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「AST SpaceMobile」は何がすごい? 進捗は? 楽天 三木谷氏とAST アヴェラン氏が語る【Rakuten Optimism】
2024年8月2日 13:54
楽天モバイルは非地上系ネットワーク(NTN)として、地上の基地局ではカバーできないへき地や離島、海上などを空からエリアカバーすべく「AST SpaceMobile」(スペースモバイル)を進めている。
1日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で行われている楽天グループの最新技術や取り組みを紹介するイベント「Rakuten Optimism 2024」では、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と、AST スペースモバイル(AST SpaceMobile)会長兼CEOのアーベル・アヴェラン氏が、この取り組みの進捗や未来を語った。
「AST SpaceMobile」
スペースモバイルは、楽天モバイルとAST スペースモバイルが共同で開発を進めているNTNで、衛星と携帯電話が直接通信し、ブロードバンドサービスを提供するもので、日本国内で2026年内の提供開始を目指している。
低軌道衛星を活用したサービスで、低い軌道に複数の衛星を飛行させることで、空から日本全体をエリアカバーする取り組み。これにより、これまで地上の基地局に頼っていた通信が、空さえ見えれば地上から離れた海上や、離島などでもブロードバンド通信ができるようになる。
スペースモバイルの有意性
アヴェラン氏は、数多く登場しているNTNと比べたスペースモバイルのメリットについて「宇宙から直接携帯電話に接続できること」を挙げる。
たとえば、スペースXのStarlinkでは、通信をするのにアンテナが必要だが(編集部注:Starlinkは2024年中にauスマートフォンと直接通信できるサービスを提供予定)、スペースモバイルでは、空が開けていればアンテナなしでどこでも通信できるとアピールする。
三木谷氏は、緊急時の通信の必要性を指摘。先日日本でもサービスの提供が開始された「iPhoneの衛星SOS機能」について「良いサービスだと思うが、ブロードバンドは使えない。iPhoneだけ使えるもの」とコメント。一方、スペースモバイルでは、携帯電話で利用できる周波数で通信するため、シームレスかつブロードバンド接続が実現するとした。
3500の特許
低軌道衛星と携帯電話を直接繋ぐためには、技術力が重要だとアヴェラン氏は語る。
距離が長い通信をするためには、一般的に大きなアンテナが必要で、従来は衛星通信では大きなパラボラアンテナが必要だった。スペースモバイルでは、携帯電話に搭載されている小さなアンテナで通信するために、衛星に搭載しているアンテナを大きくしているという。
スペースモバイルで用いる衛星「BlueBird」は、16m×16mの“今まで類を見ないような”(三木谷氏)巨大な衛星を利用している。1つずつのパーツを小型化していくだけでなく、打ち上げた後どう宇宙に展開するかといった点まで、高度な技術が要求され、それを動かすソフトの技術が必要だという。
この衛星5基に対して1つのロケットで打ち上げるといい、アヴェラン氏は衛星に係る特許は3500にのぼるとする。
災害時の有用性
NTNでは、離島などへき地や海上などのエリアカバーだけでなく、災害などで地上の基地局が障害で利用できなくなった際のエリアカバーも期待されている。
アヴェラン氏は台風や災害など地球上で何が起こっても対応できるとコメント。スペースモバイルでは、地上の携帯電話基地局を必要とせず、インフラが空にあるため、日本や米国の隅々までエリアカバーできる。災害など緊急時もその場所をカバーでき、必要であれば衛星の角度を制御し、特定の箇所への接続性を高めることができるという。つまり、災害時などで地上の基地局が利用できない際には、スペースモバイルの通信リソースをその場所に傾けることで、緊急時にサポートできる。
三木谷氏も、1月の能登半島地震を例にあげ「いくら携帯電話事業者間でローミングしても、光ファイバーがそもそも切れていることや、通信衛星をバックホールにしても電源がなくなればサービスができなくなる」と指摘。スペースモバイルでは、携帯電話と直接通信するため、携帯電話の電池さえあれば通信できるようになると、日本においても有効なサービスだと強調した。
日本は「最初のタイミングで提供開始」と三木谷氏
アヴェラン氏は、実証の段階では「衛星が少なく、24時間フルタイムでのサービス提供ができない」とコメント。衛星1基は、およそ1時間30分で地球を1周するといい、地上では通信する衛星を適宜交代させることで、連続して通信できるようになる。このため、地球全体をカバーするには、多くの衛星が必要となる。
楽天モバイルのほか、世界の40の重要な事業者がスペースモバイルに参画しているが、日本は電力システムなどの開発や調達をしており、重要な市場だと強調。日本をカバーするには、45基の衛星が必要だが、早いタイミングで日本でも提供開始するとした。三木谷氏は「日本が最初になると思っている」とし、数週間以内に新たな衛星の打ち上げなど発展が見られると、2026年サービス開始の進捗を示した。