みんなの「au 5G」

「au 5G」が届ける未来のサービスにワクワクが止まらない件

「みんなの『au 5G』」は、3月26日からいよいよ始まったauの5Gサービスの魅力をお届けする特別企画の短期集中連載! モバイル業界を取材する筆者陣が、普段のスマホライフや取材で得た最新情報をお届けする本誌人気コーナー「みんなのケータイ」からスピンアウトして、au 5Gのすべてをお伝えします。第2回は、au 5Gとともに登場したXR系サービスの総まとめ。ときどき、VRの世界に浸ったまま、なかなか帰ってこないライターの白根雅彦さんに解説していただきます。

 3月26日に始まった「au 5G」のスタートに合わせ、さまざまなサービスが発表された。auでは「AUGMENTED EXPERIENCE」と銘打ち、au 5Gによる新しいコンテンツを展開しようとしている。

 その内容はAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などをあわせた“XR”タイプのものや双方向なインタラクションのあるライブ、はたまた自由視点映像など、これまでにないものが多い。筆者が注目したのはそれらXRなサービスなのだ。

 全く新しい体験なので、どんな形になるかちょっと想像しづらいかもしれない。ここでは現状アナウンスされている情報や過去にリリースされている情報をもとに、日々、VR空間に没入して体を動かしまくり、いつの間にか上腕二頭筋に自信がついてきたVR野郎な筆者から見た、「au 5G」で提供される“AUGMENTED EXPERIENCE”を解説しよう。

渋谷の街がXRで拡張される「AUGMENTED Walk」

 第1弾のひとつである「AUGMENTED Walk」は、4月よりNETFLIXで配信される「攻殻機動隊」のアニメ最新シリーズ「攻殻機動隊 SAC_2045」とコラボ。

 1月から始まっている「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」の一環で、渋谷の街中でスマホアプリを使うと、「攻殻機動隊 SAC_2045」のキャラクタやタチコマ(多脚戦車の人だ)を現実の風景の上に重ねて表示するという、いわゆるXRのコンテンツとなっている。

5GとXRの相性が良い理由

 「5Gだと、どうしてXRなの?」とピンとこないかも知れないが、実はXRは5Gと相性が良い。XRはVR/AR/MRを総称するワードで、とくに現実風景にCGモデルを重ねて表示させるARやMR(Mixed Reallity、複合現実)を快適に体験するには、5Gは欠かせない要素といえる。

 たとえば街中で再生するタイプのXRコンテンツは、その場で表示する3Dモデルをダウンロードすることになる。3Dオブジェクトもモノによっては数十MBといった容量だ。

1月に渋谷で実施されたイベントでは、現代の渋谷に対してスマホを通じてかつての街並みを見えるようにした

 3Dモデルのデータ量は、数十分クラスの動画に比べると小さいが、ダウンロードしながら再生するストリーミング配信ができる動画と異なり、3Dモデルはデータを全てダウンロードしないと表示できない。しかも動画のように1つのコンテンツを長時間かけて消費するというものでもない。その場でパッと登場してくれないと興ざめしてしまうかもしれない。

 もし渋谷のように混雑している街中で、これまでのように4G LTEでそうした3Dオブジェクトをダウンロードしようとすると、環境が整うまでちょっと時間がかかってしまう。これが5G回線なら、混雑してる場所でも数秒でダウンロードできる。この差はかなり大きい。

XRデバイスにも注目!

 KDDIはAR/MR分野にはデバイス面でも力を入れている。渋谷5Gエンターテインメントプロジェクトでは、Varjo(ヴァルヨ)のMRヘッドセット「XR-1 Developer Edition」が使われる予定だ。こちらのデバイスはコンシューマー向け製品ではないが、非常に高精細な非透過型ディスプレイを搭載しているのが特徴なので、体験してみたい人は渋谷に行ってみると良いだろう。

XR-1を通じて、攻殻機動隊のキャラクターが目前に現れる様子を体験できる企画も!

