レビュー

ソニーのmocopi新サービス体験会、CESで発表されたソニーのXYNがいち早く体験できるユーザーイベントを見てきた

 ソニーは、同社のモーションキャプチャー「mocopi」を使った新サービスの体験イベントを秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区)で18日まで開催している。米国の技術見本市「CES 2025」で発表された同社の空間コンテンツ制作支援ソリューション「XYN」のうちの1つである「XYN Motion Studio」も紹介されている。「XYN Motion Studio」をユーザーが実際に体験できるのは、このイベントが初だという。

 17日に開催されたビジネスデーでは、実際に業務などでmocopiを活用しているプロユースのユーザーが中心に来場しており、「XYN Motion Studio」やVRコンテンツ向け「mocopi VR」などを体験した。

XYN Motion Studioとmocopiプロフェッショナルモード

 「XYN Motion Studio」は、mocopiのセンサーを活用した高精細のモーションキャプチャーソリューション。あわせてmocopiでは、mocopiを2セット使って、より高精細なキャプチャーができる「mocopiプロフェッショナルモード」を用意しており、「XYN Motion Studio」はこのプロフェッショナルモードによるモーションデータをより利用しやすくなるWindowsソフトといった立て付けになる。

 体験会では、ユーザーがmocopiを2セット、合計12個のセンサーを使用し、さらに高精細なキャプチャーを体験できる。

 これまでのmocopiではスマートフォンとBluetoothで接続してスマートフォンアプリまたはスマートフォンと有線で接続したパソコンで利用する形だったが、「mocopiプロフェッショナルモード」では、専用のレシーバーが用意された。これにより接続性能の向上が期待できるといい、mocopiリリース当時に見た筆者も以前と比べスムーズにキャプチャリングできていると感じた。

 また、従来の6個から12個に増えたことでこれまで装着していなかった手の甲や腕、太股の部分に装着するためのバンドが別途用意されている。

プロフェッショナルモードでは、2つのmocopiと2つのレシーバー、専用バンドセットが必要
手の甲と両腕、両太股にセンサーが追加された。識別用のシールも用意されている
センサーが増えても最初のキャリブレーションの手軽さはそのまま。基本姿勢、一歩前進、基本姿勢の3ステップで完了する
筆者に説明しながらさまざまな動きを見せるのは、mocopiチーム 事業開発/パートナー開発担当の南翔太氏
従来は難しかった着座時のトラッキングも精度が上がった

 「mocopiプロフェッショナルモード」を利用する際に必要なものは、「mocopi本体」が2セット、「専用レシーバー」が2つ、「専用バンド」が1セット必要。提供中のmocopiはプロフェッショナルモードでも使用できる。ソニーストアではこれらを「mocopi Proキット 5点セット」として提供する(14万1900円、3月25日までの予約で11万3520円)。なお、プロフェッショナルモードを使用する際は、パソコン版アプリ「mocopi PCアプリ」または「XYN Motion Studio」(月額1100円)が必要となる。

 「XYN Motion Studio」と「mocopiプロフェッショナルモード」は、3月下旬に提供される。

3月25日までは20%割引で予約購入できる

mocopi VR

 「mocopi VR」は、2024年11月に開始された機能で、mocopiのセンサーをSteamVRの仮想トラッカーとして利用できる。VRゴーグルやコントローラーで上半身をトラッキングし、mocopiのセンサーは下半身に集中して装着することで、VRChatなどのVRアプリで全身トラッキングできる。

 mocopi VRでは、mocopi1セットのなかの5つのセンサーを使用する。センサーは腰(前側、おへそあたり)と両太股、両足首に装着すると、着座の状態などこれまでVRグラスだけのトラッキングでは難しかったさまざまな表現ができるようになる。

腰と両太股、両足首にmocopiのセンサーをセット
下半身に集中して装着することで、トラッキングの精度向上が期待できる

想定以上のプロユース

mocopiチーム 事業開発/パートナー開発担当の南翔太氏(左)とモーション事業担当部長の相見猛氏(右)

 会場には、mocopiチーム モーション事業担当部長の相見猛氏と事業開発/パートナー開発担当の南翔太氏が駆けつけた。

 mocopiの発表当初は、コンシューマー向けのカジュアルな利用シーンが想像されており、VRコンテンツを楽しむユーザーやVTuberといった個人で3Dコンテンツを制作するクリエイターが中心と見込まれていた。相見氏によると当初からビジネスで3Dコンテンツを制作する“プロユース”のニーズもくみ取れればとしていたが、実際に展開してみると、ソニーグループのコンテンツ制作会社(ソニー・ピクチャーズ アニメーションやA-1 Pictures)で実際の制作現場で使用されていた。これを踏まえ、これまでの“カジュアルさ”に加え、クリエイターに対してのサポートとしてのソリューションも考えられるようになったという。「我々が想定していた以上にしっかり使われていた」とする一方、ユーザーからは「簡単で(デザインが)かわいいのはいいけど、もっと精度が上がってほしいという声があった」(相見氏)ことを受け、今回精度の向上を目指し、取り組みを進めてきた。

 今回、全く新しいハードウェアではなく、既存の製品を組み合わせたソリューションとした点を聞くと、「せっかく5万円近くで買ってもらったので、それを活用して機能強化する方が、これまでの進化の差分を感じてもらいやすくなる」(相見氏)とコメント。ただ、既存のハードウェアの機能を改善するには苦労があったようで、本会開催の1カ月前あたりでは接続性など問題が山積していたという。mocopi自体も約3カ月に1回のペースでメジャーアップデートされている。

 会場にある体験ブースの一角には、外から見えないよう囲われたブースが用意されていた。会場を案内した南氏によると、VTuberなど顔出しをしていないクリエイターに向けての配慮だといい、実際にクリエイターからの意見も取り入れながら開発が進められている。

XYNのサービスをいち早く体験できるイベント

 コンシューマー向け製品としても展開されるXYNのソリューションの1つ「XYN Motion Studio」とmocopiの新サービス「mocopiプロフェッショナルモード」と「mocopi VR」の体験イベントだが、17日のビジネスデーでは当初の想定以上の来場者だったといい、ユーザーの注目度がみえた。mocopiの簡単さや手軽さはそのままに、より高いクオリティのコンテンツ制作を老若男女問わず目指せるソリューション、サービスだと感じた。

 18日は、コンシューマーユーザーも体験できる日なので、事前申込制ではあるが興味があるユーザーは、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。