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生き残れるのは「特徴のあるMVNO」、OCN、BIGLOBE、mineoが語る将来像

 MMD研究所(MMDLabo)は19日、いわゆる「格安SIM」を提供しているMVNOのサービス担当者を招いたメディア向けの勉強会を開催した。

 登壇者(カッコ内はサービス名)は、NTTコミュニケーションズ(OCNモバイルONE)の岡本健太郎氏、ビッグローブ(BIGLOBE SIM)の二宮可奈氏と、ケイ・オプティコム(mineo)の津田和佳氏。モデレーターはMMD研究所所長の吉本浩司氏。

「格安SIM」の現状

MMD研究所所長の吉本浩司氏

 はじめに、MMD研究所所長の吉本浩司氏より、MVNO通信サービスの現状が解説された。

 2015年3月時点でのモバイル通信サービスの契約数は1億7732万件。その中で大手キャリアから独立したMVNOの回線は5.3%にあたる952万回線。そのなかには、M2Mなどの回線も含まれている。

 いわゆる「格安SIM」に相当するサービスは、2014年の12月時点でのデータでは192万件とされている。MMD研究所では、現在増加傾向にあり、MMD研究所では2015年末時点で500万回線に達すると予測している。

 MMD研究所が10月、インターネット上で行った調査によると、スマートフォンの利用比率は50代で約60%、10代では90%超となった。このうち、MVNOを「メイン端末として」使っているユーザーは3.9%となっている。

 MVNOサービスの主要ユーザーは、登場当初から一貫して30~40代の男性で、ITリテラシーの高い層が中心。最近では、それに加え20代の若年層や40代の女性の移行比率が顕著に増加している。吉本氏は、従来からの「2台目利用」に加えて、料金に敏感な層が大手キャリアから乗り換えるケースが多いと分析した。

OCNが今後目指すのは「リアル接点」の拡大

NTTコミュニケーションズ 岡本健太郎氏

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のネットワークサービス部 販売推進部門 担当部長、岡本健太郎氏は、「OCNモバイルONE」の新規事業開拓時から関わっているマネージャー。現在は同サービスの販売チャネルの開拓に注力しているという。これまでオンライン販売が中心だった同サービスだが、今後は「GEO」や量販店やコンビニなど、既存の流通業者と提携して、リアル展開を進めていく。

 サービス面では、手薄だった大容量プランの提供に加えて、ITリテラシーの低いユーザーでも安心して利用できるように、サービスを拡充していく。具体的には、本人確認方法の多様化(SIMカードの配達員による本人確認、マイナンバー認証への対応)、電話でのMNP即日開通への対応、セキュリティサービスの提供などを挙げている。

大手キャリアと遜色ないサービスを目指すBIGLOBE

ビッグローブ 二宮可奈氏

 ビッグローブの第二営業本部 マネージャーの二宮可奈氏は、ビッグローブのサービスを「大手キャリアと遜色のないものを、お得な価格で使っていただく」ものにしていくと話した。大容量プランの提供、端末ラインナップの拡充や交換機サービスを積極的に行っていき、大手キャリアの比較して足りない機能を追加していく方針を示した。

「ファンと一緒に作っていく」mineo

ケイ・オプティコム 津田和佳氏

 mineoから登壇したのは同サービスを統括するケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏。mineoは、ユーザー向けのSNS「マイネ王」に力をいれ、ファンの声を取り込んだサービス開発を行っているのが特徴。

 ドコモとauの両方のネットワークが利用できるMVNOとして、キャリアの壁を超えたシェアプランなどの独自の料金プランを提供しているmineo。MVNO各社が利用できる通信料金を増量するなか、あえて500MBプランを新設するなどの独自の展開は、ユーザーの声に応えた結果だという。

ユーザー層の拡大には認知度向上が課題

 各サービスのユーザー層は、MMDの統計調査と近く、ITリテラシーが高い30~40代の男性ユーザーが中心となっている。オンライン販売が中心のOCNモバイルONEでも同様の傾向。mineoでも8割が男性だが、最近は20代の加入も増えているという。

 BIGLOBEでも同様の加入傾向だが、インターネットプロバイダーとして利用していた50代~のシニア層や、節約を意識している40代の女性の加入が増えているという。

 今後訴求していきたいユーザー層は、BIGLOBEとmineoは若年層、OCNモバイルONEではITリテラシーが低い層を。3社とも共通で抱える課題は、「認知度の低さ」。もともとオンラインでの販売が中心だった3サービスとも、ITリテラシーの低いユーザーへの認知度は低いのが弱点として認識しており、各社ともテレビコマーシャルなどでの訴求をおこなっている。

 OCNモバイルONEの岡本氏は、「これまでオンライン販売で培ったクチコミが、リアル販売でも効果を発揮していければ」とクチコミでの広がりに期待を見せた。

 mineoの津田氏は「サービスを広める上で、“格安スマホ”という言葉を使いたくない。新しい言葉を探したい」と話し、「サービス内容を地道に説明していく」と話した。

独自端末調達の難しさ

 セット販売する端末調達については、3社で方針が異なっている。OCNモバイルONEでは、基本的には端末を調達せず、ユーザーの所持している端末や、取扱店が調達した端末とのセットでの販売となっている。岡本氏は「中古端末を安く調達して使いたい、今まで使っていたものを使いたい、新品がほしいとニーズがさまざま。対応が困難なため、サービス面での差別化を行いたい」とした。

 BIGLOBEでは、状況をみながら必要なものを揃えていく方針で、安心を求めるユーザーには日本製、割安でパフォーマンスの高いZenFoneシリーズなどをラインナップしている。

 mineoの津田氏は、周波数帯が独特のauのネットワークに対応した端末の調達における難しさを「独自に端末を調達するとなると、数十万台規模の発注が必要となり、断念せざるを得ない。SIMロックフリーの端末なら数万台単位から発注できるが、auのサービスに対応したMVNOが増えないことにはそれも難しい」と語った。

安倍首相の「スマホ料金引き下げ指示」の影響

 9月に安倍晋三総理大臣から高市早苗総務大臣に対して行われた、携帯電話料金の引き下げを検討する指示について、19日には「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第1回会合が総務省で実施された(関連記事)。

 MVNO事業者としてどのように受け止めているかという質問に対して、OCNモバイルONEの岡本氏は「大手キャリアとの競争になったとしても、結局は特徴のあるサービスを提供していけるかに尽きる。タスクフォースによってMVNO独自のサービスを展開していけるようになれば」と述べた。

 mineoの津田氏は、「正直に言うと、キャリアさんが値下げするとMVNOの存在意義がなくなってしまうので、今の料金を維持してほしい」と本音を明かした上で、「安倍首相が、MVNOについて言及してくれれば、認知度があがるのではないか」と語った。

石井 徹