石川温の「スマホ業界 Watch」

ソニーに「Xperia 1 VIII炎上騒動」の“言い訳”を直撃、それでも示されるXperiaの底力

 2026年5月13日に発表されたばかりのソニー「Xperia 1 VIII」が炎上している。

 5月14日18時15分にXperiaのXアカウントがXperia 1 VIIIのイチ押し機能である「AIカメラアシスタント」の作例を投稿。この作例画像が「明るすぎる」「カメラに注力してきたソニーがなぜ、この画像を良しとするのか理解できない」といった指摘が相次いでいるのだ。

 スマホメーカーであるNothingのCEOであるカール・ペイ氏からも「This must be engagement farming??(インプ稼ぎだよね?)」と突っ込まれるほどだ。

 24時間も経過していないのに、15日15時現在でインプレッション数は800万を超え、返信は3000に迫る勢いだ。

 偶然にも15日午前中に、都内でソニーが「Xperia 1 VIII」の体験イベントを開催していた。

 メディア向けのセッションでは質疑応答があったので、ソニーのイメージングコミュニケーション事業部門長の大澤斉氏に「Xアカウントが炎上していますが、コメントありますか」と言い訳を聞こうと質問したところ「炎上は把握していない」と拍子抜けする答えが返ってきたのだった。

大澤氏

 大澤氏は前日まで海外出張で、イベント直前まで台本を覚えるのに精一杯でSNSは見ていなかったようだ。
 その後、ソニーでは炎上していることを認識したようで、イベント終了後、改めて、大澤氏に話を聞くことができた。

 大澤氏によれば「2つの比較だけが伝わってしまったことが原因といえる。AIカメラアシスタントは4つの表現提案の中から、ユーザーの好みに合ったものを選ぶことができる。Xアカウントが掲載した作例は白っぽいものだけとなっており、その部分が目立ってしまっていた。事前のチェック不足があった」と語る。

 「Xperia 1 VIII」のAIカメラアシスタントは、被写体にカメラを向けると、AIが4つの異なる色表現を提示してくれるというものだ。ユーザーとしてはSNS映えする色合いや、エモい感じ、シズル感のある写真を撮りたくても、どのように設定すればいいかわからない。

 今回、「Xperia 1 VIII」のAIカメラアシスタントはシャッターを切る前にそうした、さまざまな色合いなどを提案してくれるので、自分の好みを見つけ出す楽しみを提案してくれるカメラに仕上げているのだ。

 ただ、Xアカウントは単に4つの選択肢を取っ払い、明るさが強調された作例のみを掲載したため、誤解が一気に拡散したのだった。

 Xperia商品企画担当者は「忠実な表現を求めるユーザーは、機能をオフにして、従来通りのオートで撮影して欲しい。AIカメラアシスタントは表現の提案であり、今回の作例はペットやケーキなどを、ふんわり明るく、かわいらしく撮影できることを伝えたかった」と語る。

 つまり、AIカメラアシスタントは「何でもかんでも明るく撮影する」のではない。Xの作例はAIがいくつかの表現を提案したうちの1つに過ぎないのだ。

 Xの作例がすべて明るく表現する画像であったから、混乱を招いたと言えそうだ。

価格設定の背景

 せっかく大澤氏に話を聞く時間をもらえたので、「Xperia 1 VIII」で気になっていた「価格」について聞いてみた。

 「Xperia 1 VIII」はソニーストアでRAM12GB、ROM256GBモデルで23万5400円、RAM16GB、ROM1TBで29万9200円となっている。従来よりも値上げしており、折りたたみでもないのに、この金額はかなり悩ましい。

 大澤氏は「世の中、すべてのものが値上げしており、その影響を受けている。コスト上昇に対して、ソニーでも努力したが、すべてを吸収できない部分もあった。企業努力で抑えた部分と、価格を転嫁させてもらった部分とのバランスを取った価格設定になっている」としている。

 本体カラーとしてグラファイトブラック、アイオライトシルバー、ガーネットレッドはキャリアモデルのみ、オープンマーケット向けモデルにはネイティブゴールドもラインナップされている。

 ここ数年、メーカーがオープンマーケット向けモデルも発売することが珍しくなくなった。大澤氏は「キャリア向けモデルはどうしても限定されてしまうことがあるが、オープンマーケット向けモデルはカラーバリエーションやメモリーなど、顧客の多様なニーズに応えられるのが大きなメリットだ」と語る。

 さらにソニーには全国5カ所にリアルのソニーストアが存在する。

 大澤氏は「商品の機能や魅力について、直接、ユーザーに伝えることができる貴重な場所だ。イベントなどユーザーと開発陣が直接、交流できる場所があることは大きい」という。

 確かにショップを展開するメーカーがいくつかあるが、開発陣に直接、ユーザーが感想や意見を伝えられるのはソニーぐらいかもしれない。

前モデルは一時回収、今回の製造工程は?

 昨年、「Xperia 1 VII」では一部で不具合が発生し、回収騒動が起きてしまった。一時期、売り場から姿を消したことで「欲しくても買えない」と嘆くユーザーもいたとされる。

 今回の「Xperia 1 VIII」において、製造過程はどのように見直されたのだろうか。

 大澤氏は「やれる見直しは全て行った。基板の設計から取り付け方など設計工程を見直した。また、製造工程においては、中国のパートナー工場が行っていた作業と、ソニーが行っていた作業の差分を詳細に抽出し、何が違っていたかを洗い出した。昨年の問題発生時、早急に生産を再開しなければならなかった『Xperia 1 VII』、その次のモデルとなる『Xperia 10 VII』、当時、すでに設計フェーズに入っていた今回の『Xperia 1 VIII』と、時間軸を3つ分けて対応した」という。

 つまり「Xperia 1 VIII」においては万全を期しているというわけだ。

 Xの作例画像で、のっけからつまずいてしまった「Xperia 1 VIII」ではあるが、使い勝手や品質の面において、ソニーとしては自信作に仕上がっているようだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。