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ドコモと落合陽一氏のピクシーダストなど、6Gに向けたコンセプトロボットを共同開発
2025年5月19日 17:02
NTTドコモは、アスラテック、ピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)、ユカイ工学と共同で、将来の6G時代における「AIのためのネットワーク」をテーマとした3タイプのコンセプトモデルロボットを開発したことを発表した。この取り組みは、ドコモが主導する「6G Harmonized Intelligence」プロジェクトの一環として行われたもので、AIやロボット分野のエキスパートやパートナーと連携し、新たな世界観やコンセプト、ユースケースの創出を目的としている。
ドコモは、2030年頃のサービス実現を目指す6Gにおいて、「サステナビリティ」「効率化」「顧客体験」「AIのためのネットワーク」「コネクティビティエブリフェア」の5つの価値を掲げ、研究開発を進めている。今回のコンセプトモデル開発は、その中でも特に「AIのためのネットワーク」の具体化を目指したもの。機械・ロボット・AIが最大限の性能を発揮できるネットワークサービスの実現を目指し、人間中心のユースケースに加え、AIやロボット向けの新たな収益機会の創出と、人々のウェルビーイングな生活を支える持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。
6G通信で実現するセンサーを外したロボット「ハーモナイズドセンサレスロボット」
アスラテックと共同開発した「ハーモナイズドセンサレスロボット」は、従来ロボットに搭載されていたカメラやセンサーを本体から取り除き、外部のセンサーやカメラを活用して制御する仕組みを採用している。6Gの高速大容量・高信頼低遅延通信を活用することで、ロボット外部のセンサーと本体を接続し、機体のシンプル化や低コスト化、機能追加の柔軟性を実現することを目指すもの。現在は、横須賀市のマスコットキャラクター「スカリン」を模したバルーン型ロボットとして試作されている。
思考支援と身体性インターフェイス「コンポーザーとグルーバー」
PxDTおよび筑波大学デジタルネイチャーグループと共同開発した「コンポーザーとグルーバー」は。PxDT代表取締役の落合陽一氏らが開発を主導し、超知能AI(ASI)時代における人間とAI・ロボットのインタラクションを想定したコンセプトモデル。AGI(汎用人工知能)が普及する未来において、人間がAIに指示を出したり考え方を伝えたりする際のユーザーインターフェイスの在り方を探るもの。
「コンポーザー」は、テキスト入力、図形描画、音声説明などをAIが統合し、ユーザーの思考プロセスを支援するスケッチ型のユーザーインターフェイス。音声対話や情報検索、画像生成、スケッチ描画を同時に行い、ユーザーが考えを巡らせる際に関連知識や生成画像をリアルタイムで提示することで、思考を可視化し支援する。ホワイトボードであり対話型AIでもある、新しい思考支援ツールとして設計されている。
一方の「グルーバー」は、ネコのような身体を持ったユーザーインターフェイス。身体を動かしたり、人に触れられたりすることで、ユーザーに意図しない発想を促したり、人間以外の存在とのコミュニケーションを活性化する。スマートフォンのように常に携帯するものではなく、話しかけたり触れたりする対象として存在し、対話や触れ合いを通じて人間以外の存在との交流を促進する役割を担う。
これらのシステムは、6Gの活用により、世界中のあらゆるモノや人から得られる膨大なデータをもとに、リアルタイムでの学習・推論処理を行うことを想定している。リアルタイム性の確保には、高速な計算資源の提供、大量のデータ収集・処理機能の実装、さらには高速大容量・低遅延・高信頼性を備えたネットワークの整備が不可欠。特に秒間20フレーム程度の画像生成が求められるリアルタイムAIインタラクションでは、音声対話、検索、画像生成、描画といった機能が高速に連携する必要があり、現行の5Gでは難しいため、6Gの能力が必要とされている。
広域エリアで自律行動するロボット「DENDEN」
ユカイ工学と共同開発した「DENDEN」は、都市部の公園や人の少ない山間部など、広域なエリアで自律的に活動し、人と共存することを想定している。6Gによるカバレッジ拡張、低消費電力、多接続、高信頼通信を活用し、自律的な動作や自然なインタラクションの実現を目指すもの。こうした人のいないエリアをカバーするためには、人口カバー率のみならず面積カバー率の向上も求められる。また、自律的な活動には低消費電力も不可欠であり、この点でも5G以上の性能を持つ6Gの活用が期待されている。
コンセプトモデル開発で見えた6Gの技術要件と今後の展望
今回のコンセプトモデルロボットの開発を通じて、6G時代に求められる具体的な技術要件もより明確になった。特に、コンポーザーやグルーバーのようなリアルタイムインタラクションには、高速大容量かつ低遅延なネットワークが不可欠であり、DENDENのようなロボットには、人のいないエリアをカバーする広域カバレッジや低消費電力が求められる。ドコモは、これらのコンセプトから得られたユースケースや要求条件を精査し、今後の6G国際標準化活動や技術開発に反映させていく方針。
今後もドコモ、アスラテック、PxDT、ユカイ工学は、「6G Harmonized Intelligence」プロジェクトを通じて、さまざまなユースケースの創出や検証を進め、「AIのためのネットワーク」の具体化・詳細化を図るとともに、技術要件の検討やロボット機能の拡張を含めた試作開発も検討する。また、プロジェクトに参加するエキスパートや連携パートナーの拡大も目指していく。
なお、開発されたコンセプトモデルロボットは、5月28日から開催される「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2025」に出展される。