レビュー
ゲーマーが試す! 「Black Shark 2」の実力
2019年11月6日 06:00
ゲーマーの利用環境からスマートフォンを評価する
スマートフォン向けのゲームが広く浸透したことで、ゲームプレイに配慮した機能を搭載したスマートフォンが増えてきた。ゲーミングスマートフォンと呼ばれるような、ゲーム特化型の端末も登場してきている。
ゲームに求められるのは、高い処理能力だけではない。「映像・音響の品質」「通信機能」「触り心地」「発熱」「バッテリーの持ち」など、見るべき点は多い。しかも遊ぶゲームによって、求められる性能や機能は異なる。市場にはあまたの製品があり、価格もピンキリなだけに、製品選びはとても悩ましい。
それならば、スマートフォンをゲーム端末ととらえて、タイプの違う複数のゲームを試してみよう……というのが本企画。ゲーマーの視点から製品を評価することで、スマートフォン選びの指針の1つとして活用していただこうと思う。
税別5万円切りでSnapdragon 855を搭載した「Black Shark 2」
今回試す製品は、中国Black Sharkが手掛けるゲーミングスマートフォン「Black Shark 2」(社名と製品名が同じだ)。最も注目すべきは価格の安さ。Snapdragon 855を搭載したハイエンド機ながら、4万9800円(税別)という手頃な価格で販売されている。Black Sharkは同じ中国のスマートフォンメーカーであるシャオミ(Xiaomi)の出資を受けつつ、独自のゲーミングスマートフォンを手掛けている。
一般的な感覚として、安いものには安いなりの理由があるはず。ハイエンドのチップセットを搭載しているということは、他の部分で何かの機能が削られているか、品質が低いかと想像する。実際どうなのか見ていこう。
チップセット | Snapdragon 855(2.84GHz) |
メモリー(RAM) | 6GB |
ストレージ(ROM) | 128GB |
カードスロット | なし |
ディスプレイ | 6.39インチAMOLED 1,080×2,340ドット |
スピーカー | ステレオ |
バッテリー容量 | 4000mAh |
充電方式 | Quick Charge 4.0(ACアダプター付属) |
SIMカード | nanoSIM×2(DSDV対応) |
重さ | 約205g |
大きさ(高さ×幅×厚さ) | 約163.61×75.01×8.77~9.57mm |
価格(税別) | 4万9800円 |
本体色はシャドーブラック、グローリーブルー、フローズンシルバーの3色をラインナップしており、今回は青系色のグローリーブルーを使用した。
メモリーが12GB、ストレージが256GBにそれぞれ倍増したモデルもあり、そちらは7万9800円(税抜)。標準モデルから3万円アップとなるが、RAMを12GBも搭載した製品自体が珍しく、他社製品と同程度の金額で大容量モデルが手に入るという見方もできる。
ディスプレイは6.39インチのAMOLEDで、縦横比は約2.17対1とかなり縦長。端末の横幅は縦横比16:9の5.5インチクラスのスマートフォンと同等だ。
重量は約205g。スマートフォンで200gを超えるのはかなりの重量級だ。理由としては、4,000mAhの大容量バッテリーを搭載していることや、液体冷却システムを採用していることが挙げられる。この液体冷却システムは本機の特徴の1つで、Black Shark調べで主要な部品の温度を約14度下げるとしている。実際の効果については後述する検証で触れていく。
本体には端末保護クリアケースも同梱されている。柔軟で本体をしっかりホールドしつつ、付け外しもしやすい。ケースなしだとサラサラした金属素材で触り心地はいいのだが、ケースをつけた方がグリップ感が上がり持ちやすい。重い端末は落下時のダメージも大きくなるので、ソフトケースはとても安心感がある。
ケースがあると冷却の面で不利だが、標準で付属しているなら装着して使うのを前提として考えているはずだ。よって後述する検証の際にも、このカバーを付けた状態で行うことにした。
ゲーミング向けらしい外見と割り切った仕様
