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「KDDI SUMMIT 2024」開幕、高橋社長が基調講演 日本独自の付加価値で世界に挑む
2024年9月3日 20:16
日本はまだ頑張れる
「日本の価値にネガティブバイアスがかかりすぎているのではないか」。髙橋社長は社会の風潮に疑問を投げかけた。少子高齢化やそれに伴う労働人口の減少、経済衰退など多くの社会課題を抱えている日本だが「なんでもかんでも『失われた30年』」とくくるべきではないのではと問う。
少子化は主に先進国で日本同様に社会課題となりつつある。むしろこうした問題に向かっていく日本は「世界の教訓になるのではないか?」「日本が自信を持って自分たちの成し遂げたことを称えられれば、よりよい世界を築く力になる」と「2050年の世界 見えない未来の考え方」(ヘイミシュ・マクレイ著、遠藤真美訳 日本経済新聞出版)の内容を引用し、その重要性を説く。
人手不足や高齢化社会、AI普及による消費電力の増加などは必ずしもネガティブな面だけではなく、ビジネスチャンスが隠れている。「環境の変化をいち早く捉えて、日本らしい付加価値を導入することが重要。そのためにはグローバルスタンダードをいち早く取り込んで、そのうえでに付加価値をどう乗せるか。皆さん(パートナー企業)とともに考えるのが重要な時代になってくる」と語った。
KDDIはグローバルで生まれた技術などを取り込み、新たな付加価値を載せることを得意と自負しており、直近ではスペースXの「Starlink」などが代表に挙げられる。過去にも3G通信規格の「CDMA」を普及させた。それはこれからも変わらず「グローバルスタンダードをいち早く日本に取り入れ、日本の価値を根付かせてグローバルで勝負する。“ソーシャルにインパクトを与える”。これがこれからの日本の姿ではないか」と髙橋氏は見立てを示す。
「ローソン」で社会課題解決・顧客接点取り戻す
日本の通信会社は「ちょっと変」という髙橋氏。世界的に通信会社は通信専業というが日本の場合、各社がそれぞれに多様な事業を展開する。特に、楽天モバイルは非通信事業から新規参入した。「通信から外に出ていく人と通信の外から来た人たちが競い合っている」として、新たな付加価値を生み出せる独自の環境と話した。KDDIでも複数の事業を「サテライトグロース戦略」として推し進めている。
KDDIが現在取り組む事柄としては、5Gネットワークの強化やStarlinkによる衛星-スマートフォン間の直接通信など本業である通信に関わるもののほか、AIを活用したビジネス向けプラットフォーム「WAKONX」(ワコンクロス)の展開、AIデータセンターの拡充などがある。
さらに、2月に発表した三菱商事とのローソン共同経営では「LAWSON TOWN」(ローソンタウン)というテーマで、リテール業界に関する技術を積極的に導入し、次世代モビリティの活用のほか、災害時の対策なども社会課題の解決を図る。
ドローンの活用も検討されており、品物の配送のみならず、災害支援や行方不明者の捜索といった構想が示された。治安維持という観点では、すでに米国(ニューヨーク市警察)でパトロール・銃声検知による緊急出動などで実績があるという。
ローソン事業の狙いには、KDDIの顧客接点の回復もある。髙橋社長は、フィーチャーフォン時代には濃密な顧客接点を保てていたものの、スマートフォンの普及とともに、希薄化してしまい「お客様との接点をもう一回取り戻したいとずっと思っていた。お客様にもっと身近な会社になりたいと思って始めたのがローソン」と話した。
株主の理解を得るのが大変だったというものの、米国では小売業界のテクノロジー化が注目を集めており、それらに従事する人々が重視するのが「Social Impact」(社会への影響力)という。「KDDIにとってローソンは、高齢化社会の進行や地方が抱える課題で我々の力を少し付け加えれば、ソーシャルにインパクトを起こせるんじゃないか」と、注力していく姿勢を見せた。
このほかスタートアップ企業の支援を重視する考えを示す。国外事業としては、データセンター「TELEHOUSE」のほかIoT回線でも多数の需要があることが説明された。
OpenAI Japanの長﨑氏と対談
講演の場には、OpenAI Japanの長﨑忠雄 代表取締役社長が登壇。KDDI 高橋社長と対談した。
長﨑氏によれば、ChatGPTのアクティブユーザーはすでに2億人を突破しており「史上最速で1~2億のマーケットユーザーに達したソフトウェア」と述べた。
OpenAIはアジア初の拠点として、東京にオフィスを設立。髙橋氏は「ちょっとベールに包まれているような……。マイクロソフトを通さないとOpenAIにたどり着けないのかな? とイメージしていた」とかつての率直な印象を述べる。マイクロソフトはOpenAIに大規模な投資を行っている。
長﨑氏は「ベールに包まれていたのは、その通りだった。だからこそ日本法人を作って対話の窓口を開いた」と話す。Webサイトは現時点で英語のみだが、こうしたところも今後は日本語化が進むと見られる。
長﨑氏は「AIの旅路はまだ始まったばかり」と話す。AIの活用で「日々の生活を豊かにするだけではなく、AIと一緒に生活することで社会課題を解決できる。そういった世界を作りたい。KDDIのようなパートナーと一緒に実現したい」とした。