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「目指せ1000万契約」、楽天モバイルが自信深める通信品質と技術力【Rakuten Optimism】

 楽天グループは、同社の最新技術や取り組みを紹介している「Rakuten Optimism 2024」を4日まで開催している。2日目のビジネスカンファレンスでは、「楽天モバイルが次なるステージへ~最強キャリアを目指す戦略と未来展望」と題し、楽天モバイルが目指す“最強キャリア”に何が必要かが語られた。

 登壇者は、楽天モバイル代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏と代表取締役社長の矢澤俊介氏、代表取締役 共同CEO兼CTOのシャラッド・スリオアストーア氏。MCは、タレントのハリー杉山。

「Rakuten最強プラン」は好調

代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏

 冒頭、「Rakuten最強プラン」について、鈴木氏は「確かな手応えを感じている」とコメント。先月の時点ですでに700万契約数を突破しているといい「加速度的に契約者数も伸びてきている状況」とアピールした。

 楽天モバイルでは、料金プランのほか、家族で契約したり22歳以下のユーザーにポイントを進呈する「楽天最強プログラム」、「最強青春プログラム」、12歳以下のユーザーに最大440ポイントを還元する「最強こどもプログラム」といった特典もスタート。ポイントをプラン料金に充填することで実質割引となり、より低廉な価格になっているとした。

 一方、サービス開始から5年目に入る同社の通信事業について、「最初の2年間はものすごいスピードで通信サービス基盤を構築した。理論上は可能でも『画に描いた餅』と言われた“完全仮想化ネットワーク”を世界で初めて実現し、4万7000局以上の基地局を建設、2023年からは法人向けのビジネスも開始した」とこれまでの歴史を振り返った鈴木氏は、2020~22年をフェーズ1、2023年をフェーズ2「リーンな経営の確立」と位置づけ、2024年はフェーズ3「楽天モバイルは最強のキャリアへ」と位置づけ、取り組みを進めていくとした。

最強キャリアの条件、1000万契約を早期に達成

 目指す姿「最強のキャリア」の条件として、鈴木氏は「大容量で低価格なプラン」と「どこでもつながりやすく安定した電波環境」、「楽天ならではの最強サービス」と挙げる。

 先述の特典プログラムにより、若年層を中心に契約獲得が伸長しているとし、第三者機関によるアンケートでも、高い評価を得た。

 鈴木氏は、「700万は通過点、すでに800万は見えてきている状況」と述べ、さらに「その先1000万を早い時期に達成していきたい。1000万という数字は非常に象徴的、シンボリックな数字だと考えている」と意気込む。 1000万契約数を達成することで、大きく市場が変わっていくと期待を寄せた。

プラチナバンドとMassive MIMO

代表取締役社長の矢澤俊介氏

 矢澤氏は、楽天モバイルの通信品質について説明。

 矢澤氏は、4Gの人口カバー率99%を達成していることを挙げた一方「繋がったあとの通信速度は、楽天モバイルが非常に強みを持っている場所」とし、仮想化とMassive MIMOの活用で、他社に差を付けているとアピールする。

 鈴木氏も先に挙げた「仮想化」は、従来までは専用のハードウェアが必要だった携帯電話のネットワーク設備について、汎用のハードウェアにソフトを載せてネットワーク設備にできる技術。矢澤氏はこの仮想化技術と、数多くのアンテナでスポット的に通信することで大容量の通信が期待できるMassive MIMOの2つの技術を利用し、ユーザー体験を向上させているとした。

プラチナバンドのメリット

 同社は、2023年に700MHz帯電波の割当を受け、6月27日からこの周波数帯での通信サービスを開始している。この帯域を含む700~900MHz帯の周波数帯は、通称「プラチナバンド」と呼ばれており、障害物による減衰や障害物に回り込んで電波が届くため、地下や屋内でも通信しやすくなる。

 このプラチナバンドは、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクの3社はすでに割当を受けて利用しており、さまざまな議論を経て楽天モバイルにも割り当てられ利用できるようになった。

 矢澤氏は、プラチナバンドの割当により「繋がりやすさも他社と同等ではなく最強に持って行きたい」とし、プラチナバンドへの期待を口にした。従前より利用している1.7GHz帯でも多くをカバーできているとする一方、今回のプラチナバンドでは地下や高層階などこれまで繋がりにくかった場所においても入るようになると説明。

