iPhone駆け込み寺
ノートパソコンの代用として「iPad Air(M3)」はどのくらい使えるのか?
2025年3月26日 00:00
アップル(Apple)は先日、iPadシリーズの4モデル中、2モデルのラインアップを更新した。これで現行のiPadシリーズは、安価な11インチの「iPad(A16)」、コンパクトな8.3インチの「iPad mini(A17 Pro)」、スタンダードな11インチと13インチの「iPad Air(M3)」、プロ向けで高性能な11インチと13インチの「iPad Pro(M4)」の4モデルがラインアップされる。
いまiPadを買うとき、どのようにモデルを選ぶべきかは、別記事をご参照いただきたい。実は筆者はその記事を書いていて、「あれ、わたしもそろそろ買い換えるべきか」と思いつき、これまで使っていた11インチiPad Pro(第2世代、2020年発売)の入れ替えとして11インチiPad Air(M3)を購入した。
筆者が買ったのは、256GBのWi-Fi+Cellularモデルだ。iPad Air(M3)は9万8800円からだが、ストレージとセルラーを追加したことで14万800円になっている。
ぶっちゃけ言うと、今回のiPad Air(M3)はプロセッサーが変わったくらいで、前モデルのiPad Air(M2)やその前のiPad Air(第5世代)からの差分は少ない。差分が少ないと個別の特徴レビューもつまらないので、今回は11インチのiPadがどのように使えるデバイスなのか、仕事道具としても遊び道具としてもiPadをヘビーに使い倒している筆者の目線でレビューをお届けしたい。
そもそも筆者がiPadをどんな感じで使っているのかというと……
筆者は、原稿執筆や写真加工などの作業に、自宅のデスクトップパソコンのMac miniを主に使っている。一方、ノートパソコンは所持しておらず、取材先での作業にはiPadを使っている。メインのパソコンがMacだと、iPadはいろいろと相性が良く、仕事作業に使いやすい。
というのも、MacとiPadの両方に対応しているアプリが多いのだ。たとえば筆者が常用しているMacのアプリのうち、テキストエディタやニュースリーダー、各種メッセージアプリ、手書きメモアプリ、PDFビューア、生成AIアプリなどは、iPad版も存在する。ブラウザやメーラー、表計算などのアップル純正アプリも当然、Mac/iPadの両方に対応する。ついでに言えば、たいていiPhone版もある。
こうしたアプリの多くは、機能や使い勝手が似ているだけでなく、iCloudで同期できるので、同じデータをシームレスに扱える。「Macからアプリウィンドウを取り外してiPadで持ち運ぶ」という感覚に近い。
たとえば、筆者が使っているテキストエディタ「iA Writer」は、編集中でも常時iCloudと同期するので、「書斎のMacで原稿執筆中、トイレに離席したけど、ついでに冷蔵庫から飲み物を取り出し、そのままコタツのiPadで原稿の続きを書く」みたいなことが自然にできる。この原稿も半分くらいはコタツで書かれている。
メインのパソコンがMacでなくても、Webアプリをメインに使っているなら、iPadで連係しやすく、仕事などでも使いやすい。特にiPadがWi-Fi+Cellularモデルなら、常時接続にできるので、下手なノートパソコンよりWebアプリとの相性が良い。
メインのパソコンがWindowsでも、iPadはOneDriveやOffice、iCloudは使えるので、それらを駆使すれば連係できる。しかしMac+iPadの組み合わせに比べると、我慢や慣れが必要かもしれない。また、パソコン用アプリが業務に必要という場合は、iPadをフル活用するのは正直難しい。
ノートパソコンよりiPadの方が優れてるポイント
iPad、というかタブレットがノートパソコンより優れているポイントとしては、「より幅広い場面で使いやすい」ということが言える。簡単に言えば、iPadは机がなくても使える。
11インチのiPadの場合、「左手でだけ持ち、右手でタッチ」というスタイルは、やや腕力が試されるが、タッチ操作する瞬間だけなら問題ない。両手であれば、しばらくの間、持ち続けられる。立ったままでも使いやすいというのは、多くのノートパソコンに対する大きなアドバンテージだ。
もちろん、歩きながらの利用は避けるべきだが、たとえば移動中に確認したい資料を思い出したら、通行人の導線にならないところにサッと逃げ込んでiPadを取り出して確認する、みたいなこともできる。公共交通機関の座席でも、ノートパソコンよりも気軽にサッと取り出しやすい。
