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ドローンで物流維持&CO2削減、KDDIなど5者が埼玉県秩父市で実証

 KDDIとKDDIスマートドローン、ローソン、ちちぶ結いまちは、埼玉県秩父市でローソン店舗や道の駅に荷物を集約し、ドローンなどで配送する実証実験を開始した。実証と技術開発を進め、2027年度以降にドローンを活用した共同配送の実現を目指す。

左からローソン 秩父荒川上田野店オーナー 石丸健氏、KDDI 事業創造本部 兼 KDDIスマートドローン ソリューションビジネス推進2部 部長 森嶋俊弘氏、秩父市 北堀篤市長、ローソン インキュベーションカンパニー 新規サービス部 シニアマネジャー 戸津茂人氏、環境省 水・大気環境局 モビリティ環境対策課 脱炭素モビリティ事業室 室長 中村真紀氏

およそ7kmをドローンで配送

 物流営業所から配送される荷物をローソンや道の駅などの中継地点に集約。ドローンでの直接の配送や移動販売車を用いて個人宅まで届けるいわゆる“ラストワンマイル配送”を行う。2024年度の実証では、ローソン店舗から複数ルート配送、共同配送トラックと連携したドローン配送といった想定と1人のオペレーターが多数のドローン運行を担う1対多運行について検証する。

 12日に公開された実証の様子では、模擬の輸送車両から配送された荷物をローソン店舗で店員が受け取り、ドローン運行要員が機体に積み込み離陸する様子が公開された。配送された商品は、弁当や「からあげクン」などの惣菜類。ローソンでは移動販売車の展開など、ラストワンマイル配送について取り組みを進めて来た経緯がある。

 ローソン インキュベーションカンパニー 新規サービス部 シニアマネジャーの戸津茂人氏は「(実証場所の)浦山地区でも温かい商品、惣菜の配送の要望がある」と話し「KDDIのドローンを活用することで、浦山地区まで温かい商品を届けられたらということで実証に参加した」と、ドローンによる商品の配送に期待を寄せた。

 ドローンは、KDDIの4G LTEネットワークに対応しておりオペレーターの目視外でも飛行が可能。飛行ルートは7.1kmで片道約12分程度。想定ルート上には一部、携帯電話ネットワークの利用が困難な地域があり、米スペースXの衛星ブロードバンド「Starlink」をバックボーンとした基地局を1基設置した。ペロブスカイト電池とCIS太陽電池による太陽光発電を導入しており、日照を確保できれば、電力のすべてを太陽光発電のみでまかなえるという。

左=CIS太陽電池。右=ペロブスカイト電池
配達場所に到着したドローン

27年度以降にサービスを実現

 実証の地となった埼玉県秩父市は、労働人口の減少や交通課題、災害対策などの課題を抱える。KDDI 事業創造本部 兼 KDDIスマートドローン ソリューションビジネス推進2部 部長の森嶋俊弘氏は「秩父市は全国各地と共通の課題を持つ。モデルケースを作り、全国での地方課題の解決につなげたい」と秩父市で実証を行う意義を説明した。

 同市は、ドローンをはじめとした先端産業で育成取り組みを推進している。国の「デジタルライフライン全国総合整備計画」で「ドローン航路」整備の先行地域に指定されており、森嶋氏はこれらとも連携してドローンの実装が図っていける地域としている。

右=ちちぶ結いまち 代表理事 深田雅之氏

 将来的には、多数の事業者と共同配送することで、トラックの台数を削減。労働人口減少の課題解消や物流配送におけるCO2の年間排出量を60%削減するとしている。ちちぶ結いまちが共同配送のビジネス検討を行い、今後は大手物流事業者とも連携を目指す。

 同実証は、環境省の「令和6年度運輸部門の脱炭素化に向けた先進的システム社会実装促進事業」に採択されている。実証は2026年度までの3カ年で進められる。技術開発などを進めたのち、2027年度以降にドローンを活用した共同配送の実現を目指すとしている。