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生成AIの社会実装を加速へ、KDDIとELYZAが連携して日本語LLM提供

 KDDIグループが、生成AIの開発でスタートアップ企業ELYZA(イライザ)との資本業務提携を発表した。今後、国内での生成AI活用促進に向けてKDDIとELYZAが技術開発とサービス提供を目指す。

ELYZAはKDDI子会社に

 KDDIは、ELYZAに対して同社が保有する計算・経営基盤や営業体制、導入支援などを提供する。中期的に1000億円規模のインフラ投資を予定しており、KDDIの髙橋誠社長によれば、将来的には両社間のみならず外部への提供も視野にいれる。また、社内で生成AI活用に関する横断的な組織を新たに立ち上げるという。

 4月1日を目処に、ELYZAは、KDDIの連結子会社となる予定。持分割合はKDDIが43.4%、KDDI Digital Divergenceが10%。今後、KDDIグループの支援のもとでスイングバイIPOを目指す。

オープモデルベースに開発を加速

 両社で開発するのは、オープンなモデルをベースとした大規模言語モデル(LLM)。4月からは日本語の高性能LLMのAPI提供が始まる予定という。今後の展望としては業界や企業など、クライアントのニーズに応じてカスタマイズされた生成AIの開発がある。第1弾としては、KDDIグループでコールセンターなどを手掛けるアルティウスリンクとともにコンタクトセンターに特化したLLMの開発が想定されているという。加えて、生成AIを活用したDX支援やAI SaaSの提供などを見込む。

 ELYZAは2018年に設立された企業で、生成AIの中核技術であるLLM開発を手掛ける。日本では最大規模という700億パラメーターのモデルを開発した実績がある。「事前学習」はグローバル企業が開発するオープンモデルを活用することでコストと時間の課題を解決し、グローバルのモデルを日本語で利用できるようにした。ELYZA 代表取締役CEOの曽根岡侑也氏によれば、この開発体制により、事前学習から始めるよりも2~4倍は早くなるという。

 曽根岡氏によれば、日本語を対象とした2つのベンチマークで国内最高精度を達成するなど高評価を得ている。「グローバルプレイヤーに対して、日本企業のLLM開発は遅れていたが、遜色のないようなモデルができた」と自信をのぞかせる。

 一方で、サービスを広く世に展開していくうえでは、計算基盤や営業力、アプリケーション開発などの面でグローバル企業に太刀打ちすることは難しい。今回のKDDIグループとの提携により、不足する部分を補い生成AIの開発社会実装を加速させる。

コンシューマーサービスへの活用も

 髙橋社長は、ELYZAとの提携に至った経緯を説明。オープンなモデルにファインチューンを施し、日本に適応したかたちにできるスタートアップ企業を探していたという。ELYZAは、すでに20社以上の企業にAIを導入した実績もあるほか、曽根岡氏とは「KDDI∞Labo」時代からお互いを知る間柄だということもあり、今回の提携に至った。

 さらに、AIを取り巻く状況は刻一刻と変わっており、NTTグループやソフトバンクのように自社でゼロから開発するのか、KDDIのようにオープンモデルを活用するのか、正解はまだ見えないとしつつも「スタートアップ企業の力を使って、オープンなモデルを活用するほうがスピード感は上がりそうだ」と見解を述べる。海外の大手が次々と新型のLLMを開発していることからも「グローバルスタンダードのスピード感は速い」と指摘し、そのうえで各国の言語に応じたファインチューンを繰り返していくのはひとつの良い解ではないかとの認識を示した。

 コンシューマー向けについても、ネットワークの設計やオペレーションにAIを取り入れるほか、カスタマーサービス向けでも活用する展望を示した。海外では、ドイツテレコムなどが自社で販売するスマートフォンを通じてAIサービスを提供する動きなどがあるが「AIエージェントなんかも(スマホに)載ってくるのは必然」とも語り、今後は現在のゲームストアのように「AIストア」が登場するのではとの予測も示した。