 このほか、KDDIはARグラスのnreal(エンリアル)とも提携していて、「nreal light」の日本展開をサポートしている。こちらはグローバルでは500ドル程度で今年中に市販予定とアナウンスされ、一般コンシューマにーとってもかなり身近なものになると期待されているデバイスだ。こちらも渋谷のau直営店などで実機が展示されているので、渋谷に行くなら、ぜひお試しいただきたい。

ライブ会場の5Gでさらに盛り上がる「AUGUMENT Entertainment」

 KDDIではライブ会場と提携し、会場内にau 5Gネットワークを構築し、それを活用した新しいライブ体験の実現を支援していく。ライブ体験とも5Gの相性は良い。

 3月23日の発表会では、「現地でもっと楽しめる」「離れてても参加できる」「映像で楽しめる」の3つの要素が紹介された。

 「映像で楽しめる」と「離れてても参加できる」は、つまりライブ映像を通常の映像だけではなく、自由視点映像、VR映像などを、ユーザーのスマートフォンへダイレクトに接配信したり、ライブビューイング会場に配信したりするというもの。通常の映像であれば4Gでもある程度の画質で配信できる。でも自由視点映像やVR映像となると、5Gの高速大容量通信が活きてくる。

シルク・ドゥ・ソレイユを5Gで楽しめる……!

 たとえばauスマートパスプレミアム向けに配信予定の「シルク・ドゥ・ソレイユ」のステージVR映像は、最大で40Mbpsにもなるという。VR映像は再生時に拡大させて表示するので、細部のノイズを低減するために、ビットレートが高くなる傾向がある。

VRモードにしたところ。これスマホを利用するタイプのVRゴーグルにセットすれば目前でシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスを楽しめる

 また、自由視点映像は多数の映像ストリームを同時に配信するので、いまどきのスマホのディスプレイ解像度に見合った解像度を配信しようとすると、やはり数十Mbpsのビットレートが必要になる。そうなってくると4Gで安定的に配信するのが難しい、というわけだ。

auが目指す「5G時代だからこそ」ライブ体験も注目ポイント

 しかしライブ体験と5Gの組み合わせがもっとも生かされるのは「現地でもっと楽しめる」のポイントだろう。こちらは「ライブ会場の観客リアクションを演出に反映する」といったアイディアが発表されている。こうした演出には、通信遅延が大きな障壁となる。たとえば音楽ライブで演奏に合わせて観客が手拍子をしたりするとき、遅延が0.5秒でもあると、なんというか、ちょっと残念な感じになってしまう。ところが、「高速大容量」だけでなく「低遅延」という特徴もある5Gなら実現できるようになるのだ。

 さらに言えば、5G時代に期待されているMEC(Multi-access Edge Computing)もライブ会場との相性が良い、と考えられている。MECとは5Gネットワーク内の基地局や集約局などにサーバーを置き、通信経路を大幅に短縮して低遅延サービスを実現するアイディアだ。たとえばライブ会場内限定のサービスを提供するのであれば、その会場内の基地局に設備を設置すれば良いので、早期に低コストで実現できる……かもしれない。

 MECであればローカル通信同然の低遅延を実現できる(実際、ローカル通信なのだが)。そうなってくると、音速より速く観客と双方向通信ができる可能性も出てくるので、ドームクラスの巨大な会場で、音の伝播速度の違いで生じていた、最前列と後列とのリアクションのタイムラグもなんらかの形で超えていけるかも知れない。実際にどのように活用されるかは未知数だが、これまでにない新しいライブ体験が提供されるかも。

 MECはもう少し先のお話だが、「au 5G」では、7月に羽田空港近くにオープン予定の「Zepp Haneda(TOKYO)」、渋谷パルコの「SUPER DOMMUNE」、渋谷にある吉本興業の「ヨシモト∞ホール」と「渋谷ラフアウト」との取り組みが発表された。そうしたライブ会場がパートナーになったことで、将来的にMECのような新技術を一足早く取り入れた、新たなライブ体験を味わえる可能性もありそう。

 そのうちZepp Hanedaでは、人気アーティストのSEKAI NO OWARIによる公演に協力する予定だそう。いったいどんな新しい試みになるのか、注目したい。

