ニュース
マッチングアプリ「ペアーズ」が韓国展開をスタート、安心安全への取り組みなど“ペアーズ”の今後は
2025年5月13日 16:06
エウレカは13日、マッチングアプリ「ペアーズ」の新たな事業戦略に関する記者説明会を開催した。ペアーズの海外展開やオフラインでの恋愛機会の提供、安心安全への取り組みなどが語られた。
4人に1人がマッチングアプリを利用
こども家庭庁の調査によると、既婚者の4人に1人がマッチングアプリを通じて相手と出会っているという、同社 代表取締役CEOの山本竜馬氏は、この調査を「誇りに思っている1つの数字」として取り上げ、出会いの手段としてマッチングアプリが一般化してきているとアピール。晩婚化や未婚化、恋愛離れなどが社会問題になっているなかで、マッチングアプリがこれらの社会課題解決の一助になるという世間の認識も高まってきているとした。たとえば、同社と東京都が意見交換したり、東京都自身がマッチングアプリを開発、提供したりしており、マッチングアプリ自体の認知も広がってきていると説明する。
業界大手のペアーズも、幅広いユーザーに利用されており、累計登録者数が2500万を突破している。数多くのマッチングアプリがあるなかでも、外部機関の安心安全基準を満たしていたり、業界に先駆けてマイナンバーカードのICチップ読み取りによる本人、年齢確認に対応していたりするなど、安全面についての取り組みも強化している。
同社は、この先「誰もが出会うべき人と出会える世界に挑戦する」とし、4つの枠組みで事業を展開していくという。
海外展開
1つめの枠組みは「海外展開」だ。同社では、長らく日本でのサービス展開を実施してきたが、アジア圏のマッチングアプリ市場に成長の伸びしろがあると判断。今年3月から海外展開を開始している。
第1弾として韓国での事業展開を実施しており、インフルエンサーを起用した屋外、デジタル広告、バスのラッピング広告などを展開している。第1弾として韓国を選んだ理由について山本氏は「文化が比較的似ている」ことと「成長の可能性が大きい」点を挙げる。韓国を日本と比較すると、人口は約半分だがマッチングアプリの市場規模は4分の1であり、成長の可能性が高いと分析する。
また韓国では、カジュアルなアプリが多い一方、エリートだけが登録できるアプリや国内トップ3大学出身のユーザーしか登録できないアプリなど、学歴や資産価値を条件に求めているユーザーが多いという。山本氏は、“高いステータス”はないが真剣な出会いをしたいユーザーに対して、敷居が低いアプリが求められているのではないかと分析している。
アプリ開発にあたっては、日本で展開しているものを海外でも展開できるようにプロダクトの見直しを実施。その上で、内容など各国にあわせてカスタマイズできるようなものになっている。たとえば、公にはしにくいプロフィール情報を元にマッチングする「本音マッチ」機能では、各国の恋愛文化にあわせたものに最適化。また、本人確認方法では、各国の公的本人確認システムをサポートする。たとえば、韓国であれば携帯電話のSIMを介して本人確認する「PASS」の仕組みが導入されている。
オフラインの価値を提案
2つ目の枠組みは「オフラインの価値」。同社 ビジネスディベロップメント ダイレクターの本多由美氏は、2023年からさまざまな企業との取り組みを実施していると話す。たとえば、KDDIとはオンライン専用ブランド「povo2.0」でデータ通信とセットになったトッピングを展開したり、DAZNと連携しJリーグの開幕戦にユーザーを招待したりしている。本多氏は「オンラインで閉じずにオフラインでの施策を実施し、オフラインの恋愛ポイントにも注目している」と説明する。
企業との連携だけでなく、コンビニエンスストアなどで購入できるプリペイドカードや福利厚生としての提供、地方自治体との施策など、ユーザーの身近なところに対しての施策も実施。このほか、他社が主催する街コンへの集客支援や“カラオケ好き”のマッチングイベントをカラオケ店で実施するなど、オフラインでの恋愛機会に対するアプローチを引き続き進めていく。
マッチングの最大化
一方でオンラインのペアーズアプリでも、メッセージやデートなど、マッチングの次のステップにつながるマッチングを増やしていく取り組みを進めている。プロダクトマネジメント&デザイン シニアマネジャー 綿引康介氏は、取り組みの一つとして、先述の「本音マッチ」機能を取り上げる。
「本音マッチ」機能は、公開プロフィールに書きづらい情報を元にマッチングする機能。連絡頻度など本音の相性が合うと思われる相手をペアーズのAIがマッチングし、一致した選択肢のみが相手に開示されるマッチング機能。綿引氏は、ユーザーからの意見を元に開発された機能だとコメント。16の質問から3つを選びユーザーが回答すると、その回答を元に「価値観がベース」のマッチング機会を捉えることができる。
本音マッチの回答率は、女性が58%で男性が70%。新規アカウント開設時のチュートリアルで設定する項目を除くと、最も多くのユーザーが回答しているとしており、本音が一致していないマッチングと比較するとメッセージ発生率が11%上昇しているといい、その成果をアピールする。
また、女性ユーザーが安心して利用できるサブスクリプションプランも用意している。たとえば、「安心安全パック」では、マッチングするまで顔写真を公開しない設定(身バレ対策)にしたり、もらった“いいね”から年齢などでフィルタリングできる機能を利用できたりする。
安心安全への取り組み
機能面の充実だけでなく、ロマンス詐欺などからユーザーを守るための取り組みも進めている。
たとえば、不正ユーザーの検知や排除をすべく、本人確認の強化や悪質利用者をAIや目視で確認し排除する取り組みを進めているほか、実際にユーザーが被害に遭わないように不正ユーザーの啓発活動を実施している。
本人確認では、ユーザーの顔写真と本人確認書類を用いるeKYCやマイナンバーカードのICチップ読み取りによる本人確認を実施。啓発活動では、NPO団体や警察との取り組みや、デジタルプラットフォーム事業者と連携した安全啓発活動も今後進めていく。
ロマンス詐欺の啓発活動は警察でも
会場では、ロマンス詐欺の啓発活動事例として、ソフトバンクと香川県警察が連携し開発された「SNS型投資・ロマンス詐欺被害仮想体験ツール」が紹介されていた(エウレカは直接関わっていないプロダクト)。SNS型のロマンス詐欺を実際に体験できるもので、ユーザーからの声かけに対して生成AIを活用した返信でやりとりし、最終的に金銭を要求されたり投資を呼びかけられたりする流れを体験できる。
筆者も実際に「急ぎの振込をしなければならないが、銀行のオンラインバンキングがメンテナンス中」というもっともらしい理由で、代わりに振り込むように要求された。