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来場者を通信でサポートする「auフェスプロジェクト」、前年から大幅増強された“ロッキン”2日目を見てきた

 8月3日~4日と10日~12日に蘇我スポーツ公園(千葉県千葉市)で開催される「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」では、5日間合計で115組のアーティストによるパフォーマンスが披露される。

 多くの来場者の心を“熱くする”夏フェスとなる一方、通常時より遙かに多い来場者となる会場内の通信環境は、対策しないままではまともに通信できない可能性が高い。今回のイベントでは、携帯キャリア4社は臨時基地局車を派遣するなど対策を実施しているほか、イベント主催者においても、会場内にフリーWi-Fiサービスを提供しており、通信環境の快適性向上が図られている。

 そのなかでも、今回特別協賛しているKDDIは、主催者が提供するStarlink Wi-Fiのほか、5G対応基地局車やauブースによる充電サービスなど、来場者の快適なフェス体験を提供すべく取り組みを行っているという。

 今回は、イベント2日目の様子を取材してきた。

Starlink Wi-Fi、前年よりも大幅増強

 KDDIのソリューションの1つである低軌道衛星「Starlink」を使ったWi-Fiサービスが、今年も主催社によるフリーWi-Fiサービスとして提供される。

 前年開催から設置されたStarlink Wi-Fiだが、今回はアンテナ数が前年の3台から11台に大幅増強。エリアの拡大や増強されたエリアもあり、さらに快適な通信環境が提供される。

 前年度は、入場ゲートや飲食スペースなどで繋がりづらい場面もあったという。今回は、これらを増強することに加え、新たにスタッフ、出展者用のSSIDを用意。決済用端末などにユーザー用とは別のSSIDを用意することで、ケータリングカーなどでもスムーズな決済を実現した。

電子チケットの表示や決済する場所に向けてアンテナを設置
来場者の休憩スペースにも設置している。通信速度も動画が見られるくらいの速度が出た

 また、低領域のアクセスポイントを、飲食出展ブースなどに合計19台設置。コード決済時や電子チケットを表示する箇所などに集中してアクセスポイントを配置することで、「通信できなくて決済できない」シーンを極力減らす対策が取られている。

さまざまな箇所にアンテナを設置できるのが、Starlinkの強みの1つ。強化したいエリアに集中して設置できる

 実際に筆者が購入する際も、「au PAY」の決済用コードをすぐに表示させることができた。筆者はユーザースキャン方式での決済だったが、周りを見てもクレジットカードなど店舗端末を使う決済でもスムーズだった印象だ。

 なお、今回はWi-Fi6対応のアクセスポイントを設置。同時に利用しているユーザー数などにもよるというが、より高速な通信環境をそろえたと担当者は説明する。

auブースを初出展、無料充電コーナーやPixelの撮影体験ができるブースも

 丸々の近くには、auブースを出展。充電サービスやPixelの消しゴムマジックなどを体験できる撮影体験コーナーが用意されており、来場者はauの契約にかかわらず無料で利用できる。

無料充電サービス

 充電サービスは、充電ケーブルとカウンターが用意されたオープン型のスペースと、鍵付ロッカーの中に充電ケーブルが用意されているロッカー型のものを用意している。オープン型のスペースでは、充電しながらデバイスを操作できる。

オープン型
ロッカー型

 充電できるデバイスは、特に指定していないといい、スマートフォンのほか、ハンディファンやモバイルバッテリーを充電するユーザーもいるという。1回の利用につき、20分を目安に使ってほしいとしているが、臨機応変に対応していると語る担当者。

 野外フェスという高温下のため、ユーザーのスマートフォンの温度が高い場合がある。一般的にスマートフォンでは、本体の温度が高いとバッテリー保護のため、通常よりも遅く充電するようになっており、今回も充電器側が高い出力でも十分に充電ができていないこともある。その際は、混雑していなければ延長するなど、ユーザーに配慮した運営がなされているようだ。

 フォトブースでは、Pixelのさまざまな写真編集機能を無料で体験できる。消しゴムマジックなどを使った撮影、編集体験のあとは、写真のデータをダウンロードでき、ユーザーの来場記念の一つとして持ち帰れる。

野外フェス参加に便利なオリジナルグッズのプレゼント企画も

臨時基地局を3台設置、ミリ波やMassive MIMOも導入

 前年開催時は2台だった臨時基地局を、今年は3台に増強して設置している。メインステージ2つに近い部分に2台、会場奥にあるもう2つのステージに向けて1台配置している。KDDIの臨時基地局は、それぞれのステージを補完するようなアンテナの高さや向きに設置している。

 メインステージに近い基地局には、LTEと5G Sub6の周波数に対応するアンテナ(菱形の形状)と、5G ミリ波に対応するアンテナ(小さい長方形の形状)を設置。会場奥側の基地局では、菱形のアンテナと、Massive MIMO対応のアンテナ(長方形でやや大きい)を設置されていた。

メインステージ側の臨時基地局(左)と、奥側の臨時基地局(右)。左側の長方形のアンテナがミリ波対応のアンテナ、右側の長方形のものがMassive MIMO対応のアンテナ。両方にある菱形のものが、LTEと5G Sub6対応アンテナ

 臨時基地局については、NTTドコモやソフトバンク、楽天モバイルも設置しているが、それぞれのアンテナの種類や高さ、向きはバラバラのように見え、各社の考えがそれぞれ異なるところが見える。なお、今回のイベントでは、アンテナの向きや高さについて各社で事前協議などはしていないという。臨時基地局車の派遣にあたっては、イベント主催者に各キャリアが個別に相談するケースや、1社が代表して協議に当たる場合などさまざまだといい、当日アンテナを見て初めて他社の補完戦略がわかることも多いと担当者は語る。

 また、今回のイベントでは、イベント会場内での“つながりやすさ”をモニタリングする取り組みも実施している。ステージでのパフォーマンス直前/直後といった「大人数が通信を求めている」タイミングでの対策はなかなか難しいとするものの、電子チケットの表示や決済で通信が不可欠なエリアなどで繋がりやすいよう、定期的に改善し自動で対応できる体制が整えられていた。

 既存の常設基地局にあたっても、周波数を拡充し、通信できる容量自体の拡充も行ったという。これらの対策により、理論値で前年比約1.6倍の容量が通信できる。

来場者を“快適なフェス”で応援

 auブースや通信対策など、同社担当者が口をそろえて話すのは“快適なフェス”の実現を目指すという言葉。“真夏の屋外”という過酷な環境下でありながらも、キャリアにかかわらずスマートフォンを快適に利用して欲しいという想いの元対策している様子がうかがえた。

 今回のイベントは、花火大会や祭りなどほかのイベントよりも広い面積で実施され、多くのユーザーが来場するため、通常のイベント対応よりもより複雑な対応が求められるという。今回の前半2日間のイベントの状況を振り返り、後半3日間もスマートフォンがスムーズに利用できる“快適なフェス”で来場者を応援していく構えだ。