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ソフトバンク、AI利用のネットワークの性能実証 最大20%の速度向上など

 ソフトバンクは、AIで無線アクセスネットワークの性能向上する「AI for RAN」の性能向上に寄与する実証結果を発表した。スペイン・バルセロナで開かれている「MWC Barcelona 2025」でデモが行われる。

 「アップリンクチャネル補完」「サウンディング参照信号の予測」「AIを活用したMACスケジューリング」の3つで実証を行い、いずれもRAN性能の向上に寄与することが確認された。

上り速度が20%向上

 今後、増加が予測されるAI関連の通信トラフィックは音声や従来のデータと比較して上り・下りともに比率が高くなると予想されており、効率的なデータ送信が求められる。これを実現するには、基地局側で受信する信号に対してチャネル推定精度を高める必要があるという。

 ソフトバンクでは、シールドルームのなかで実際のスマートフォンと無線機を接続してAIを用いたチャネル推定精度向上のための実証を行った。その結果、通信品質が悪い環境でも上り通信の速度が20%改善することが確認できたという。これにより、動画や画像などのアップロード速度の体感向上が見込めるという。

移動する端末の通信品質をAIで向上

 さらに、下り速度の向上のためビームフォーミングの性能向上も実証。時間で同じ周波数帯の上り下りを分けるTDD(時分割多重)では通常、端末から送信される「サウンディング参照信号」(SRS)で伝送路の推定を行う。ある基地局と通信する端末の数が増えるとひとつの端末からのSRSの送信間隔が長くなる。

 SRSを受信しないタイミングでは、SRSの変化を予測する必要があるが、端末の移動速度が速い場合はそれが難しくなる。予測が外れると誤った情報をもとにビームフォーミングを行うことになり、通信速度の低下につながる。

 そこで、AIにより受信していないSRSの予測を行い、通信性能の向上を検証。システムレベルシミュレーター上でニューラルネットワークの一種である、多層パーセプトロンアルゴリズムのAIにより、80km/hで移動する端末の下り速度がおよそ13%向上することがわかったという。

MACスケジューリングにAI活用

 また、MU-MIMO(Multi-User Multiple Input, Multiple Output)によるセル容量増加時に発生する複雑な計算に対処すべくAIを活用した。

 MU-MIMOによる多重化にはユーザー間の相関関係や無線品質MACレイヤーでの無線リソース割り当てを行うスケジューリングの優先順位などを考慮する必要があり、端末の台数の組み合わせで膨大なマトリクス計算が発生するという。

 そのため、MACスケジューリングにAIを利用することで、効率的なペアリングによる性能向上の検証を実施。システムレベルシミュレーターで多層パーセプトロンアルゴリズムを用いて計算したところ、平均スループットがおよそ8%改善することがわかったという。