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ソフトバンク、F1鈴鹿で「5G SA」や「ミリ波+Wi-Fi」の実証実験――ネットワークスライシングを活用

 ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは、2026年3月27日~29日にかけて鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催される「F1日本グランプリ」で、5G SAおよびミリ波を活用した高度な通信サービスの実証実験を実施する。

F1会場で快適な通信目指す実証

 F1日本グランプリは3日間で25万人超の観客を動員する大規模なイベントであり、動画視聴やSNS、キャッシュレス決済などにより高い通信負荷が発生する。5Gの特徴である大容量通信やネットワークを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」技術を活用する。

 実施する内容は、大きくネットワークスライシングの活用とリアルタイム制御の2つにわかれる。ネットワークスライシングでは「高品質なSA」「XRコンテンツ」「キャッシュレス決済」「ミリ波活用のWi-Fi」「メディア向け映像伝送」の5つのスライスを鈴鹿サーキット内で展開する。

 そこに、刻一刻と変化するネットワークの負荷状況を監視してリアルタイムに制御するソフトウェアも組み合わせることで、用途ごとに最適な通信品質を来場者に提供するという。制御は、通常15分間隔で取得するデータを1分間隔で取得し、無線パラメーターを最適化する。

 鈴鹿サーキット内の5G環境も「Massive MIMO」6セル、「3 band Massive MIMO」15セル、「ミリ波 Massive MIMO」6セルの合計27セルで、前年の倍以上のセル数を用意した。ソフトバンクの5G SAユーザーなら、鈴鹿サーキット内のどこでも、高い通信品質を体感できるという。

 物販エリアでは、店舗にプライベート5Gを提供して安定したキャッシュレス決済の提供をサポート。また放送事業者向けには、ミリ波などを活用した無線カメラの映像伝送により、配線にとらわれない柔軟なカメラ配置を実現する。ほかに、XRコンテンツをスムーズに楽しめるよう、遅延を制御する。

意外と飛ぶ「ミリ波」も活用目指す

 5G SAの展開を進めるかたわら、超高速・大容量通信が可能な「ミリ波」の活用にも取り組む。一般的に、ミリ波は直進性の強さや減衰のしやすさなどが特徴とされ、広いエリアをとることが難しく、扱いの難しさをもって語られることが多い。

 スマートフォンを前提としたシミュレーションでは、半径75m~100m程度しかエリア化できないという。しかし、ソフトバンク モバイル&ネットワーク本部 無線開発統括部 無線ネットワーク開発部の安藤高任氏は「ソフトバンクのミリ波の帯域は400MHz幅。ソフトバンクの全バンドを束ねた(375MHz幅)よりも広い」と話す。そのうえで、LiDARを用いた3Dマップで検証したところ、見通し次第では500m~1kmほどもエリア化できる可能性があると説明する。

 東京都の新橋(SL広場)ではSAで下り1.9Gbps~2.5Gbps、東京駅前広場でのNSAで下り2.0Gbpsといずれも良好な結果が得られた。

企業横断でミリ波活用に関する有志の会を結成

 一方で、現在販売されているスマートフォンでミリ波に対応する端末はそう多くはない。鈴鹿サーキットで提供されるミリ波活用のWi-Fiは、ミリ波非対応の端末でもその性能を体験できるひとつの機会となる。

 ミリ波基地局からの電波をCPEで受け取り、Wi-Fiとしてユーザーの端末につなぐことで、高速かつ大容量なWi-Fiを実現できる。東京都の豊島区で開催されたイベントでは、80人以上が同時接続する環境ながらミリ波区間では下り2.0Gbps、Wi-Fiは下り92Mbpsを記録。別の音楽フェスでは同じくミリ波区間では下り2.3Gbps、Wi-Fiでは下り324Mbpsが確認された。

ミリ波-Wi-FiのCPE
ミリ波基地局
L2スイッチ
スピードテストの結果。左からミリ波通信、非ミリ波5G通信、ミリ波Wi-Fi
ミリ波のエリア拡大に寄与する素材。左は電波反射板「PASREACH」(DNP)、右は「メタサーフェス反射板/屈折板」(京セラ)
「透明電波反射フィルム」(積水化学工業)。説明パネルの表面に同素材が貼付されている

 Wi-Fiを使ってもらうことで、モバイル通信の負荷が減ることから、結果としてモバイルネットワーク全体の品質向上にもつなげられる。また、ミリ波CPEは小型で光ファイバーなどがいらないため、屋外でも設置場所が柔軟といったメリットもある。

 現状では、各社ともにミリ波はスポット的な展開にとどまっている。安藤氏は「超広帯域であるミリ波を使わない手はない」と語り、人が集まりやすい市街地やイベント会場でのミリ波活用を促進。ユーザー体験の向上につなげたいとする。今後、対応端末の拡充や反射板などを用いたエリア拡張ツールの活用、ミリ波におけるビームフォーミングのより細かな制御の実現などに向けて取り組む。