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ロマンス詐欺被害をAIなど技術で防止、ペアーズが安全に向けた取り組みを説明

 恋愛感情があると見せかけて、金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害が増加するなか、マッチングアプリ「ペアーズ」を運営するエウレカは、AIなどを活用して対策を強化している。28日、都内で開かれたトークセッションでその内容や被害にあった際の対処法などが語られた。

左からエウレカ 藤田哲平氏、CHARMS 武部理花氏、同 新川てるえ氏、ネット教育アナリスト 尾花紀子氏

増えるロマンス詐欺被害

 ロマンス詐欺は、SNS型投資詐欺や前払金型詐欺と呼ばれる犯罪の一種。マッチングアプリやSNSなどで連絡を取り、親密になったことを錯覚させて金銭を詐取する。警察庁のWebサイトによると、男性の場合は50~60歳代、女性は40~50歳代に被害が集中しているが、若年層が被害にあうケースもみられる。

 やり取りのなかで語られる人物像は架空のものという点で、これまでの結婚詐欺などとは異なる。信頼関係を構築したうえで金銭をだまし取られるという特徴があり、被害者の傷は大きいと被害者支援団体のCHARMS 新川てるえ代表は指摘する。

 10月3日は米国の詐欺被害者団体が制定した「世界ロマンス詐欺防止デー」とされており、ペアーズは国内の被害者支援団体CHARMSと連携、マッチングアプリの安全啓発強化月間として、詐欺にあわないための情報発信を強化している。

AIなどで対策するペアーズ

 マッチングアプリは人々の生活に浸透しつつある。こども家庭庁の調査によればマッチングアプリがきっかけで結婚したと答えたのは調査対象者の4人に1人。マッチングアプリを利用した経験があると答えたのは既婚者では56.8%、未婚者では26.8%だったという。

 手軽に出会えることがメリットだが、巧妙化する犯罪に巻き込まれる可能性もある。ペアーズでは、AIで本人確認を強化すべくAWSの機械学習技術「Amazon Rekognition」を導入している。また、他社にさきがけてマイナンバーカードのICチップ読み取りによる本人確認を導入した。

 ほかにも、ペアーズ本来の目的以外に利用していると見られるユーザーの傾向や特徴を分析し、利用ルールの更新を行っているという。悪意のあるアカウントをAIで検出して排除したり怪しいアカウントは人の目で確認したりもする。さらに、ペアーズユーザーに対して「セーフティセンター」と呼ばれる対策情報を載せたページを用意。ヘルプページをたどり着きやすいように改修するなどしているという。

 YouTube上で注意喚起の動画を掲載、セーフティハンドブックを配布するなど、安全に向けた取り組みはアプリ外でも行われている。加えて自治体との連携により各地で正しいマッチングアプリの使い方セミナーも開催している。

「自分は騙されない」は危険

 CHARMS 新川氏は「自分は騙されない」と思うことが危険と説明する。アプリで出会う人のなかには危険な人がいるという認識を持ち、事前に勉強をしておく必要があるとする。

 マッチングアプリからLINEなどへの性急な誘導や不自然な日本語などは詐欺の可能性が高い。身分証を見せてくるケースもあるが盗品や偽造品であることがほとんど。ビデオチャットで会話したとしてもAIによる映像の可能性も否定できない。ペアーズのセーフティセンターでは、実際に会うまではアプリ内でやり取りするよう呼びかけている。

 万が一、詐欺被害を受けた場合は警察への届け出や口座の凍結、個人情報やサービスのパスワード変更など、自らを守るための対策が必要になってくる。武部理花 CHARMS副代表は被害者は詐欺師のことを気にしてしまい、連絡が取れる状況に留まる傾向にあるとして、相手をブロックする必要性を説明した。