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自律型のAI実現へ向け「慶應AIセンター」設立 KDDIやソフトバンクが参画

 慶應義塾と民間企業9社が連携して、次世代の自律的なAIの実現を目指す「慶應AIセンター」を設立した。通信事業者としてはKDDIとソフトバンクが参画する。

先端AI研究拠点設立

 慶應義塾大学とカーネギーメロン大学、民間事業者9社が連携する。AI研究を専門とする研究者や学生が集い、次世代のAI技術のための共同研究を行う。視覚や言語情報を扱うAIやロボット、自立型AIと人間の共生、科学的発見のためのAIを中心に研究するという。

左=慶應義塾長 伊藤氏。右=慶應AIセンター センター長 杉浦氏

 慶應義塾 伊藤公平学長は従来、AIは個別の研究者やグループがそれぞれに研究していたが、組織力を持った研究とすべく、同センターを設立したと説明した。慶應義塾大学 日吉キャンパスにメンバーが議論を行う場が設けられる。センター長を務める杉浦孔明理工学部教授は、研究開発の推進とともに「未来のコモンセンスを作り出す人材を育成する」と話した。

 通信事業者としては、KDDIとソフトバンクが参加する。KDDIでは、自らが能動的に状況を認識し判断するAIの実現に向けた重要な要素となる「マルチモーダル環境認識技術」と「行動選択技術」の2つを中心に研究する。AI自身が能動的に収集したデータをもとに、状況を認識する仕組みやほかのAIとも連動して環境に基づいた適切な行動を行うことを目指す。

 ソフトバンク 佃英幸専務執行役員は「AIは産業だけではなく社会全体にインパクト与える技術」としたほか、AI時代に向けて通信およびデータセンターの高度化を進めていると語り「慶應AIセンターでもトップ研究者との交流を通じて人類の未来に向けたビジョンを実現する」とした。

 ほかに伊藤忠テクノソリューションズ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソニーリサーチ、トヨタシステムズ、NEC、東京海上ホールディングス、TOPPANホールディングスの7社が参画する。

ソフトバンク 佃氏

2年目途に成果公表

 KDDIは20年ほど前から慶應義塾大学とAIに関連する研究を行っており、今回の参画につながった。労働人口の減少などに向けて、小売業界などでの人材育成が急務となるなか、AIがアシストすることで、熟練したスキルがない場合や目の届かない場合も適切な対応ができるようになるといった未来を描く。

 KDDI 松田浩路取締役執行役員常務は「たとえば、コンビニのスタッフにそんなにスキルがなかったとしても、ある程度(AIが)支援してくれて来店者の思いに応えられるということもあるのでは」とビジョンを示した。

KDDI 松田氏

 同社ではELYZAなどスタートアップ企業とともにAIの開発に取り組んでいる。今回の取り組みはこれまでと毛色が異なるが、松田氏はスタートアップとの取り組みは直近でのビジネス化を見据えた短い時間軸での取り組みであり、今回は「研究開発の分野」と説明する。ある程度先を見据えた長期的な研究として取り組むが、2年を目途に一定の成果が発表される見込み。