これが8.3インチのiPad miniなら、さらに立ったまま使いやすい。しかしiPad miniは純正キーボードもなく、文字やUIがやや小さく表示されるので、逆に卓上では使いにくい。iPad miniは持ち上げて近い位置で使うのに向いたデバイスだ。
iPad AirとiPad Proには13インチモデルもあるが、そちらは片手で持ち上げるにはキツい重さと大きさなので、卓上以外で利用したい人には不向きなサイズである。
このように8.3インチや13インチと比べると、11インチは「ノートパソコンのように卓上でも使えて、小型タブレットのように立ったままでも使える」という絶妙なサイズ感でもある。
iPadは2.6万円高いWi-Fi+Cellularモデルを選ぶことで、5G通信機能を内蔵できる。通信機能内蔵のメリットは、多くのノートパソコンにはない優位点だ。テザリング接続などの手間が省けることより、「常時接続できる」というメリットが大きい。
常時接続であれば、Webアプリはダンゼン使いやすくなるし、ローカルアプリのクラウド同期もバックグラウンドでやってくれるので、同期ミスも発生しにくい。チャットアプリはカバンの中でも新着メッセージを受信するので、ロック画面で通知を確認し、そのままロック解除して返信もできる。
一方、セルラーモデルは端末価格が2.6万円高くなり、別途回線契約が必要になる。通信回線の使用頻度が低いなら、基本料金0円の「povo2.0」で通信コストを抑えたり(ローソンで買い物が多いと更に良い)、逆に使用頻度が高い場合は、楽天モバイルのデータプランだと月額968円(3GBまで)~3168円(20GB~)なので、固定回線の感覚で使ったりもできる。
パソコンと同時使用する端末としてもグッド
筆者宅では、持ち歩かなくなった古いiPadは売却せず、パソコンのディスプレイ下にアームスタンドで設置し再活用している。やや特殊な活用事例だが、iPadはこのような使い方、パソコンと同時使用する端末としても便利だったりする。
たとえば、ゲーミングパソコンのディスプレイスタンドには、今回入れ替えとなった11インチiPad Pro(第2世代)と10.5インチiPad Proを設置している。後者は主に動画などの表示用だが、前者はMagic Keyboardを装着し、ゲーム中に攻略サイトを調べたり、メモを取ったり、各種SNSアプリを使ったりしている。
ゲーマーには共感いただけると思うが、これがけっこう便利なのだ。ゲーム中でもタスクを切り替えずに各種アプリを使えるし、左右どちらの手でも操作でき、マウスとキーボードで混乱することもない。ゲーム中のサポート端末としてのiPadは、かなり推せる。
iPad Airは旧iPad Proとサイズが同じでアクセサリ互換性あり
筆者はこれまで、2020年3月発売の11インチiPad Pro(第2世代)を使っていた。その後継として11インチのiPad Air(M3)を選んだ理由のひとつは、サイズがまったく同じだったからだ。
11インチiPad Air(M3)のサイズは247.6×178.5×6.1mm、これはiPad Airの第4世代、第5世代、M2も同じだ。そして11インチiPad Proの第1世代〜第4世代とも同じである。そのため、これらのモデルではMagic Keyboardなどのアクセサリにある程度の互換性がある。
これは買い換え時には重要なポイントだ。なにしろ最新のiPad Air用Magic Keyboardときたら4万6800円と、けっこうなお値段だからだ。筆者は11インチiPad Pro(第2世代)のキーボードを2つ持っていたので、それらを使い回せるのはコスト的に大きなメリットだった。
とくに現在は生産終了となっている旧製品の「Smart Keyboard Folio」が使えるのは、筆者にとって重要だった。Smart Keyborad Folioには現行製品にはない、「軽さ」という優れた特徴があるのだ。
iPadのMagic Keyboardは、トラックパッドやバックライト、チルト角調整、パススルー充電などを搭載することもあり、重量は600gくらいある。11インチiPad Air(約460g)よりも重たいし、装着すると1kgを超え、ちょっとしたノートパソコン並みの重さになる。
しかしSmart Keyboard Folioはというと、重量は300g程度で、iPadに装着した総重量も760g程度と非常に軽い。「なんで販売終了したんや」と突っ込みたくなるほど、優れた軽さだ。
