レビュー

「Xperia 1 II」レビュー ――使い勝手の進化、Photography Proの魅力とは

 ソニーモバイルコミュニケーションズから発売されたフラッグシップモデル「Xperia 1 II(マークツー)」。国内キャリアからはNTTドコモとauからリリースされている。今回は筆者が購入したNTTドコモ版の「Xperia 1 II SO-51A」のレビューをお届けする。

ソニーモバイルの最新モデル「Xperia 1 II SO-51A」

設計思想はキープコンセプト

 Xperia 1 IIはその名前のとおり、2019年に発売されたXperia 1の後継機。新モデルの開発に当たっては、基本的な設計思想はキープコンセプトで、前モデルのXperia 1にあったネガティブなポイントが解消されている。

 本体サイズは約72(W)×7.9(D)×166(H)mmで重量は約181g。前モデルと比べるとほぼ同じ大きさで、厚さで約0.3mm、高さで約1mmスリムになっている。ただし4辺のデザインが前モデルでは丸みを帯びた形状なのにたいして、Xperia 1 IIはスクエアなデザイン。そのため、実際に手に持ってみると前モデルよりも大きくなったような感触だ。

全体のサイズは前モデルとほぼ変わらない
スクエアなデザインになった

 本体カラーはブラックとホワイト、パープルの3色展開。ただし3色発売しているのはドコモのみで、auはブラックとホワイトのみ。そのためパープル版を望んでいた筆者は先に販売がスタートしたau版ではなく、ドコモ版を購入したわけだ。ちなみに前モデルでは逆にドコモは全4色のうち2色だけ、auは4色全てを販売。前モデルはソフトバンク版もあり、そちらは3色だった。販売台数の予測なども絡んでくるので、難しいことは重々承知だが、できれば各キャリアとも全カラーモデルを発売して欲しい。

ドコモ版のみのパープルを購入

 本体右側面には音量ボタンと電源ボタン一体型の指紋認証センサー、そしてシャッターボタンが配置されている。前モデルでは電源ボタンと指紋認証センサーが別になっていたため、スマートフォンを三脚に取り付ける際のホルダーや電動ジンバル、車載ホルダーなどにセットする際に、ボタンを押さえ込まないように挟むのに苦労した。

本体右側面
指紋認証部分は隠れてしまうが、ホルダーを使ってもボタンが押し込まれることはない

 このあたりが前モデルを使っていてネガティブに感じていたポイントのひとつだが、Xperia 1 IIでは、突出した電源ボタンがなくなり、音量ボタンからシャッターボタンの間に十分スペースがあるため使いやすい。ネガティブなポイントがきっちり解消されている一例といえる。

USBはType-Cを採用
充電はType-Cポートからで、ほぼスペックどおりに給電されていた
本体上部には最近のハイエンドモデルには珍しく、イヤホンジャックを装備

見やすく使いやすい21:9ディスプレイ

 ディスプレイは6.5インチで解像度は3840×1644の有機ELパネルを採用。21:9のアスペクト比は前モデルと同じだ。このアスペクト比は一見すると縦長で違和感はあるが、実際に使ってみるとかなり有効。特に2つのアプリを同時に起動して、上下にマルチウィンドウで表示する際に便利、たとえば上にYouTubeを再生させて、下にはTwitterを起動しタイムラインの閲覧といった作業の際に、それぞれに十分な表示スペースが確保できる。

ノッチなしのため上下にベゼルはあるが、あまり目立たない
動画を観ながら別のアプリを使うと言った作業をしても、十分なスペースがある

 マルチウィンドウ利用中に、それぞれの画面でアプリを切り替えるインターフェースも改良されており、21:9というアスペクト比のディスプレイがさらに使いやすくなっている。

マルチウィンドウの状態から、上下で表示するアプリを変更しやすくなった

 ディスプレイでの動画再生はHDRに対応しており、ソニーのテレビ「ブラビア」(BRAVIA)の技術によって高精細、広色域、高コントラストな品質は健在。さらに、90Hzディスプレイ相当の残像低減技術を採用。画面スクロールやゲームなどを映し出す際にチラつきを抑えて、クリアで滑らかな再生が期待できる。

