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ドコモ、銀行業に参入へ 前田社長「スマホ1台でまとめて便利に」
2025年5月29日 22:48
金融サービスの強化に向けて、NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収することを発表した。あわせてNTT(持株)もSBIホールディングスと資本業務提携を締結、NTT(持株)が同社に対して1000億円規模で出資する。
ドコモ、銀行業へ参入
ドコモは、銀行業への参入で「より便利でお得な金融サービス」「データ活用によるお客様理解を通じた、最適なサービス提案」「顧客基盤強化」「金融事業の成長加速」の4つを目指す。
NTTドコモ 代表取締役社長CEOの前田義晃氏は「ドコモの金融サービスがフルラインアップで揃う」と話す。新たに提供するサービスについて「銀行口座、決済、証券を一体的に提供することで、スマホ1台で貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントまでまとめて便利に利用できるようになる」と展望を示した。
同時に、NTT(持株)もSBIホールディングスの第三者割当増資を引き受け、1000億円規模で出資する。ドコモと住信SBIネット銀行との提携はこの両グループ間の連携の一環。SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏は、SBI証券、住信SBIネット銀行間、ドコモ間で新たな銀行と証券の連携サービスを提供することを説明。dポイントで株など有価証券を購入できるサービスやdカードでの投信積立などを視野に入れている。
ドコモはマネックス証券を傘下に持つため、SBI証券と競合することになるが、北尾氏は「証券会社はユーザーが決める。双方が関与せずにユーザーが判断できるようにする」とした。前田氏は付け加えて「マネックス証券は重要な機能を持った会社。サービス提供の機会をしっかりと作っていく」とも説明した。
北尾氏はNTTが開発する「IOWN」の光電融合デバイスについて「証券会社にとって、できるだけ遅延なくエネルギー消費を最小限に取引ができるようになる可能性がある」と両グループ間の連携で生まれる相乗効果に強い期待感を寄せた。ソフトバンクグループ 孫正義会長との関係性がある北尾氏だが、ドコモと手を組むことに問われ「孫さんの考えそうなことはわかる。多分、彼は『あ、それは良かったね』というんじゃないかなと。彼の関心はここにあるわけではありません。ソフトバンクの宮川潤一社長は違う意識を持つかもしれませんけど」と話した。
SBI証券などとの連携は継続
これまで、ドコモはグループ内に銀行機能を持っておらず、金融サービスではライバル他社が一歩先行している。前田社長はドコモ社長就任直後の本誌インタビューで「2024年度内にも銀行業に参入したい」と話しており、金融サービスの強化を急いでいた。新銀行の設立も含めて検討していたなかで、住信SBIネット銀行が「必要な機能を備える、最良のパートナー」として、傘下に迎え入れることを決めた。
自社で大規模な経済圏を抱えるネット銀行が台頭するなかで「巨大な経済基盤を持っていなかった」と住信SBIネット銀行 代表取締役社長の円山法昭氏は課題感を語る。「メガバンクがデジタルバンクに参入するなか、次の一手として良いタイミングだった」と今回のドコモグループ入りへの見方を示した。
ドコモの顧客基盤や販売網のほか、住信SBIネット銀行にはないクレジットカードやdポイントなどのサービスを手に入れられると円山氏は語り「さらなる成長ができる」と自信を見せた。一方で「この提携で、既存の顧客やパートナーに影響を与えない」とも話す。SBI証券などとの連携は今後も継続される。
dアカウント改善へ、島田氏「住信SBIネット銀行は最高のパートナー」
提携にあたり、アカウントがどのように扱われるのかもポイントのひとつ。「dアカウント」の仕様について「多くの指摘をいただいている」として、前田氏は「住信SBIネット銀行との連携で、これがボトルネックにならないように取り組んでいく」としたほか、同銀行のユーザーインターフェイスについて「素晴らしいものがある。我々のサービスに反映しながらうまく連携していきたい」と話した。
NTT(持株)の島田明社長は以前に、ドコモの銀行業参入について「いらない機能はいらない必要なもの(シンプルなトランザクション)が欲しい」と話していたが、これについては「店舗やATMなど重たいものはいらないということ」と説明。すべての機能を持つ銀行をドコモが持つには「帯に短し襷に長し」になるとしていたことについても、住信SBIネット銀行については「帯にも襷にもなる。最高のパートナー」と話した。
住信SBIネット銀行への公開買付は1株あたり4900円で。5月30日~7月10日の期間で、上限下限なく4767万4496株の買付を予定している。公開買付成立後はドコモが65.81%を保有、三井住友信託銀行が34.19%を保有し、議決権比率は両社で50%ずつを保有する。取引完了は11月ごろを見込む。