 同社の基地局には、700MHz帯と1.7GHz帯の両方に対応するデュアルバンド対応アンテナを採用しているものがある。従来の1.7GHz帯対応無線機(RU)に加え、700MHz帯対応の無線機を足すことでプラチナバンドを展開でき、コスト効率よく基地局を展開できるとし、スピード感を持って展開することを矢澤氏は強調する。

「これからは5G」

 楽天モバイルにとっては、「これからは5G」(矢澤氏)という状況であり、8割強の5G基地局でMassive MIMOを採用している。矢澤氏は、他社と比べ、楽天モバイルは圧倒的にMassive MIMOの採用率が高いと述べ、「上り下りともに高速な”最強5G”を実現している」と胸を張った。

 また、Sub6の基地局について「仮想化しているため、1つのSub6基地局をソフトウェアアップデートで日に日に改善していくことができている」と説明。通信品質にあたって指摘されている4G/5G間のハンドオーバーについても「非常にスムーズで特にストレスが無いと思う」とアピール。これも仮想化による功績の一つだと語る。

 なお、Sub6帯については、衛星通信との干渉が課題にあり、衛星通信の地上局近くなどでは、出力を抑えた運営を行っていた。地上局の移転が進んでおり、干渉の懸念がなくなった地域から順次出力を調整し、より広いエリアで5Gが利用できるようになる。

 同社では、関東エリアに先立ち東海、関西で2023年からエリア拡大を実施しており、広い範囲が5Gのサービスエリアになったという。今年からスタートする関東エリアにおいても、5Gの早い通信速度が体験できるエリアが順次広がるという。

 矢澤氏は、非地上系通信ネットワーク(NTN)の「AST SpaceMobile(スペースモバイル)」にも触れ「この1年間でプロジェクトは非常に順調に進捗している」と説明。日本の国土の3割はサービス展開できていないが、このスペースモバイルにより3割を埋めて日本中どこでも繋がるモバイル体験や、災害時にもすぐにリモートで支援できると開発の意義を語った。

仮想化ネットワークの未来

代表取締役 共同CEO兼CTOのシャラッド・スリオアストーア氏

 「最強を目指す」と宣言した鈴木氏、5G品質に自信を持つ矢澤氏に続いて登壇したのは、楽天モバイルCTOであるスリオアストーア氏だ。

 同氏は、楽天モバイルユーザーのデータ使用量が年々増加していることをあらためて示す。それによれば、ユーザー1人あたりの通信量は約25GB。5Gのトラフィックもこの1年で倍増しており、「楽天モバイルが安定したネットワーク運用ができていることを示したもの」(スリオアストーア氏)。

 同社のネットワークが目指すものは「自律型ネットワーク」であるとスリオアストーア氏は説明。自動運転車と同様にAIによる自律したネットワーク運用が行われることを目指しており、自動運転のレベルに例えると「レベル3.5」だとし、予期しないエラーに対する人間の介入は最小限に抑えられていると説明。

 同社のネットワークにはAIが“DNAに組み込まれている”とスリオアストーア氏はコメント。つまり、設計自体にAIが組み込まれているため、レポート作成から分析、予測などさまざまな観点でAIが活用されているという。最終的には、楽天グループのメッセージアプリ「Viber」のUIを利用したネットワーク管理ができるレベルにまで持って行きたいとした。

 一方、ソフトウェアで管理している仮想化ネットワークであるため、省エネにも対応できる。たとえば、夜間やオフピーク時などには、機器をスリープモードにし消費電力を削減することで、エネルギーコストの削減に貢献すると説明する。

巨大な楽天経済圏も有利に

代表取締役 共同CEOの鈴木和洋氏

 鈴木氏は、携帯キャリアの経済圏では「楽天経済圏」のサービスが高い順位を獲得していることを示し「楽天のサービスがいかにマーケットに浸透しているかを証明している」とコメント。楽天ならではのサービスを続々と導入しているという。

 また、AI活用にも力を入れており、検索ボックスや旅行プランの提案などをする楽天のAIサービスと強く連携しながら、楽天モバイルの進化を図っていきたいとした。