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NTTドコモ関西、災害に備えたエリア対策やトラフィック対策を公開
(2015/7/10 14:19)
NTTドコモ 関西支社は、記者向けの説明会を開催し、台風災害に備えたエリア対策、花火大会やコンサートでのトラフィック対策などについて説明した。
地震や水害などの災害対策の取り組み
記者説明会ではNTTドコモ 関西支社 ネットワーク部災害対策室長の辻繁(つじしげる)氏が壇上に立ち、NTTドコモが長期的な視野の災害対策、短期的な備えとしての輻輳対策を行っていること、さらにユーザーサポートの観点から、スマートフォンのアプリや帰宅困難者への自社ビル開放の取り組みなどについても、説明が行われた。
ドコモとしてはこれまで大きな災害に対して、さまざまな形で取り組んできたが、そのきっかけとなったのが1995年1月に起きた「阪神・淡路大震災」だ。当時は携帯電話が一般に普及しはじめたばかりということもあり、サービスを中断した基地局は39局で、2日後には全局復旧することができた。この早い復旧により、「災害に強い」ことが認められ、ドコモ関西では震災以降、契約者が急速に伸びたという。
2011年3月11日に起きた東日本大震災では、東北エリアを中心に6720局もの基地局がサービスを中断し、震災前のエリアにほぼ復旧したのは4月末になったという。ドコモショップや基地局の倒壊、光ファイバーなどの伝送路断絶、長時間の停電によるバッテリーの枯渇などが起き、移動基地局をのべ61カ所に展開し、ユーザーへの携帯電話の貸し出しは3000台、無料充電コーナーの設置は410カ所に達した。
また、関西エリアは台風や豪雨による水害が多いエリアで、近年では2011年に紀伊半島を襲った台風12号で99局がサービス中断、2014年の丹波市と福知山市の集中豪雨では12局がサービスを中断し、いずれも移動基地局などによるエリア復旧、無料充電などの被災者支援を実施している。
こうした状況を踏まえ、ドコモでは「システムの信頼性向上」「重要通信の確保」「通信サービス早期復旧」を災害対策の三原則として掲げ、さまざまな対策を行っている。2011年の東日本大震災の教訓を活かした対策として、まず、大ゾーン基地局が挙げられる。半径約7kmをカバーする基地局を全国104カ所に設置し、関西エリアには14カ所が設置されている。災害時にはこの大ゾーン基地局を稼働させることで、全体の約35%のユーザーを救済できるという。
ちなみに、こうした災害時には優先利用が割り当てられている警察や自治体職員の携帯電話が接続されるしくみだ。基地局の無停電化やバッテリーの24時間対応も進められ、都道府県庁や市町村役場などの重要エリアの通信を確保している。災害時の臨時回線として、無線エントランス回線や非常マイクロエントランス回線の活用にも取り組んでおり、災害などで通信ケーブルが断線したり、基地局のサービス中断で孤立化したエリアを車載型移動基地局や可搬型移動基地局でカバーできるようにしている。
関西エリア独自の取り組みとして、将来的に発生が予想されている南海トラフ巨大地震の対策を行っている。前述のように、関西エリアには14の大ゾーン基地局が設置されているが、これだけでは都市部の中心エリアしかカバーすることができない。そこで、南海トラフ大地震で沿岸部が被災した場合を考慮し、既存の基地局に対策を施した「中ゾーン基地局」を構築し、想定される被災エリアの通信を確保しようとしている。中ゾーン基地局は、伝送路を無線と有線の二重化、通信用補助電源に燃料電池導入による3日分の電源確保、基地局のアンテナのチルト(傾き)を遠隔で調整することでエリア拡大という、3つの対策で構成されており、近畿総合通信局の表彰も受けている。
水害の多い関西エリアの対策として、7月までに31の基地局のかさ上げ対策を施している。これは過去に水害で被災したことがある基地局をピックアップし、設備をかさ上げすることで、河川の氾濫などで付近の水位が高くなっても基地局を水没しないようにしている。さらに、内陸部の基地局の内、ハザードマップなどで被害が予想される基地局については、前述の中ゾーン基地局でカバーできるように対策を講じている。
この他にも自治体防災訓練への参加をはじめ、自衛隊との合同演習、海上保安庁との合同演習にも取り組み、災害時に連携できるように訓練を重ねている。ドコモ関西グループ内での訓練も行われており、定期的な集合訓練を行うほか、年1回のペースで大規模な総合訓練(設備応急復旧訓練)も実施しているそうだ。
