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IOWNで日本と台湾を超低遅延接続、ついに開通――NTTと中華電信、APNで初の国際通信

 NTT(持株)と台湾の中華電信は、オールフォトニクスネットワーク(APN)で両社の研究開発拠点とデータセンターを接続した。APNによる国際間開通は世界初。今後、NTTがリードするIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)のビジネス展開を両社で進める。

約3000kmを片道17ミリ秒以下で接続

 2023年に締結したNTTと中華電信の基本合意に基づく取り組み。東京都にあるNTT 武蔵野研究開発センタと台湾・桃園市にある中華電信の桃園データセンター間の2893kmをAPNでつないだ。遅延は約17ミリ秒(片道)で回線速度は100Gbps。遅延ゆらぎは1ナノ秒以下という。

 NTTは武蔵野研究開発センタから日本国内の海底光ファイバー陸揚げ局まで、中華電信はそこから台湾の海底陸揚げ局を通り桃園データセンターまでのAPNを構築した。IOWN Global ForumのOAA(Open All-Photonic Network Functional Architecture)に対応する複数のメーカーの機器を利用して相互に接続する。

 構成としては単純で、技術的には大きな課題はなかった。低遅延性能については、これ以上改善の余地がないほどという。

 両社では今後、災害時のBCP対策としてデータバックアップやデータの複製、NTTによるLLM(大規模言語モデル)の「tsuzumi」の提供などを予定しており、両国に拠点をおく半導体分野など製造業の事業者に向けてアピールする。

東京・台湾をAPNで結びセレモニー

 29日午後、武蔵野研究開発センタと台湾の中華電信の施設では、開通を記念したセレモニーが開かれた。

 NTT(持株)の島田明社長は、台風10号の影響で対応の必要が想定されるため、日本に留まった。イベントのメイン会場は台湾のため、日本からリモートであいさつになったものの「APNのよさを伝えられる良い機会になった」と話す。「IOWNの国際間通信に取り組むことは、IOWNの技術開発および台湾と日本の両国でのサービス展開を加速させる」と期待感を示した。

左から中華電信 郭水義会長、NTT島田社長、同 川添副社長

 川添副社長は今回の成果について「世界中でIOWNを実現する企業にとって大きな励みになる」としたほか、世界平和への架け橋になることを願うと語った。

 中華電信の郭水義会長は、APNについて「次世代のブロードバンドネットワークに向けた画期的なマイルストーン」と語り「NTTと密に協力し、IOWNの革新的技術を開発しながらさまざまな使用事例を実現し、豊かな社会へ貢献する」と話した。

 セレモニーでは、日本会場と台湾会場をAPNで結び「Happy Birthday」で合唱。楽器の音や歌声はブレることなく、APNのパフォーマンスをアピールした。

画面の向こうは台湾会場

当初は産業用に展開

 さまざまな業界での応用が可能としており、なかでもスマートファクトリーや放送分野などに適している。台湾企業の本部と支部との連携にもIOWNの技術が有効という。

 現時点ではまだ面的な展開には時間がかかるため、立ち上げ当初は、産業向けのサービスを中心とした展開する考えが示された。

 台湾企業は韓国で事業を進めているケースが多く、APNが有効に活用できるとしたほか、日本と台湾の企業の連携強化も期待される。このほか、災害発生時などにも活用できるといい、迅速に光パスを切り替えることで通信断のリスクを低減できるという。

 島田社長によると、今回はあくまで接続に成功したという段階で、実際の使用事例は今後登場するとみられる。