レビュー

「モバイルPASMO」サービス開始、はじめかたや注意点は?

 PASMO協議会は、「モバイルPASMO」のサービスを開始した。会員登録なしでも利用できる。Android向けのみで、現時点ではiPhoneには対応しない。

「モバイルPASMO」のサービスが開始した

「モバイルSuica」との併用が可能な機種はわずか

 対応機種はおサイフケータイに対応するAndroid 6.0以降のスマートフォンで、最新バージョンのおサイフケータイアプリをインストールした端末。

 詳細な対象機種は、モバイルPASMOの公式Webサイトで確認できる。対象機種リストは、モバイルSuicaとモバイルPASMOの共存が可能な機種、共存できない(どちらか片方しか利用できない)機種、モバイルPASMOのみに対応する機種の3タイプに分かれたものとなっている。

 サービス開始の18日時点で、モバイルPASMOとモバイルSuicaを1台の端末で切り替えて利用できる機種は、Xperia 1(SOV40/SO-03L/802SO)、Xperia 5(SOV41/SO-01M/901SO)、Xperia 8(SOV42/902SO)、Pixel 4/4 XL、Android One S6のみとなる。

対応機種の一部(モバイルPASMOのサポートページより)

 端末上にすでにモバイルSuicaがインストールされている場合、共存可能端末以外では起動時にエラーが表示され、モバイルPASMOは発行できない。

 モバイルSuicaとモバイルPASMOの両方を端末にインストールしている場合、利用する交通系ICカードの切り替え操作は、おサイフケータイアプリ上の「マイサービス」から「交通系ICカード」の「メインカードを切り替える」で行える。

会員登録なしで基本機能は利用可能

 アプリをダウンロード後、画面に従って操作を進めれば、会員登録をしなくても無記名式のモバイルPASMOを利用できるようになる。

「PASMOを発行する」をタップする
発行の種類を選択する
「モバイルPASMO」の場合、無記名PASMOと記名PASMOからタイプを選択可能
諸条件を確認する
会員登録を行わない無記名式のモバイルPASMOの場合、数回タップするだけで発行が完了する
メイン画面

 会員登録をすると、クレジットカードでのチャージや定期券の発行、オートチャージの設定、退会(残高の払い戻し)などの機能が利用できるようになる。

会員登録画面

 なお、プラスチックカードの「PASMOカード」から「モバイルPASMO」への残高や定期券情報の移行はできない。

機種変更はおサイフケータイアプリで行える

 機種変更はおサイフケータイアプリ上で行える。おサイフケータイアプリでGoogleアカウントとの連携操作をあらかじめ行っておけば、「メインカードを切り替える」画面から、「カードを預ける(機種変更)」を選択することで、残高をセンターに預ける操作ができる。

 新しい端末での残高の受け取り操作は、おサイフケータイアプリでGoogleアカウントの連携を行い、「メインカードを切り替える」から、「受け取る」を選択することで機種変更が完了する。

機種変更操作はおサイフケータイアプリで行える
機種変更操作を行ったカードはおサイフケータイアプリ上で「預けているカード」と表示され、「受け取る」を選択すると機種変更操作が可能

オートチャージに利用できるクレジットカードは注意が必要

 登録できるクレジットカードの国際ブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Expressの4種類。なお、3Dセキュア(本人認証サービス)に対応するクレジットカードが対象となる。

 オートチャージの利用には、PASMOオートチャージサービスに対応したクレジットカードのうち、PASMO一体型 ではない カードが必要となる。

 オートチャージサービスの申込みはアプリ上で行える。オートチャージサービスは申し込み後に審査が行われ、申し込みから約3週間後に利用できるようになる。

 すでにPASMOカードでオートチャージサービスを利用している場合は、これに登録済みのクレジットカードをモバイルPASMOのオートチャージ決済用カードとして追加で登録することはできない。

私鉄定期をスマホで利用可能に

 モバイルPASMOでは、鉄道だけでなくバスの定期券もアプリ上で購入できる。定期券は、鉄道、バスそれぞれを1種類ずつを購入可能。通学定期券は購入者が18歳以上であることが条件となり、大学・専門学校相当以上向けのみとなる。

発売可能な定期券のパターン(モバイルPASMOのWebページより)

 鉄道定期券は、モバイルPASMO定期券を発売する鉄道事業者の単独の定期券のほか、連絡定期券も購入可能。連絡定期券の場合、乗車駅がモバイルPASMO定期券の発売事業者であれば、降車駅もしくは途中経過駅がモバイルPASMO定期券を発売していない事業者(Suica事業者を含む)でも購入できる。

 鉄道定期券の発売事業者は、小田急電鉄、京王電鉄、京成電鉄、京浜急行電鉄、埼玉高速鉄道、相模鉄道、首都圏新都市鉄道、新京成電鉄、西武鉄道、千葉都市モノレール、東急電鉄、東京地下鉄、東京都交通局、東武鉄道、北総鉄道、ゆりかもめ、横浜高速鉄道、横浜市交通局、横浜シーサイドライン。

 バス定期券は、事業者に応じて全線定期券か金額式定期券が購入可能。バス定期券の発売事業者は、江ノ電バス、小田急バス、川崎市交通局、川崎鶴見臨港バス、関東バス、京王バス、京成バス、西武バス、相鉄バス、立川バス、東急バス、東京都交通局、東洋バス・千葉シーサイドバス、西東京バス、日立自動車交通、横浜市交通局。

モバイルPASMOでは「バス特」の情報を確認できる

 モバイルPASMOアプリでは、バス利用特典サービス(バス特)情報の確認できる。これまで特典バスチケットの付与日や残額の確認方法は用意されていなかったので、バスを普段利用するユーザーにとっては嬉しい機能かもしれない。

 バス特とは、PASMOやSuicaでの乗車の特典サービスとして、1カ月間のバス利用額に応じてポイントが貯まり、1000P(ポイント)ごとにバス運賃の支払いに使える「特典バスチケット」をカード内に付与するもの。バス特自体は既に提供されているものなので、バス乗降時に運賃箱から「チケットがつきました」といった音声が流れるのを耳にしている方も多いはずだ。

「PASMOの詳細」からバス特の情報が確認できる

私鉄・地下鉄ユーザーならぜひ試したい、待望のモバイルPASMO

 モバイルSuicaで定期券を購入する場合、発着駅のいずれかがJR線の駅である必要があった。JR線を利用せず、私鉄・地下鉄線で完結する定期券の場合は、プラスチックカードを持ち歩く必要があったが、モバイルPASMOの登場により「定期券をスマホに入れる」という選択肢が生まれた。

 バスを利用するユーザーにとっては、バス定期券をスマートフォン上で購入可能で、バスチケットの残高についても確認ができるという点において大きな進歩を感じられるはずだ。

 バス定期券を購入する際はこれまで、販売窓口に直接赴かなければならないうえに、決済方法も現金か事業者指定のクレジットカードに限定されている場合が多い。

 これまでも会員登録済みのモバイルSuicaにバス定期券を搭載することは可能であったが、通常の定期券の購入と同様に販売窓口で定期券情報を端末に書き込んでもらう必要があるうえ、購入した定期券の情報は端末上で確認できないというものだった。

 普段はモバイルSuicaを利用しているユーザーでも、私鉄・地下鉄線で完結する定期券を利用したい場合や、バスを頻繁に利用しているのであれば、モバイルPASMOを利用するメリットは大きいはずだ。