ニュース
12月に始まる「マイナ保険証」一本化、あらためて知っておきたい新制度のしくみとは
2024年11月8日 00:01
デジタル庁は6日、現在取り組んでいるさまざまな政策について、報道機関向けに説明するイベントを開催。その中で、12月2日から大きく制度が変わるマイナ保険証について紹介する。
12月2日以降、順次マイナ保険証に移行へ
マイナンバーカードと保険証情報を連携させる、いわゆるマイナ保険証では、12月2日から従来の健康保険証の新規発行が停止され、基本的には一本化する方向性となっている。そうした状況でデジタル庁ではそのメリットや現場の声を紹介した。
マイナ保険証の特徴は、「データにもとづくより良い医療が受けられる」という点と「スマホから簡単に自分の医療情報を確認できる」という2点がある。
これは「医療情報の共有化」によって実現することできる。これは、マイナンバーカードのICチップに含まれる電子証明書によって、本人確認ができることから可能になったサービスだ。
そんなマイナンバーカードの交付枚数は1億249万枚に達し、保有枚数は9388万枚。日本人の75.2%が保有しているということになり、そのう、マイナ保険証の利用登録率は81.2%。マイナ保険証の利用率は13.87%となっている。
マイナ保険証の機能は主に3点。
1つが医療機関や薬局が提出するレセプト(診療報酬明細書)に記載されたデータを受信し、過去の診療・薬剤情報を医療機関や薬局が確認できるというもの。これによってこれまで記憶を頼りに説明していた自分のこれまでの診察情報や薬の情報をデータで共有できるようになる。
2点目が受付などの医療事務の効率化。受付時などでの保険証情報の手入力が不要になり、業務効率化・ミスの削減が可能になる。
3点目としては、ICチップを搭載して偽造ができず、顔認証によってなりすましなどの不正も抑えられるというもの。
基本的に一本化されるとは言え、現時点でマイナンバーカードを持っていない人もいる。そうした人でも当然保険診療は受けられる。マイナンバーカードを持たない人やマイナ保険証の利用登録をしていない人には自動的に「資格確認書」が発行される。これは基本的に従来の健康保険証と同等のものだが、有効期限は最長で5年間。
マイナ保険証と並行して、既存の健康保険証は最長1年間有効なので、最長で2025年12月1日まで利用し続けられる。ただし新規発行はないため、転職などで保険証の切り替えが必要になるとマイナ保険証か資格確認書への移行が必要となる。また、国民健康保険は通常は8月からの1年更新なので、その場合は2025年7月末で既存の健康保険証は利用できなくなる。
マイナ保険証の利用登録をしていない場合でも、病院・薬局のカードリーダーで即時マイナ保険証の登録ができる。厚生労働省では、マイナ保険証の一本化で健康保険証の発行が減少することで、年間約100億円前後のコストなどの削減を見込んでいる。
デジタル庁が示したマイナ保険証のメリットは5つ。1つは処方された薬の情報を医師・薬剤師が確認できることで、重複投薬や飲み合わせの良くない薬を自動検知できる点。マイナ保険証はレセプトと電子処方箋の2つのデータを読み出すことができ、医療機関・薬局のレセプトベースの薬剤情報が利用できる。
レセプトは1カ月分をまとめて請求する関係上、情報は1カ月前までだが、電子処方箋に対応している医療機関・薬局であればリアルタイムに情報連携ができる。全国の薬局3万3709施設が電子処方箋に対応。
これは全体の48.5%となっている。電子処方箋に対応する医療機関は伸び悩んでいるが、薬局側で電子処方箋に登録して共有できるため、電子データは増加しているという。
実際、お薬手帳の持参忘れした患者が、マイナ保険証で受付をしたことによって、電子処方箋のデータから飲み合わせの調整が必要というアラートが自動で表示されて確認できた、という現場の声も紹介された。
メリットの2つ目は高額療養費制度で、これは窓口での支払いにおいて限度額が適用される制度。ガン治療などで高額な医療費がかかる場合、1カ月分の支払額が上限を超えた場合に、自己負担限度額を超えた分を払い戻す仕組みが高額療養費制度。事前にこれを申請して「限度額適用認定証」を受け取っておけば、窓口で負担限度額以上を払う必要がなくなる。
この限度額は年収や年齢によって変わるので、申請していない場合は上限以上でも窓口で支払う必要があるが、マイナ保険証の場合はこうしたデータが連携されるため、自動的に高額療養費制度が適用されて、窓口負担で上限を超えずに済む。
3つ目のメリットは救急現場での利用で、救急搬送時に受診歴や服用している薬などの説明ができなくても、マイナ保険証を読み取って受診歴や薬剤情報などを救急隊や医療機関が把握できるというもの。現在67の消防本部で実証実験を行っており、2025年度には全国展開を予定する。
実験は、本人確認を目視確認で行い、口頭で同意を得て、救急隊がオンライン資格確認にアクセスするというものだが、現場からは高齢者の持病や既往歴の聞き取り、正確な薬剤情報の取得などのメリットがあったとの声もあったそうだ。
4つ目は傷病名や検査結果などの診療情報が医療機関で共有できることに加え、マイナポータルで自分でも情報を確認できるようになる。
メリットの5つ目は、複数の診察券をマイナンバーカード1枚にまとめられる点。従来の健康保険証+病院A+病院B+歯科医院……といったように複数の診察券を持っていた場合も、マイナンバーカード1枚にまとめることが可能になる。ただし、これは医療機関側が対応する必要がある。現在は全国約2300の医療機関などが対応しているという。
予防接種、乳幼児検診、難病などの公費負担医療、地方独自の医療費助成の受給者証なども、マイナ保険証に一本化可能。医療費助成では177自治体が対応している。
さらに今後、マイナンバーカードのスマートフォン搭載が予定されている。これによってマイナ保険証も対応することになるため、マイナンバーカードを持たなくても医療機関で保険診療を受けることができる。
現時点では2025年春にもiPhoneに対応する予定で、まずは一部医療機関でカードリーダーを外付けする形で対応。順次対応施設を拡大する計画としている。