シネスコサイズの映画などがフル表示で観られるのは◎
制作者が意図した色が再現できる「クリエイターモード」も引き続き搭載

カメラアプリも使いやすく進化

 カメラは本体背面のメインが超広角(約1200万画素/16mm/F2.2)と広角(約1200万画素/24mm/F1.7)、望遠(約1200万画素/70mm/F2.4)のトリプルレンズ仕様。焦点距離やF値は前モデルと若干違いはあるものの、すべて1200万画素の解像度で、レンズ交換式カメラをイメージして、3つのレンズを切り替えて使うという設計思想は同じだ。

ZEISSのレンズでT*(ティースター)コーティングが施されており、3D iToFセンサーも搭載
本体の厚さは約7.9mm
レンズ部分は実測で約9.1mmなので約1.2mmほど突出している

 標準のカメラアプリのインターフェイスは基本的に同じだが、レンズの切り替えボタンが超広角、広角、望遠それぞれに対応した3つが用意されるようになった。前モデルでは切り替えボタンが一個だけで、タップするたびに、広角→超広角→望遠→広角と順に切り替わる方式だったため、使いたい画角を即座に選べず不便だった。

レンズごとに切り替えボタンが用意され、ワンタッチで画角が切り替えられる

 これがXperia 1 IIなら、ワンタッチでレンズを切り替えられるので、操作はかなりスムーズだ。ただしデジタルズームに関しては、各レンズの画角からそれぞれ3倍までとなっている。他メーカーのスマートフォンは、超広角から望遠、さらにそこからのデジタルズームまでシームレスに操作できるモデルが多く、前モデルのXperia 1も広角からデジタル最大望遠までシームレスにズーム操作ができた。

各レンズで最大3倍のデジタルズームが使える

 Xperia 1 IIのデジタルルーズが、レンズそれぞれで3倍までとなっているのは、「レンズ交換式カメラをイメージして、3つのレンズを切り替えて使う」という設計思想からではあるが、個人的な使い勝手の感想から言えば、超広角からデジタルの最大ズームまでシームレスにコントロールできたほうが、一般的なユーザーにはわかりやすいと思う。

 カメラレンズの配置位置は左上となっており、上から超広角、望遠、広角の順に並んでいる。いちばん外側に超広角があるので、三脚や電動ジンバルに装着してもフレームが映り込みにくくなっている。そのかわり、スマートフォンを持っている指などが映り込んでしまう可能性は高くなるが、「撮影アドバイスを表示」機能をオンにしておけば、アラートを表示してくれるので撮影前に気がつけるため安心だ。

指が映り込んだりすると、アラートが表示され失敗写真を防げる

 下記は標準カメラかつオートで撮影した作例。ポイントはやはり広角レンズで撮影した写真。Xperia 1 IIはセンサーサイズが1/1.7インチという大型になっており、その効果もあってか解像感などがかなり増している。夜景での撮影もしっかりと明暗を取り込んでシャープな印象だ。ただし搭載しているカメラセンサーが変わったため、960fpsでのスーパースローモーション撮影には対応していない。

広角で撮影
超広角で撮影
望遠で撮影
望遠での最大デジタルズーム
手持ちでの夜景撮影も十分キレイ

カメラ好きも楽しめるPhotography Pro

 Xperia 1 IIには標準のカメラアプリのほか、ソニーのデジタルカメラαシリーズのノウハウを活用したカメラアプリ「Photography Pro」も搭載。カメラアプリのインターフェースは、「シャッタースピード優先」や「マニュアル露出」といった撮影モードが選べるほか、オートフォーカスの種類の切り替えホワイトバランスの設定など、本格的なレンズ交換式カメラそのもの。

レンズ交換式デジカメのような本格的なインターフェースのPhotography Pro
デジカメと同じ感覚でモードが選べる

 レンズの切り替えも標準のカメラアプリと同じく、それぞれ切り替え可能。それぞれのレンズで3倍までのデジタルズームができるのも同じだが、Photography Proでは焦点距離の数値が目安として表示されているので解りやすい。

Photography Proでもレンズごとに3倍までのデジタルズームとなる

 ちなみに「秒間20コマ」の高速連写や動物へのリアルタイム瞳AFも、Photography Proでの撮影時に有効。またシャッターボタンはディスプレイ上にはなく、本体右側面のシャッターボタンを利用する。

