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パナソニック、法人向けに5型頑丈タブレット「TOUGHPAD」
(2014/2/24 13:10)
パナソニック システムネットワークスは、法人向けに、タフネスボディが特徴のタブレット「TOUGHPAD」の新モデルを発売する。Windows Embedded 8 Handheld搭載モデルが6月中旬に、Android搭載モデルが8月下旬に発売される。どちらも通話・LTE通信が利用でき、パナソニックではタブレットと位置付けるが、ディスプレイは5インチのスマートフォンサイズとなる。価格は13万円程度になる予定。
堅牢なボディが特徴の「TOUGHPAD」新モデルは、5インチのディスプレイを搭載し、音声通話、LTE回線での通信にも対応。モバイル端末として10型、7型とラインナップされてきた「TOUGHPAD」シリーズにおいて最も小型のモデルとなり、グローバル市場に先駆けて日本市場に投入される。そのOSには、世界でパナソニックが5社目となり、日本では初めて投入されるWindows Embedded 8 Handheldモデル「FZ-E1」を中心に据える。Windows Embedded 8 HandheldはWindows Phone 8をベースにしたOSで、アプリ開発などでオープンな環境を活かせるほか、Windows Phone 8にはない顧客向けの高いカスタマイズ性が特徴になっている。加えて、顧客の要望をより広範にサポートするためAndroidモデル「FZ-X1」もラインナップに加えている。
防水、防塵、防滴、耐落下、耐衝撃性能を備え、耐落下試験ではパナソニックが独自に3mからの落下試験も実施している。ディスプレイへの鋼球落下試験では、400gの鋼球を80cmの高さから、動作中のディスプレイに落下させるというもので、ディスプレイが割れず、動作も止まらないと案内されている。
顧客から要望が多いという、天候を問わない屋外での利用については、手袋をしたままでも操作できる高感度近接検知タッチパネルを搭載。画面に水滴がついたり水流が流れたりしても誤動作しない、パナソニック独自の水滴誤動作防止機能も搭載している。500cd平方メートルの高輝度バックライトと反射防止構造のディスプレイで、太陽光下でも視認性を確保している。
さらに、ヒーターを内蔵することでマイナス20度の低温環境~60度の高温環境にまで対応する。ヒーターは、低温環境下でリチウムイオンバッテリーの性能が低下するのを防ぐためのもので、自動・手動の動作が可能。
バッテリー容量は長時間駆動が可能な6200mAhの大容量で、3Aの入力に対応することで1時間で約50%まで充電できる。電源を落とさずにバッテリーが交換できるホットスワップ機能もサポート。交換時には内蔵の予備バッテリーで簡易スリープのような状態になり、操作はできないものの、起動中でもバッテリーを交換できるようになっている。
また、仕様としては公開されていないが、ガスや蒸気などの環境で使用できる防爆構造(爆発を防止する構造)への対応が検討されているほか、化学薬品への耐性についても、すでに何種類かに対応しているとのことで、要望のある顧客向けに案内される。
このほか機能面では、1次元および2次元に対応するバーコードリーダーを搭載。全36種類をサポートし、暗い場所で読み取れるようライトも搭載している。800万画素のリアカメラにも高輝度フォトライトを搭載する。
ディスプレイ下部のフロントスピーカーは100dBAの大音量に対応し、工事現場などでもハンズフリー通話が可能になるという。加えて、3つのマイクによるノイズサプレッサーを搭載し、相手にもこちらの声が聞こえやすくなっている。
セキュリティ面では米国政府調達基準「FIPS-140-2(レベル1)」に準拠した暗号モジュールを活用し、端末内部、microSDカード、VPN/SSL通信の内容を暗号化できる。ユーザー登録を行うだけで無償保証期間が1年間から3年間に延長され、部品代、修理代も無償保証の対象になる。
別途用意されるオプションとして、「TOUGHPAD」シリーズ向けに提供されているACアダプターやカーアダプターに加えて、6月中旬以降はクレードル、ハンドストラップ、ホルスター、バッテリーパック、コーナーリングがラインナップされる。
ディスプレイは5インチ、1280×720ドット、10点マルチタッチの液晶。チップセットはWindows Embedded 8 Handheldモデル「FZ-E1」がクアルコム製「MSM8974A」で2.3GHzのクアッドコア。Androidモデル「FZ-X1」がクアルコム製「APQ8064T」で1.7GHzのクアッドコア。メモリは2GBで、ストレージは32GB。
