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これからのMVNO市場、どう差別化する?MVNO3社が語る今後の展望

 MMD研究所は24日、MVNO市場の調査結果の発表やMVNO3社の担当者を招いた、メディア関係者向けの勉強会を開催した。

 今回の勉強会では、「MNO・サブブランドへのMVNOの取るべき手」をテーマに、mineo、BIGLOBEモバイル、イオンモバイルのサービス担当者によるトークセッションが行われた。

 登壇者は、ケイ・オプティコムの上田晃穂氏、ビッグローブの松田康典氏、イオンリテールの井原龍二氏。モデレーターはMMD研究所所長の吉本浩司氏。

MVNO市場に関する調査データ

MMD研究所 吉本浩司氏

 はじめに、MMD研究所所長の吉本氏から、MVNO市場の現状について、同社による最新の調査データともに解説された。

 2018年3月時点で、MVNOのサービスのうち、個人向けのいわゆる「格安SIM」に相当するサービスの利用率は、2台持ちなども含めて15%を超えた。昨年比で3%アップしており、2台目以降のサブ回線としての利用を除く格安SIMメインの利用者に限ったシェアでも、10%を突破した。

 事業者別のシェアでは、楽天モバイル(FREETEL SIMを含む)が26.2%でトップとなった。2017年9月時点での調査結果と比較するとMVNO全体でのシェアが増加しており、特に、大手キャリアのサブブランドとしてMVNOに近い価格帯やユーザー層をターゲットに競っている、Y!mobileとの差が縮んだ。

 また、MVNO利用者が選んだサービス内容にも変化が見られた。音声SIMを利用しているユーザーが昨年から11.5%増え、全体のおよそ3分の2となる65.3%に達した。MMD研究所では、2台目以降の端末としての利用が見込まれるデータSIMではなく、メイン利用としてMVNOを選ぶユーザーが増えたと分析している。あわせて、SIM単体の購入ではなく、端末セットでの購入も増えているという。

 総合満足度では、85.4%を獲得したmineoがトップ。個別の項目では、コストパフォーマンスに関する評価ではOCNモバイルONE、データ通信の速度や品質に関する評価ではUQ mobileが1位となるなど、サービスごとの特徴が出る結果となった。

“コミュニティ、透明性、信頼”を武器に差別化を目指すmineo

ケイ・オプティコム 上田晃穂氏

 ケイ・オプティコムの上田晃穂氏は、現在のMVNO市場はレッドオーシャンであるとして、機能・価格で戦う体力勝負ではなく、独自の価値を出す必要性を語った。

 先述のMMD研究所の調査結果にもあるようにユーザーの満足度において高い評価を受けていることを挙げ、コミュニティ、透明性、信頼の3点を独自価値という観点でのmineoの武器だとした。このような方針は海外のMVNOでも見られ、参考にしている部分があるという。

 mineoでは、ユーザー間の意見交換や疑問の解消につながるコミュニティサイト「マイネ王」を運営しているほか、ユーザーオフ会や格安スマホ相談会を開催しており、オンラインとオフラインの両面でユーザーコミュニティの構築に取り組んでいる。

 この他に、ソフトバンク回線の「Sプラン」の開始によって直接接続のMVNOとしては業界初のトリプルキャリアMVNOとなったことや、店頭での即日開通が可能なmineoショップの展開を全国で勧めていることも強みであるとした。2020年度までの目標として、200万回線の達成を掲げている。

法人向けやIoTに力を入れるBIGLOBEモバイル。個人向けではエンタメフリーが人気

ビッグローブ 松田康典氏

 ビッグローブの松田康典氏も、現在のMVNO市場はレッドオーシャンだという上田氏の意見に同調。独自路線での差別化要因として、同社では法人向けサービスに力を入れていると話した。

 BIGLOBEモバイルの法人向けプランは、個人向けと同様にドコモ回線とau回線のプランを提供するマルチキャリアMVNOとなっていることに加え、IoTデバイス向けの低速小容量プラン、あるいは画像送信などを伴うデバイスのための大容量プランなどを用意している。加えて、4月にはAndroidベースのIoTデバイス「BL-02」を発売した(関連記事)。

 個人向けのサービスでは、YouTubeやAbemaTV、Google Play Musicなどに対応したカウントフリー機能「エンタメフリー・オプション」が好評で、新規契約者の4人に1人が選択しているという。カウントフリー機能を用意するMVNOは増えているが、動画や音楽を対象としたサービスは少なく、BIGLOBEモバイルならではの強みとした。

イオンの店舗網を活かした安心感、安さに還元するイオンモバイル

イオンリテール 井原龍二氏

 イオンリテールの井原龍二氏は、普及期にある現在のMVNO市場において、ユーザーの決め手として新しさよりも安心感が重要になると話す。その上で、イオンの店舗網を活用できることをイオンモバイルの強みであるとした。

 2018年7月時点で、イオンモバイルの即時開通が可能な店舗は全国で235店舗。ゲオモバイルの店舗を除くほとんどが直営店であり、代理店を通さずにこれだけの店舗数を展開する事業者は大手キャリアを含めても珍しいとして、安心感につながるサポート面でのメリットを強調。

 また、イオンの店舗網を活かせるメリットは、手続きや相談の出来る窓口に足を運びやすいことだけではなく、買い物客などに興味を持ってもらうことでテレビCMなどの広告に頼らないマーケティングが可能となり、コストを抑えて料金に還元することにも繋がっているとした。