KDDIの映画「ラブコメ」完成報告会見、香里奈や北乃きい登場


 KDDIは、同社が製作した映画「ラブコメ」の完成報告会見を実施した。映画は9月25日に公開される。

 映画「ラブコメ」は、小学館文庫の同名小説を原作とした恋愛コメディ映画。監督は平川雄一朗、主な出演者は香里奈、北乃きい、田中圭、中越典子、塚本高史、渡部篤郎など。KDDIが100%出資で製作しており、携帯向けのLISMO!では、映画「ラブコメ」のプロローグドラマ「Sweet 9 Flowords ~愛しい9の花言葉~」が全9話の構成で配信されている。また、ケーブルテレビでも展開され、映画、ドラマともにKDDIのコンテンツネットワークを絡めた取り組みとなっている。


 14日に都内で開催された会見では、監督の平川雄一朗氏のほか、香里奈、北乃きい、田中圭、渡部篤郎が登場し、映画の収録を振り返った。ヒロインの松田真紀恵を演じる香里奈は、「人間味や女性らしい部分もあり、共感する部分もたくさんあった」と真紀恵について語ると、永峰涼子役の北乃きいは、自身の役について「今まで演じた中ではずばぬけて明るい、お調子者。空気読めないテンションの子なので、収録前は好きな音楽を聞いてテンションを上げていました」と振り返った。草食男子・村田美晴役の田中圭は「17年間、ひとりの女性を想い続けるのは僕には難しい部分もあるが、演出などを受けながら楽しくやれた」と語り、西島涼平役の渡部篤郎は「こういう役(バツイチの声優)はあまりやったことはないので大変だった。空気の読めない役だが、私は空気の読めないヤツではないので……。」と会場の笑いを誘った。

 平川監督は、原作について「テンションの高い、今っぽい作品」とし、「そのテンションを大事にして、細かく決めないほうがいいと考えた。役者それぞれが持っている空気がすごくいいので、そういうところは大事にしたいと思った」と当初の構想を語る。映画のほか、携帯向けに配信されるプロローグドラマも同時に収録されたとのことで、「本編で活かせなかったドラマが、携帯向けになっている。2つ見ると2倍の楽しみがある」とアピールした。

 登壇者からは最後に、視聴者に向けてメッセージが送られた。平川監督は「見た後に心が暖かくなる映画になっている」としたほか、「すっきりと、幸せになれる映画」(香里奈)、「年齢を問わず、いろんな人に見てもらいたい」(北乃きい)、「男性が見て、勇気をもらえる映画になっている」(田中圭)、「新しい試みが入っており、もっといろんな作品が出てくることを願っている」とそれぞれメッセージを送った。

松田真紀恵を演じる香里奈永峰涼子役の北乃きい
村田美晴役の田中圭西島涼平役の渡部篤郎平川雄一郎監督

 

雨宮氏に聞く、新時代のコンテンツ戦略

 KDDI グループ戦略統括本部 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏に話を聞いたところ、「もともと映画を実現したいと思っていた」という今回の取り組みは、LISMOドラマやVOD配信の延長線上としての展開という。ケーブルテレビでの展開も、ケーブルテレビでのシェアを獲得した結果としての取り組みだ。一方、配給のショウゲートをはじめ、「映画作りは、我々だけでやっていくことはできない」と、多くの協力を得て製作されたことを語った。

 今回は、映画公開に先駆けて携帯向けのショートドラマが配信されているが、携帯電話以外のプラットフォームが発展することで、将来的にはワンコンテンツ・マルチユースといったように、1回購入すれば、さまざまなプラットフォームで楽しめるといった提供形態も期待される。雨宮氏は「そういう方向に行くだろう」と方向性を示すものの、「権利処理などの問題もあり、一気にその方向に傾くかといえば、そうではないだろう。トライアルをしながら、少しずつ、やれる範囲を広げていくことになる。誰かひとりが儲かる市場を目指しているわけでないので、それぞれが利益の出るモデルを考えていかなければならない」と慎重に検討していく方針を示した。

KDDI グループ戦略統括本部 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏

 同氏は、年末より展開が本格化すると見られる電子書籍の市場についても、出版や権利処理などの仕組みが現時点で混沌としている状況を認めた上で、「新しい形もできつつあるが、既存モデルを壊すのではなく、それぞれの強みを活かしていきたい」と、原作者や出版社、取次などといった仕組みの良いところを活かしていく方針を示唆した。「最初は、今の携帯電話に近いものになるのではないか」とコンテンツの提供形態を予測する同氏だが、「作品を作る人のモチベーションを保たなければいけない。そういうサイクルができないといけない」と、作者への適切な還元に言及しており、同氏の語る新たな権利処理の形にも期待がかかる。

 一方、「一番混沌としているのは、Kindleのモデル」と語るように、AmazonのKindleのビジネスモデルが日本国内向けに提供されるかどうかは、市場関係者が特に注目している部分。もっとも、Kindleのビジネスモデルは現在のところ米国の書籍販売制度に依拠しており、再販制度が導入されている日本での展開の可能性は未知数。しかし、雨宮氏が「iTunesがそうだった」と指摘するように、既存のビジネスモデルとは相容れない形(iTunes側が価格を決めた)で市場参入を果たす可能性もあり、そういった面からも混沌としているというわけだ。

 なお、スマートフォン向けコンテンツの展開について雨宮氏は、「auのEZナビウォークといった自社コンテンツについては、全部スマートフォンに対応させる。そのほかにも、いろんなアプリをAndroid上に展開していきたい。これから注力していく」と、今後本格的に展開していく姿勢を示している。

 



(太田 亮三)

2010/9/14 18:45