クラウドゲーミング「GeForce Now」にも注目

 MECと言えば見逃せないのが、今夏予定されている「GeForce Now」というサービスだ。これは、ゲームを楽しむ際、「GeForce NOW」のサーバー側で、高精細な映像処理など、負荷がかかる部分を担いつつ、ユーザーの手元にあるスマートフォンへストリーミングでその内容を伝えるというもの。これまでのスマートフォンでは実現できなかったような映像、演出などを楽しめるようになる。どのようなサービス内容になるのか、あるいは先述したMECもどのような構成になるかはまだわからないが、注目したいサービスだ。

中継でもスタジアムでも観戦体験を強化する「AUGUMENT Sports」

「AUGUMENT Sports」としてはスタジアムと提携し、プロスポーツの新しい観戦スタイルを提供していく。この分野も5Gとの相性がよく、「au 5G」でも注目されるところだ。

 たとえばKDDIはすでに昨夏、5GやIoTを活用したスマートスタジアム構築に向け、プロ野球チームの横浜DeNAベイスターズとの提携を発表している。プロサッカーでは名古屋グランパスや京都サンガともパートナーシップを結んでいる。

 実は筆者、VR中毒なだけではなく、プロ野球の横浜DeNAベイスターズのファンで、シーズン中はネット配信中心で試合中継を視聴するし、年に数回、球場で観戦することもある。そんな筆者からすると、KDDIの取り組みには期待せざるを得ない。

 たとえば野球だ。球場で実際に観戦するのは、それはそれで最高の体験だ。でも多くの座席からバッターボックスはちょっと遠くてよく見えない。プレイの詳細はテレビ中継のほうがわかりやすい。そのため筆者は、球場でもラジオやネットで中継を視聴したり、一球ごとに速報してくれるアプリを併用したりすることが多いのだ。

 本来、球場のような人が密集する環境では、観客全員が動画などを視聴できるほどのネットワークキャパシティはない。しかし5Gであれば観客の多くが動画を視聴しても耐えられるようなネットワークを構築しやすい。また、スマホと高速通信回線があれば、ただの動画以上の中継も可能となる。

未来を期待させる「これまでの実験」

 実際に各スタジアムで具体的にどのような取り組みをするかは、まだ明らかにされていない。しかしたとえばKDDIでは一昨年、実際にスタジアムに5Gネットワークを仮設置し、それを使って自由視点映像を球場内に配信するという実証実験を行っている。

 この実証実験の内容はけっこうユニーク(※関連記事)。簡単に言うと、バッターボックスの様子をまるでゲームのCGキャラのように、好きな角度から見られるというものだ。こうした自由視点映像は多数のアングルからの映像を配信するので、かなりの高速通信が必要になるところだが、これも5Gネットワークなら球場で提供できるかも知れない、というわけだ。

2018年の実験での自由視点映像

 近い将来には、先述した“MECサーバー”を球場内の基地局や中継局に直結し、そこから直接配信することで、果てしなくリアルタイムに近い映像配信も実現できるかもしれない。もちろん映像処理にかかる時間までは短縮できないが、たとえば「次の投球の前に、直前の投球をあらゆる角度から検証」みたいな見せ方も期待したくなる。

 ちなみに前述の自由視点映像技術はKDDI総合研究所が開発しているものだが、KDDIはアメリカの「4DREPLAY」という自由視点映像にも出資し、日本展開をサポートしている。この「4DREPLAY」は2017年の日本シリーズ中継に使われた実績もあるなど、利用例は少ないながらも商用化されている技術でもある。

 日本シリーズでの中継例では、テレビ局が視点を動かせるだけではあったが、それでもリプレイ検証中にホームベースでのクロスプレイを全方位から見せるなど、かなり画期的な体験だった。もっとも、このリプレイ検証のおかげで判定が覆り、ベイスターズはソフトバンクに逆転を許したということがあるので、ベイスターズファン的には複雑な感情になる思い出もあるのだが、もしこうした自由視点映像が実現するなら、球場観戦で足りない情報量を一気に補完することも期待できる。

もちろん球場での観戦だけでなく、自宅などでの観戦体験も、au 5Gが強化してくれることが期待したい。むしろこの情勢である、球場での観戦も難しくなっているので、こうした自由視点映像やVR映像などを駆使し、実際に球場に行かないでも球場並の臨場感で、しかもテレビ中継以上の情報量で試合を観戦できるようになることを期待したいものだ。