ここからは実際の使用感をお伝えしよう。
まず手に持った時に感じるのは重さ。筆者は普段約170gほどのスマートフォンを使用しているが、本機は見た目から想像するより重く感じる。実機の重さを測ってみると、ソフトケースなしで206g、ソフトケースありで237gだった。ただ横幅はそれほど広くはなく、厚さも標準的なので、ホールド感に問題はない。
筐体デザインを見ると、背面にS字のロゴと、凹凸のある長方形のデザインがなされており、グラデーションのある配色がなされている。ゲーミング向けらしい派手で近未来的なデザインは好みが分かれると思うが、アルミ製でマット加工された表面は決して安っぽくはない。筐体の剛性は高く、作りの悪さやたわみを感じるようなことはない。中身がぎっしり詰まった重みを感じさせ、高価なデジタルガジェットを手に入れた満足感がある。
ディスプレイはAMOLED、いわゆる有機ELを採用しており、かなり鮮やかな発色をしている。特に赤が鮮烈に出ており、映像はかなり濃い色味に見える。ディスプレイの角が丸いデザインになっているのは昨今の主流だが、ゲームによっては画面端が欠けて見づらいこともあるので、ゲーミング向けにはややデメリット。
解像度は1080×2340ドットで、昨今のハイエンド機にしては低め(縦長分で稼いではいるが)。ただ解像度が高いと、ゲームプレイ時の描画処理の負荷が上がり、フレームレートの低下や発熱の増加を招くというデメリットもある。他の用途も含めて「解像度はフルHD(1920×1080ドット)程度で十分」と思える人には、むしろメリットと言える。
端末のロック解除には指紋センサーが使える。端末がスリープ状態の時に、ディスプレイに触れるか端末を動かす(モーションセンサーで感知しているようだ)かすると、ディスプレイが点灯して指紋マークが出る。その付近に指紋センサーが内蔵されており、指を当てればロックを解除できる。指紋センサーの認識も良好で、見た目もスマートだ。
ざっと触れた範囲では、ゲーミング向けならではの背面デザインの特殊さはあれど、露骨に手を抜いたと感じられるような安っぽさはどこにも見当たらない。機能面では、防水・防塵機能がない、おサイフケータイやNFCがない、microSDカードスロットもないなど割り切った部分も多いが、いずれもゲーミング向けと低価格に注力した結果と思えば納得はいく。
ゲーミング向けの独自機能も搭載
続いては本機が持つゲーム向けの独自機能を押さえておきたい。先述の液体冷却システムもその1つで、ゲームプレイ中の発熱による性能低下を防いだり、熱によるプレイヤーへの不快感を減らしたりという効果がある。
タッチセンサーは、240Hzという高いレポートレート(検知回数)と、43.5msの反映時間により、操作の遅延を少なくするとしている。要は一般的なスマートフォンよりも操作の感知が早く、その分だけゲームの反応も早くなるというもの。これは対戦型のアクションゲームなどで有利に働くはずだ。
他にも、通信アンテナが背面いっぱいにX字になるよう配置されており、あらゆる持ち方で安定した通信を可能にするという。これも効果の検証が難しいが、少なくとも今回の検証時において通信に不調をきたすことはなかった。
スピーカーは前面上部と下部に備えている。ディスプレイの端の方をよく見ると薄いスリットがあり、そこから音が出るようになっている。縦持ちだと上下になるが、横持ちだと左右になり、ステレオで音が出せるので、横持ちで遊ぶゲームならステレオサウンドで楽しめる。ちなみにAI機能により、音源がゲームか映画かなどを検出して、最適なサウンドを再生するという機能も搭載しているそうだ。
以上の点を踏まえた上で、実際のゲームを試していきたい。
各種ゲームにも隙のない対応
ドラクエウォーク
1つ目は位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク」。気温約20度の晴天の午後、屋外で歩きながらプレイした。
ディスプレイは日陰だと問題なく見えるが、日光が当たると思いのほか暗く見えてプレイしづらくなる。設定でディスプレイの明るさを90%程度に上げると問題なく見えるようになり、100%にすると違和感なく使えるようになった。この手のゲームを遊ぶなら、ディスプレイを明るめにして、明るさの自動調整機能も使うようにする方がいい。
