特集:5Gでつながる未来

産業と通信の共創で日本を元気に、ソフトバンクの5G構想

 千葉県の幕張メッセで開催中の「CETAEC JAPAN 2019」で、キャリア4社のトップによる基調講演が開かれた。ソフトバンクからは、代表取締役 副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏が登壇。主に法人向けの観点から5Gの展望が語られた。

宮川氏

モノとモノがつながる時代へ

 これまでは、人と人、人とサービスをつなぐものだった通信が、5Gの世界では「人と人」「モノとモノ」がつながっていくだろうと宮川氏。これまでは人口カバレッジなどで競い合ってきたが、これからは産業のネットワークに変化する時代が訪れる。そうなると日本全国をカバーする必要がでてくる。

 しかしそこに来て、日本の5G展開は遅れているのではないかとよく言われる。3Gや4Gの時代では日本は世界に比べて一気に垂直立ち上げに成功した。5Gでも日本の立ち上げからの加速を見せてやりたいと宮川氏。具体的には2021年以降に人口カバレッジ90%を達成したいという。

 それにむけて、「Massive MIMO」技術を用いた、効率的なエリア構築や産業用ネットワークの構築に取り組んでいるのソフトバンク。特に、最規模な災害の発生の際、キャリア同士が共同でネットワークのリダンダンシー(冗長性)を検討する時期に入ったのではないかと宮川氏は語る。

 宮川氏は、台風19号で被災した基地局の写真(上図)に触れ、こうした状況のために5Gの際にはこうした有事のネットワークづくりについての検討をする必要があるだろうとした。

 「高速・大容量」「低遅延」「同時多接続」というよく5Gで語られる特長を実際にユーザーに提供できるようになるのは、2022年以降だろうと宮川氏。現在のプレサービスが終了した。現在のNSA(ノンスタンドアロン)では2Gbpsが限度ではないかと語る。しかしSA(スタンドアロン)のネットワークがリリースされてからが本格的な5G。これが2022年以降になるという。

トラックの自動運転や建機の自動化など

 ソフトバンクの5Gのプレサービス、実証実験ではトラックが隊列を組んでの自動運転や、高精度の映像を用いた建機の遠隔操作に加え、コンシューマー向けにもバスケットボールの試合のマルチアングル観戦などがある。

産業と通信で元気ある日本へ

 5Gの世界では、スマートフォンはあくまでつながるデバイスのうちのひとつ。5Gを産業のためのネットワークと位置づけるソフトバンク。「デバイスの先につながるサービスを立ち上げることなどが日本の成長エンジンになる。これが5Gに求められる世界観だ」と宮川氏。

 通信と産業はともに進化し、日本全国のあらゆる産業を高度化していく。5Gはその礎だ。その活用方法をパートナーと共創していきたい。通信と産業の共創で元気ある日本の未来を作っていきたいと宮川氏は意気込みを語る。