動物にも瞳AFが利用できる
「秒間20コマ」の高速連写で水風船が割れる瞬間を撮影

 普段の生活で気軽に写真撮影をするなら標準のカメラアプリで十分。というよりもPhotography Proのほうが、撮影環境にあわせてしっかりと設定しないと、逆に失敗写真となる可能性も高い。ただしカメラや写真撮影の知識があれば、ここぞという場面で自分がイメージしている写真になるように設定して撮影できそう。今後はアップデートでRAW撮影もサポート予定となっているので、パソコンを使った写真現像も含めて、カメラや写真好きには楽しめそうだ。

Game Enhancerでスペックを最大まで引き出せる

 Xperia 1 IIの基本スペックはSoCにSnapdragon 865を搭載。メモリーは8GBでストレージは128GBとなっている。これまでのXperiaシリーズはプロセッサーが最新のハイエンドモデルでも、ほかのメーカーと比べるとメモリーやストレージでやや見劣りするケースもあったが、Xperia 1 IIでは十分ハイエンドといえる容量を搭載している。

 ちなみにXperia 1 IIには、3Dゲームなど動作のヘビーなゲームに向けて、本体スペックのポテンシャルを引き出す設定にできる「Game Enhancer」を搭載している。そのため、Game Enhancerを使ってスペックを最大に引き出す「パフォーマンス優先」のモードでも計測してみたところ、一部の計測結果では若干ではあるが、パフォーマンス優先モードの方がスコアは良くなった。

「Game Enhancer」でパフォーマンス優先にすると、スペックをフルで活用する動きになる

 ただし本体の発熱もアップしており、バランスモードは30度台をキープしていたが、パフォーマンス優先モードの場合、簡易計測ではあるものの、いちばん高温なポイントで40度を超えていた。普段使いには通常の設定でも操作にはまったく支障がなくヌルヌル・サクサクと動作するので、3DゲームなどをするときだけGame Enhancerでパフォーマンス優先を選ぶといった使い方で問題なさそうだ。

 モバイル通信は5Gに対応。実際にエリアに行って計測してみたところ、条件も良かったためか、下りで1Gbpsオーバーの結果が出た。ただし現時点では5Gの通信可能エリアはあまり広くないため、今後のドコモのエリア展開に期待したい。

5Gの通信エリアで1Gbpsを越える速度を計測
SIMはシングル仕様でmicroSDと一体型のトレー

アルバムやPoBox Plusなど無くなったアプリも

 搭載されているOSの機能にあわせて、強化されている部分もある。たとえばWi-Fi接続のピクト表示、接続されているWi-Fiの規格にあわせて「Wi-Fi 6」なら「6」といった具合に数字が表示される。ほかのメーカーのモデルでもWi-Fi 6接続時の数字表記は見かけるが、Xperia 1 IIはWi-Fi 5、Wi-Fi 4接続時もそれぞれ「5」、「4」と表示される。これはほかのメーカーのモデルにはあまり見られない。

Wi-Fiの接続規格を数字で表示する

 また日本語入力アプリは、Xperia 5と同じくPoBox Plusではなく、「Google 日本語入力」を採用。さらに写真の管理・閲覧用のアプリはアルバムではなく「Googleフォト」を利用する。これまでPoBox Plusやアルバムアプリを利用していたユーザーは注意が必要だ。

日本語入力はGoogleのIMEを標準で搭載
写真の管理アプリはGoogleフォトが標準になった

使いやすくカメラ好きの要求に応えられるモデル

 Xperia 1 IIは、ディスプレイのアスペクト比やサイズ、そして全体的なサイズ感・重量から、最近のハイエンドモデルの中では非常に扱いやすく操作しやすいデザインとなっている。最近のハイエンドモデルは全体サイズが大きく、200gを越えるモデルも多いので、大きなアドバンテージと言える。

 カメラ機能はPhotography Proを搭載したことで、レンズ交換式の本格的なカメラを愛用しているユーザーも楽しめる。また動画撮影も、前モデルから引き続き「Cinematography Pro」を搭載。映画のような本格的な動画撮影も体験可能。写真や動画を目的としてスマートフォンを探しているユーザーも十分満足できるモデルに仕上がっている。