プレイ中はわざと端末に日光が当たりやすいようにしていたが、端末の発熱はほとんど感じられず、持っている手も快適。筆者所有の端末(Snapdragon 835搭載)では、端末の温度が上がってフレームレートが低下する時もあるのだが、本機ではそういうことは一切なかった。バッテリー消費は約1時間の継続プレイで10%程度となっており、長時間のプレイにも十分耐えうる。
フォートナイト
2つ目は3Dアクションシューティングの「フォートナイト」。3Dゲームで描画の負荷が高いゲームだが、最高画質のエピックに設定しても大変快適。プレイ中にコマ落ちを感じるようなシーンもなかった。
横持ちで遊ぶので発熱も気になるところ。遊んでいるうちに、背面の中央部分にある縦長のプレート部分(Sの意匠があるところ)が、広い範囲にほんのり温かくなる。しばらく遊んでも、手に持っていて不快に感じるほどの熱さになることはなく、広範囲にうまく熱を逃がせている。また急激な温度変化がないのも好印象だ。
バッテリーは約30分で10%程度消費した。このペースなら充電なしでも4~5時間は遊べるはずで、大容量バッテリーがよく活かされている。
スクスタ
3つ目はリズムゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」。3D描画されたキャラクター達が踊るステージをバックに、タイミングよく画面をタップするという内容で、描画の処理落ちがゲームの不快感に直結するというシビアなゲームだ。
ゲーム開始時の画質の自動調整では、「3D最高」に設定された(本作の最高画質設定)。プレイ中も描画は常に滑らかで、連続で遊んでも快適だ。またディスプレイの色味が鮮やかなのも、本作のライブステージをとても華やかに見せてくれており、相性がいい。
横持ち(というか本作の場合は横置きで遊んでいるが)のリズムゲームなので音も聞いてみると、左右からの音の広がりがとてもよく感じられる。音質的には、サイズ的に低音は出ないものの、高音とボーカルのバランスが良く、楽曲も自然に聞ける。スマートフォンにありがちな「とりあえず音が出ている」程度ではなく、音楽や動画の視聴にも耐えうる音質だと感じた。
またスピーカーがディスプレイの端に細長く配置されているおかげで、端末を横向きにして持った時にも手でスピーカー部分をふさぐことがない。どんな持ち方でも音が安定して出せるのは、ゲームを遊ぶ上ではとてもありがたい。
バッテリーは1時間で約15%ほど消費。試しに充電しながらプレイしてみたところ、30分程度の充電で45%から65%くらいまで回復した。充電中も発熱が気になるほどのことはなく、ゲームプレイにも何ら違和感はなかった。やはり熱処理はとても優秀だ。
安価にハイエンドなゲーム端末を求めるなら最適
全体を通して感じたのは、ゲーム端末として見た時の完成度がとても高いということ。有機ELディスプレイ、タッチパネル、バッテリー、熱処理など、ゲーム端末として気になる部分がとても高いレベルでまとまっている。低価格なりにどこか穴があるかと思ったが、意地悪に見ても文句の付け所がなかなか見当たらない。
あえて弱点を挙げるなら、ちょっと重めだという程度。最近では日本製のメーカーで軽さの追及を重視する面があるので、そこを重視するユーザーは二の足を踏むかもしれない。またゲーミング向けならではの派手目の外装も、好みが分かれるのは致し方ない。
スマートフォンとして見ると、普段使いの面も考慮することになる。防水・防塵やおサイフケータイなどの機能を求める人は選択肢から外れる。
もしそうでなければ、安価なハイエンド端末としてかなり魅力的だと言える。DSDV対応のSIMロックフリー端末という点でもメリットを感じる人はいるだろう。
その上で、4万9800円(税抜)という価格を評価できるなら、間違いなく買いの1台だと言える。いっそSIMを入れずに、家のWi-Fi環境でゲームを遊ぶための端末として考えてもいいのではないかと思う。すぐ買うかどうかは別にしても、そういう選択肢があるということは、ゲーマーとして歓迎すべきだろう。