通信機能はLTEおよび3G(HSPA+、1xEV-DO)をサポート。無線LANは802.11a/b/g/n/acで、Bluetooth 4.0、GPS、GLONASSを搭載する。NFC(Type A/B/C)も利用できる。メインカメラは800万画素、インカメラは130万画素。microUSB端子と、SDXC対応のmicroSDカードスロットが用意されている。
連続駆動時間は約14時間で、連続待受時間は約1000時間。100%までの充電時間は約3時間、50%までは1時間の急速充電が可能。動作温度は-20度~60度、湿度は30%RH~80%RH。
大きさは約165×87×31mmで、重さは約430g。
「IOT」時代のフィールド端末、「パナソニックはこの世界で未来を作っていく」
2月24日には記者向けに発表会が開催された。最初に登壇したパナソニック AVCネットワークス社 社長の宮部義幸氏は、モビリティソリューションがパナソニック全体の中でも重要になるとした上で、モバイル通信の発展や、あらゆるモノがネットにつながる「IOT」(Internet Of Things)の時代で「桁違いの進化」が来ることに触れ、「BtoBでも大きな変化がもたらされる」とする。「特に移動通信は、フィールドのICTを劇的に進化させる。暑さ、寒さ、炎天下など厳しい環境に耐えるハードウェアが重要になる」と語る宮部氏は、ビジネス向けのタフネス仕様がパナソニックの得意な分野であるとして、昨年のコンシューマ事業撤退などモバイル事業の再編を踏まえた上で、「パナソニックはこの世界で未来を作っていく。大きな第一歩となる商品」と注力している様子を語った。
物流業にも拡大を狙う「TOUGHPAD」5インチモデルで2台持ちを解消
パナソニック AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 事業部長の原田秀昭氏は、事業領域を明確にし、差別化した商品を顧客のニーズを汲み取りながら開発していく方針を紹介。1996年から提供を開始した堅牢パソコンは、現在までに堅牢パソコン市場でグローバルのシェア1位を獲得していると紹介された。
一方で、タブレットの「TOUGHPAD」シリーズもすでに展開しているが、顧客からはモバイル端末との2台持ちを解消したいといった声が聞かれるとのことで、今回の5インチの「TOUGHPAD」は音声通話もサポート。現場での利用の仕方などを含め、あくまでタブレットの延長として位置づけているが、携帯電話やスマートフォンの役割を兼ねるものとして開発されている。
原田氏によれば、今回の5インチの「TOUGHPAD」シリーズにより、特に運輸、物流、製造業に対応できることのこと。小規模な宅配業者などにも、カーナビ機能、通話機能、バーコードリーダーによる業務機能など、すべてを備えた端末として訴求していく構えだ。
ステージ上でスペックの解説や、水滴誤動作防止機能のデモンストレーションを行ったパナソニック システムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室 室長の武藤正樹氏は、雨天から低温までさまざまな環境で利用できるとし、「あらゆる業務で使っていただける」とアピールした。
ステージにはまた、ゲストとして日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏が登場。Windows Embedded 8 Handheld搭載モデルについて、オープンな環境によるメリットや、Officeなどのアプリが動作する点、セキュリティ面でマイクロソフトが「責任をもってやっていく」点を強調。「グローバルでも活用できるよう、拡販に尽力していく」と、グローバル市場を含めて連携していく様子を語った。
「規模を追うビジネスではなく、ひとつひとつの要望に緻密に答えていく」
質疑応答の時間には、コンシューマ向けのスマートフォン事業からの撤退を改めて聞かれると、宮部氏は、「モバイルコミュニケーションは新たなフェーズに入った。普及期から成熟期に入ったと判断した。より役立つ形に転換するため、パソコン、業務用、モバイルの3つを統合した。私達からするとハードルの高い要求を持つ顧客にターゲットを絞る戦略転換を行った」とし、「規模を追うビジネスではなく、ひとつひとつの要望に緻密に答えていくもの」と回答。業務向けの商品として柔軟に対応していくビジネスであるとの方針を示した。
コンシューマ向けスマートフォン事業の撤退発表時や、その後の決算発表では、BtoBのスマートフォン戦略に切り替えると案内されていたが、今回の「TOUGHPAD」の5インチモデルは、まさにこれまで案内されていた端末になるという。一方で、宮部氏からは「現在進行中の、ほかのモバイルもある」ことが明らかにされている。
なお、コンシューマ向けスマートフォン「ELUGA」を担当していた技術者が多数、今回の「TOUGHPAD」に関わっているとのことで、「大半は過去にELUGAを担当していた」(武藤氏)ことも明らかにされている。