 代表取締役の丸田一氏
東芝デバイス&ストレージ ミックスドシグナルIC事業部 ミックスドシグナルIC応用技術部 ワイヤレス応用技術担当 参事の足立克己氏

自宅の家電がメッシュネットワークを構築するメリット

 説明会の会場にはメンバー企業によるBluetooth Meshに関連した製品やソリューションが展示された。基本的には開発者向けのチップや基盤といった製品が並ぶなか、台湾のGuniTechは一般家庭向けの製品群を紹介。技適マークを取得して日本でも展開する予定とのことで、CEATECが開催される10月以降に本格に案内を開始するとしていた。

 GuniTechは、Bluetooth Mesh対応のLED電球やコンセント、人感センサーなど各種のセンサーをラインナップしている。一般家庭におけるBluetooth Meshのメリットは、集中制御を行うスマートフォン(ユーザー)が、メッシュネットワークに参加していれば、自宅のどこからでも利用できることとしていた。これは、各所にBluetooth Mesh対応機器が配置されていれば、1対1では電波が届かない場所にある機器も、メッシュネットワークを介して制御できることを指している。

 GuniTechでは、初期の製品において、Bluetooth Mesh対応による追加コストは、販売価格にして1000~1500円程度を見込むとしていた。

 Bluetooth Meshを利用すれば、無線LANを宅内の隅々まで行き渡るように構築する必要はなく、また制御したい機器の近くにいる必要もない。機器側はBLEとして省電力で駆動が可能。ゲートウェイの仕様もBluetooth SIGによって策定されており、構築されたメッシュネットワークがインターネットにつながることもできる。説明会では産業用途も見越した大規模な展開がアピールされたが、家庭向けの展開でも興味深いポイントは多そうだ。

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