特集:5Gでつながる未来

「仮想化で5G時代にも柔軟な対応を」、楽天の完全仮想化ネットワーク

 千葉県の幕張メッセで開催中の「CETAEC JAPAN 2019」で、16日、キャリア4社のトップによる基調講演が開かれた。第4のキャリア、楽天モバイルからは代表取締役社長の山田善久氏が登壇した。同社は10月1日より無料サポータープログラムという形でサービスを開始した。上限である5000名を大きく超える応募があり、SIMカードの発送が始まったという。

山田氏

 山田氏は主に同社のネットワーク技術の優位性や5Gへの対応などを語った。

世界初の完全仮想化ネットワーク

 MNOとしての楽天モバイルが運用するネットワークは世界初の完全仮想化ネットワーク。従来の専用機の機器数を大幅に減らし、汎用の機器類を多く用いてネットワークの構築を実現している。機器のベンダーからは文書でなぜ完全仮想化が不可能かを説明されるなど、大きなチャレンジになったというが、10月の無料サポータープログラムにこぎつけられた。

仮想化がもたらすメリット

 山田氏によると、仮想化ネットワークのメリットは主に3点に分けられる。

 1つ目は安定性。専用の機器への依存をなくしたことで、故障時にも別の機材に容易に乗り換えられ、冗長性がとれる。また、ソフトウェアの設計上でも冗長性を確保できることという。

 また、汎用機であるが故に、ハードウェアの追加で容易に処理能力を拡張(縮小)が可能なこと、また新たなサービスもソフトウェア的に導入できるため柔軟な対応が可能としている。

 3つめは、使用する機種数を絞り込むことで、コストダウンが図れ、安定性の向上により運用コストも低減するという。

 なお、ネットワークのパラメータ設定や起動までの時間が短縮でき、アラームモニタリングや故障時の対応も完全ではないものの自動化できているという。

 モバイルエッジコンピューティングの設計を始めた段階にあるという楽天。5Gスタート時には実用化していきたいとしている。同社の仮想化ネットワークは、大きな手を加えることなくソフトウェアの変更で対応することができるという。

 5Gのポテンシャルを引き出すにはNSAではなく、SAが最適で、楽天でも5G専用のソフトウェアで動かす必要があると山田氏。楽天でも早急にSAでの5Gサービスを提供したいと語った。

 楽天の強みはグループで行っているさまざまな70以上のサービスにある。それらと連携して5Gのポテンシャルを活かしていきたいと山田氏は語る。

 楽天でもほかの3キャリアと同様に5Gの実証実験を行っている。5Gで無人配送の実現やVRなどいくつかの試験は実を結んでいる。

期待と責任を背負い

 山田氏は最後に「サービスが始まり、期待と責任をひしひしと感じている。できるだけ早く(5G)のポテンシャルを引き出し、生活がより便利になるようにしたい」とこれからのサービスへの意気込みをあらわにした。