ニュース
F1日本GPの膨大なトラフィックをどう捌く?――ソフトバンクとエリクソンの取り組みを見てきた
2026年3月28日 00:02
ソフトバンクとエリクソンは、3月27日~29日にかけて鈴鹿サーキットで開催される「2026 FIA F1世界選手権シリーズ Aramco 日本グランプリレース」にイベントサポーターとして参画し、5G SA(Stand Alone)やミリ波を活用した実証実験を行なっている。
F1日本グランプリは、週末を通して数十万人が来場する巨大なモータースポーツイベントとなっており、通信事業者としてはいかにそのトラフィックを捌くかが毎年の課題となっている。
ソフトバンクでは毎年さまざまな最新技術を活用しながら対応を行なってきたが、今年は商用ネットワークを使いながら、5G SAのメリットの一つとなるネットワークスライシングを積極的に活用し、来場者が快適に通信サービスを利用できるようにするとともに、その効果や実用性を評価しようという内容になっている。
取り組みの概要については25日に開催された説明会の記事でも紹介しているが、本稿では現地取材で得られた情報をお届けする。
同社では昨年もMassive MIMOや5G SAといった技術をサーキット周辺に導入することでグランプリ開催時のトラフィックに対応してきたが、今年はミリ波やスライシングといった技術を積極的に活用することで対応を強化している。
今年はホームストレートのコースサイドにミリ波の基地局を4つ配置し、グランドスタンドに向けて電波を吹くことでミリ波対応のスマートフォンで超高速通信が行なえるようにしている。
また、ピットビルの上に設置された大型モニターの支柱の部分には、エリクソン製の「3 band Massive MIMO」対応の基地局を設置し、グランドスタンドのミッドバンドでの通信をサポート。従来は2つの基地局に分けて運用してきたものを1つに集約したことで、省スペース化や省電力化を実現している。
グランドスタンド裏の道路脇には、各方式・各周波数に対応した基地局が設置されているが、ここにもミリ波の基地局を設置。そのそばにミリ波対応のCPE(Customer Premises Equipment:構内設置機器)を設置し、それをWi-Fiに変換し、ソフトバンクとワイモバイルのミリ波未対応端末ユーザーも利用できるようにしていた。
繋がれば速いミリ波だが、iPhoneが未対応で、Androidも一部のハイエンド端末での対応に限定されるため、そのメリットを享受できるユーザーはまだまだ少ない。通信事業者側から見れば、コストをかけて整備しても宝の持ち腐れになってしまうという課題がある。
今回の施策は、貴重なモバイルネットワークのトラフィックを、あまり使われていないミリ波にWi-Fi経由で分散(オフロード)させようというもので、他の大型イベントでも活用されていく見通しだ。
この基地局はグランドスタンド裏のショップゾーンをカバーしているが、5G SAのスライシング技術を利用してプライベート5Gを構築し、支払いに使うキャッシュレス端末を安定して利用できるようにしている。グランプリスクエアで19台、ウエストファンゾーンで5台の5G SA対応ルーターを配置し、Wi-Fiでキャッシュレス端末に接続する形になっており、売り場の担当者は、以前は1時間に2~3回エラーが発生していたが、今年はその心配もなくなると喜んでいた。
ちなみに、ミリ波×Wi-Fiの仕組みは、グランドスタンド裏のほか、イベント終了時に大混雑するバス乗り場にも導入されているとのこと。行列に並び、手持ち無沙汰でスマートフォンをいじる人も多く、来場者の動線や行動パターンをしっかりと考慮していることが分かる。
このほか、グランプリの模様を中継するフジテレビと協力し、テレビカメラに5G SA対応のトランスミッターを接続し、ケーブルレスで中継する取り組みも実施。こちらも中継用のスライスを設定し、アップリンク側を安定して利用できるようにしている。
さらに、逆バンク側に設置されたトレーラーハウスの中でXRコンテンツを体験できるスライスも用意。こちらは一部の関係者向けの体験スペースだが、ドライバー視点を体験するなど、将来的に来場者向けに新たな体験価値を提供することをイメージしたもので、大勢の人が集まる場所でもスライシングを活用することでクオリティを担保できることを確認していた。
これら複数のスライスは、ほぼリアルタイムと言える1分間隔でモニタリングされており、状況に応じて自動的に無線パラメーターを最適化するようになっているという。
今回取材したのはフリー走行のみが行なわれる金曜日で、予選が行なわれる土曜日、決勝が行なわれる日曜日と来場者数が増えていく。そうした過酷な環境下でも快適に通信サービスが利用できるのは、当たり前のことではなく、関係各社の努力の積み重ねのおかげと言えるだろう。