これらの対策に加え、災害発生時には移動基地局や可搬型衛星エントランス基地局で避難所や孤立地域を対策し、山上の基地局などに機材を運べる不整地運搬車を用意するなどの対策も講じている。水没地域では移動基地局などの中継伝送路にマイクロ通信機器を活用したり、ブースターを組み合わせることで、より広いエリアをカバーできるようにするなどの取り組みも行っている。
災害時のユーザーサポートとしては、スマートフォン向けのアプリ「docomo災害用キット」や「災害用伝言板サービス」、「災害用音声お届けサービス」、「エリアメール」などを提供するほか、自治体や企業の地震防災訓練に活用できる「地震防災訓練アプリ」も提供しており、エリアメールを活用した自治体防災訓練も行われているという。関西エリア独自の取り組みとして、防災に関する対策などをマンガでわかりやすく解説した「防災ハンドブック」を制作し、防災訓練などの参加者に配布している。ちなみに、防災ハンドブックはNTTドコモ 関西支社のホームページからダウンロードすることができる。
移動基地局と「PREMIUM 4G」によるトラフィック対策
災害対策と並んで、もうひとつ大切なのが輻輳対策、つまり、トラフィック対策だ。ドコモがこの対策の軸としているのが今年3月からサービスが開始されたLTE-Advancedによる「PREMIUM 4G」だ。PREMIUM 4GはこれまでのLTEと違い、キャリアアグリゲーションによって、複数の周波数帯を束ねて伝送できるため、周波数の利用効率が高く、トラフィック対策には効果的だとする。関西エリアではNTTドコモが持つ2GHz、1.7GHz、1.5GHz、800MHzの4つの周波数帯を利用できるため、その効果も大きいという。
NTTドコモではこれまで運用してきた車載型移動基地局の一部をPREMIUM 4Gに対応させ、PREMIUM 4G移動基地局として、各地へ展開する。関西エリアでは今年6月に開催された競馬のG1レース「宝塚記念」に、はじめてPREMIUM 4G移動基地局を出動させたところ、安定して利用することができたそうだ。宝塚記念当日は12のレースが行われ、G1レースの第11レースでもWebページ閲覧の待ち時間は他のレースのときと変わらないレベルだったという。
夏になると全国各地で花火や野外コンサートなど、さまざまなイベントが行われるが、関西エリアでは34のイベントに移動基地局を出動させる予定で、その内、15のイベントにはPREMIUM 4G移動基地局を出動させる。
ちなみに、すべてのイベントにPREMIUM 4G移動基地局を出動させていないのは、出動先のエリアやトラフィックなどの状況などで判断しているためだそうだ。関西エリアで行われるイベントでは「みなとこうべ海上花火大会」「なにわ淀川花火大会」「天神祭奉納花火」「びわ湖大花火大会」などが大規模なものとされるが、なかでも7月25日に行われる「天神祭奉納花火」はこれまでも輻輳が起きやすいイベントとされていたが、今年は観覧客が集中する4カ所に移動基地局を配備して、対策する予定だ。
関西以西を監視する西日本オペレーションセンターを公開
ドコモでは同社の設備を監視し、コントロールするための施設として、オペレーションセンターを運用している。東日本エリアを担当する東京都内のネットワークオペレーションセンターは過去にも報道陣向けに公開されたことがあったが、今回は関西以西のエリアを担当する西日本オペレーションセンターが公開された。
ネットワークオペレーションセンターと西日本オペレーションセンターは、関西エリアを境目に、東日本と西日本を分担して管理する体制を取っているが、大規模災害などで片方のセンターが機能しなくなったときは、もう片方のセンターが対応できるバックアップ体制を取っている。
西日本オペレーションセンターは総勢120名の体制で運用されており、オペレーションルームでは前面のディスプレイに設備の情報や気象情報などが表示され、さまざまな状況に対応できる体制を整えている。業務としては、24時間365日のネットワークの監視や措置、故障やサービス影響についてのグループ内への情報配信、ネットワーク不具合に関するユーザーからの申告への対応、災害や大規模故障時のネットワークコントロールなどが挙げられる。トラブル対応のためのスタッフの訓練も定期的に行われており、ちょうど今回の公開時にも設備の故障トラブルの訓練が実施されていた。