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「Waymo」の自動運転技術のカギは“検証のループ”、ソフトウェア担当がそのしくみを解説
2026年8月19日 16:06
Waymoは19日、同社の自動運転技術や日本の現況に関する説明会を記者向けに実施した。
同社は、完全自動運転車による配車サービスを米国10都市以上で提供しており、週50万回以上サービスを提供している。現在、提供地域の拡大を目指しており、東京やロンドンなど世界の主要20都市以上への拡大を狙っている。
同社オンボードソフトウェアバイスプレジデントのシュリカンス・ティルマライ(Srikanth Thirumalai)氏は、自動運転技術を支えるソフトウェア部門の責任者で、認知や行動予測、動作計画などを処理する最先端の機械学習モデルを開発している。
自動運転技術の課題
ティルマライ氏は、AI戦略においては「安全第一という原則が根幹にある。累計で3億km以上の完全無人運転の実績から得られた知見をもとに開発を進めている」と説明する。
自動運転の意義についてティルマライ氏は「世界の道路でおきる交通事故の多くはヒューマンエラーによるもの。安全と言われる日本でも交通事故で年間30万人以上が負傷している」と指摘。加えて、深刻なドライバー不足による交通空白という社会問題を解消する手段の1つとして、自動運転技術でより多くの地域に移動手段を提供していくとした。
ティルマライ氏は、自動運転技術の開発には、大きく3つの課題があると話す。1つは、現実世界は複雑で予測が難しいこと。2つめは安全性の問題。3つめは、常にリアルタイムで対応しなければならないことだ。「クラウド上で何秒も掛けて判断するのではなく、時には人命を左右する判断をミリ秒単位でしなければならない。現実世界では、突然道路に飛び出す子供や鉄砲水、トラックから落ちてくるバーベキューグリルなど、ありとあらゆるものに遭遇する」とティルマライ氏はその困難さを語る。
一方、現在議論が進んでいるE2E型のAIドライバーについては、否定的な考えを示す。これは、車両のセンサーから得られた情報を、単一のニューラルネットワークに入力することで、運行計画など複雑な経緯を経ずに直接運転操作を行うもので、簡単に言えば「AIにすべて丸投げする」運転方法だ。ティルマライ氏は、「魔法のように運転してくれる」としながらも、問題が発生した際にAIがなぜそのような判断をしたのかが検証しづらいと指摘。また、事前に予測できる安全性に関するガードレール、構造化データなどが十分に活用されないと語る。
Waymoのモジュール型システム
ティルマライ氏は、レベル4の自動運転を安全に大規模展開するためには、包括的なシステムの展開が不可欠と指摘。「高い能力を備えたドライバー」と「現実世界を高精度に再現するシミュレーター」「パフォーマンスを的確に評価するクリティック」「ドライバーが実環境で走行できる段階に達したかを厳密に判断する仕組み」が必要だという。
たとえば、周囲の状況を確認するセンサー系では、カメラだけでなくLiDAR、レーダーを組み合わせることで、豊富な情報、冗長性、堅牢性を確保している。カメラでは、周囲の情報を認識し、LiDARは周囲の構造を把握するのに用いられる。レーダーは、悪天候時に周囲の状況を確認するのに活用される。
高精細な地図情報について、ティルマライ氏は「ドライバーの安全性を大きく高めるもの」として、カメラなどと同様に「1つのセンサー」だと指摘する。ただし、工事などで現実の道路状況が地図と異なる場合もあり、「安全を最優先するために意図的に設けている冗長性の1つだ」と話す。
これらから得られたデータは、状況を判断して運転指示を出すソフトウェアに入力される。同社では、ソフトウェアを少数で大きいモデルにすることで、複雑な推論をするアプローチをとっている。
ティルマライ氏は「初期のシステムではタスクごとに個別のモジュールを使用していたが、システムが複雑に絡み合ってスパゲッティー状態になってしまった」と説明。膨大なデータとコンピューティング能力を最大限活用するため、少数のモデルに集約することになったと語る。
次に行うシミュレーションは、クローズドな環境で繰り返し自動運転の実証を行う。現実世界では、ほかの車両の運転が必ずしも現地の法規通りに動くとは限らない。また、交通状況を無視した運転をする車両もあるため、クローズドな仮想空間で何度もシミュレーションすることで、より安全な判断を下せるようになる。ティルマライ氏は「起こる可能性が低い事象であっても、ドライバーに経験させることで、現実で予期せぬ事態が起きる前から対応できるようになる」と話す。
東京進出にあたり、現在同社の車両が東京の街中を走行している。東京特有の運転行動や乗車体験に関するデータを収集し、東京の環境にしっかり適応し、ユーザーが自然に利用できるサービスの構築を進めている。
そして、ドライブ技術を検証する“独立した”AIの検証レイヤーを、車両側に用意している。ドライバーが生成するすべての走行軌道を監視し、物理法則や交通法規と照らしあわせて厳格に検証する仕組みを取り入れている。
あわせて、ドライバーの外側からも走行データを評価する。たとえると、車両側の検証がドライバー自身による自己検証で、あわせて後部座席から第三者による検証が行われているといったイメージだ。シミュレーションと現実世界の両面で、AIの結果をAI自身で検証させないようにし、そのフィードバックをループさせることで、交通法規の遵守や円滑な運転、乗客の快適さを向上させている。
ティルマライ氏は、より安全な運転を追求するためには、長距離を走行して検証のループをし続ける経験が必要との見解を示す。同社のこのモデルは、10年にわたり開発してきたといい、複数のレイヤーに分けて制御していくと語った。
東京は「検証」の段階に
日本特有の道路状況に合わせるため、同社では、日本交通などとのパートナーシップを結び、実際に東京の道路で検証し、そこから得られたデータを改善につなげている。具体的には、走行データで得られた改善策を、まずはクローズド環境でシミュレーションし、効果を検証してから実車に展開することを繰り返している。
東京では、先述の通り、現在はドライバーの検証を行っているところで、認可がおり次第サービスを提供していきたいとしている。













