ケータイ用語の基礎知識
第809回:Linkingとは
2017年6月6日 07:00
IoTデバイスと対応アプリを、自在に組み合わせられる「Linking」
「Linking」(リンキング)は、NTTドコモが推進するIoTプラットフォームです。IoTデバイスとスマートフォン上のアプリやサービスを、より手軽に連携できるようにしています。
Linkingでスマートフォンに登録できるIoT機器は「Linking対応デバイス」のみです。一方、スマートフォンは、Androidスマートフォン、iPhoneなど多くの機種で利用できます。NTTドコモが推進するプラットフォームですが、ドコモユーザー以外でも利用できます。
NTTドコモの「キッズケータイ F-03J」といった機種は、Linkingに最初から対応しています。同じくドコモから発売されているデバイス「tomoru」と連携させれば、たとえばtomoruの設置場所に、子供が近づいたら保護者のスマートフォンへ自動的にSMSが届く、という仕掛けを作ることができます。
似たようなことができるIoT機器は他にもありますが、Linkingの特徴は、デバイスで使えるアプリが固定されていないという点です。ハードウェアが何かを感知したらスマートフォンのどのアプリが動くのか、あるいは逆にスマートフォンのアプリから何か送ればハードウェアを動かす、といった点が自由に設定できるのです。
スマートフォンの中にあるLinkingアプリ(ライブラリ)があれば、スマホに紐付けるデバイスはLinking用であれば何でもよいとされています。対応サービスアプリもLinkingに対応していればどれでも使うことができます。
一般的にIoTデバイスを作るメーカーは、ハードウェアであるデバイスと、それを設定、操作するソフトウェアの両方を用意して、初めて商品にできます。
Linkingであれば、デバイスを作る会社は、デバイスのみを手がければよく、アプリやサービスは別の企業が提供すればよいことになります。それだけ商品を作るためのハードルが下がるわけです。
2017年6月現在、Project Linkingのサイトでは 、Linking用のハードウェアは、2メーカー12種類、対応サービスアプリは30以上のアプリケーションが公開されています。
たとえばハードウェアとして「Sizuku LED」を選び、スマートフォンに「電車の時刻カウントダウン」アプリを入れる。終電の時間が近くなるとどんどん点滅が早くなるような社会人向けの仕掛けや、同じく「Sizuku LED」と「マナーモード自動切替」アプリを用意。職場の机に近づくとマナーモードに自動で切り替わり、離席するとマナーOFFになるスマートフォンにする、というように同じハードウェアであっても、まったく違う用途に使えます。
ハードウェア | アプリ | 結果 |
Sizuku LED | 電車の時刻カウントダウン | 終電時刻が近づくと点滅が早くなる |
Sizuku LED | マナーモード自動切り換え | 職場の自席に近づくとマナーモードON、離席するとマナーモードOFF |
ハード、サービス対応アプリとも参入の敷居は低い
Linkingデバイス、対応サービスアプリとも作ることはそう難しくなく、参入の敷居は低いと言えます。というのも実は、Linking対応IoTデバイスは、ハードウェア的にはBluetooth Low Energy(以下BLE)を利用した機器そのものだからです。
しかし、普通のBLE機器が利用しているBluetoothの標準的なプロファイルではなく、専用の「Linkingプロファイル」を利用します。このため、一般的なBLE機器はLinkingアプリにペアリングできません。これは、20バイトのデータしか送受信できない標準的なBLEのプロファイルでは、Linkingの用途には対応しきれないという事情によるものでもあります。Linkingは、デバイスからスマートフォンへ、またその逆へ非常に多くの種類のデータがやりとりできるAPIを構築しているのです。
Linkingのサービス対応アプリの作成も同じく容易です。SDK(ソフト開発キット)のマニュアルに記載されているAPIの呼び出し方、マニュフェストで宣言する内容などを理解できれば、一般的なスマートフォン向けプログラムの要領で作成できます。Android向けであればAndroidの、iPhone向けであればiOSアプリ作成環境は必要ですが、それは普通のスマホアプリの作成と同じなのです。