ちなみに最新のiPad Pro(M4)はサイズが少しだけ変更され(薄く軽くなった)、アクセサリの互換性がなくなっている。また、安価なiPadも2022年発売のiPad(第10世代)から似たデザインになったが、なぜか11インチ iPad Airとは異なるサイズ、接点位置を採用したので、やはりアクセサリの互換性はない。
iPhone/iPad/Macの魅力のひとつは、サードパーティ製アクセサリがやたらと充実しているところにあるが、同じ「11インチ」の表記でも、iPad/iPad Air/iPad Proで互換性が確保されていないのは、ちょっと残念に感じるポイントだ。
iPad ProとiPad Airの違い
これまで筆者が使っていた11インチiPad Pro(第2世代)は、2020年3月発売と、けっこう古いモデルだ。プロセッサはA12Z Bionicで、セルラーモデルだが4Gのみである。
しかし不思議と、今でも使っていて動作の重たさは感じない。iPadのProモデルは強化されたプロセッサと大きめのシステムメモリーを搭載するので、同時期のiPhone/iPadより長持ちしやすい。今回は「買い替え」とは言っているが、古いiPad Proも売却予定はなく、併用予定だ。
実は11インチiPad Pro(第2世代)の方が優れているポイントもある。まず背面のカメラが広角+超広角のデュアルで、LiDARも搭載している。が、正直iPadのカメラは存在感が薄いし、これがデュアルカメラでもメリットは少ない。ちなみに最新世代のiPad Proはシングルカメラになっていて、iPhoneのようなFusionカメラ仕様にもなっていない。iPadの背面カメラなんてそんなものなのである。
iPad ProのインカメラはTrueDepthカメラで、Face IDに対応している。これはかなり便利で、スリープ状態からタップ&スワイプかキーボードの任意のキーを押すだけでロック解除できるし、各アプリの認証も一瞥するだけで良い。
かなり便利だが、あまりに簡単にロック解除されるので、人前で使う画面の大きな端末としては、「マル秘データを表示しちゃうかも」という怖さがある。あとiPhoneと異なり、iPadのFace IDはマスク着用中は使えないのも地味に面倒だったりする。
一方、11インチiPad Air(M3)のインカメラは、最近のiPadやMacで主流の超広角の「センターフレームカメラ」を搭載し、ビデオ通話時に多少動いても画角を自動補正して人物だけを切り抜いてくれる。サイドボタンのTouch IDについては、若干の押しにくさがあるが、出先では安心して使える。
ディスプレイやスピーカー、マイクもProモデルの方が優れている。しかし実際に使っていて容易に体感できるような差でもない。
たとえばProモデルのディスプレイは最大120Hzの可変フレームレート(ProMotionテクノロジー)に対応するが、そもそも画面のデカいiPadはスマホほど激しくスクロールさせないので、効果が発揮されにくい印象だ。
いろいろ使えるからコスト以上の価値を感じられるiPad
iPadはパソコンを完全に代用できるものではない。当たり前だが、パソコンを持ってない人がパソコン的な作業をしたいなら、まず最初にパソコンを買うべきだ。
しかし、すでにパソコンを持っている人がサブのモバイルマシンとして使うのなら、iPad Air(M3)は魅力的なデバイスだ。ノートパソコンの代用として使えるようになれば、5G通信機能などiPadならではのメリットを享受しつつ、メインのパソコンにはコスパの良いデスクトップパソコンを選べる。
筆者はiPadでノートパソコンを代用するようになり、2015年発売の12インチMacBookを最後にノートパソコンを買っていない。筆者はやや極端な例かもしれないが、いまのところ完全に脱ノートパソコンできてしまった。
もちろん、iPadの魅力はノートパソコンの代用としてだけではない。動画視聴や電子書籍、Webブラウジング、各種SNSなどは、ノートパソコンよりiPadの方が使いやすく、そうした用途だけでもiPadを所持する意味はある。
しかしそうしたコンテンツ消費用途だけでなく、ノートパソコンの代わりの仕事端末としても使いこなせると、iPadの価値はさらに高まる。日頃、ノートパソコンで汎用アプリやWebアプリばかり使っている人は、脱ノートパソコンの素養があるので、筆者のように“iPad依存の道”へ一歩踏み出してみてはいかがだろうか。
ケータイ Watchをフォローして最新記事をチェック!
Follow @ktai_watch