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Uber Eatsのロボット配送が6日にスタート、雨の中でも懸命に運ぶロボットの様子を見てきた

Uber Eats Japanと三菱電機、Cartkenが業務提携、都内でロボットによるUber Eatsの配送が6日にスタート

 Uber Eats Japanと三菱電機、Cartkenは、AIを活用した配送ロボットを使ったデリバリーサービスを3月6日から提供する。

 提供エリアは、東京都内の一部地域で、ロボットによる配送を了承した加盟店の商品を配送する。ユーザーは、「ロボットによる配送を了承する」か「従来通り人による配送を希望する」かを選択できる。

左から、三菱電機 開発本部 先進応用開発センター長の田中 昭二氏、Uber Eats Japan マーケットオペレーション ディレクターのアルビン・ウー氏、Cartken CEOのクリスチャン・バスク氏

日本はUber Eatsにとって重要な市場

Uber Eats Japan マーケットオペレーション ディレクターのアルビン・ウー氏

 Uber Eats Japan マーケットオペレーション ディレクターのアルビン・ウー氏は、「日本はUberEatsにとって世界でも重要な国」とし、47都道府県で多くのユーザーが利用しているという。その中で、加盟店やユーザーが多く集まる地域では、将来的に配達員が少なくなると指摘。また、過疎地においてもUber Eatsのネットワークを広げるべく、今回ロボットによる配送を進めたとアルビン・ウー氏は言う。

 一方で、「すぐに普及するものではない、おそらく10年後も配達員が活躍する」とし、現在の人間に頼る配達ネットワークを補完する一つのソリューションとして期待するとした。

 Uber Eatsについて同社シニア・オペレーション&ロジスティクス マネージャーのアニルド・デヴラパリ氏は、グローバルで1万1000を越える都市で約89万の加盟店の規模で運営していると説明。平均で30分以内の配達を実施しており、グローバルはもちろん日本においても成長しているとした。

シニア・オペレーション&ロジスティクス マネージャーのアニルド・デヴラパリ氏

 日本では、5年間で47都道府県でのサービススタートを達成し、調理された料理以外にも、日用品が医薬品、雑貨を扱う加盟店も増加傾向にあるという。2022年には、加盟店独自のサイトで商品を販売し、配送にUber Eatsのネットワークを活用できる「Uber Direct」のサービスを開始するなど、食品配送だけにとらわれないさまざまなソリューションを提供している。

三菱電機が運用を担当

三菱電機 開発本部 先進応用開発センター長の田中 昭二氏

 今回の配送ロボットの運営は、三菱電機が手がける。同社 開発本部 先進応用開発センター長の田中 昭二氏は、「今後ますます深刻化する物流クライシスへの対策の一つだ」とし、配送ロボットに期待を寄せる。

 一方で田中氏は、「ロボットによる従来通りのサービスの継続」だけでなく、さらに多様なニーズへの対応を可能とすることで、人々の暮らしが豊かになるとし、単純な「人間の仕事の代替」だけにとらわれないソリューションの展開を示唆した。

 同社のソリューションでは、現在のビルや建物の玄関同士を結ぶ「屋外の横の移動」だけでなく、エレベーターと協調し、ビル内の部屋の前までの配送ができる「縦移動」もできるよう検討しているという。実際には技術面では可能だが、ビルのオーナーや管理者の協力や、他社のエレベーターとの調整が必要となるが、今後もより多くの企業によるさまざまなユースケースに対応できるように取り組みを進めていく。

 デリバリーサービスだけでなく、ロボットによる配送ソリューションでは、たとえば工場の中での配送をロボットに担ってもらうこともあると紹介。人が楽に作業ができるだけでなく、危険な薬品などの配送にロボットを活用することで、従業員の安全を担保するといった使い方もあるとした。

米Cartkenのロボットを活用

Cartken CEOのクリスチャン・バスク(Christian Bersch)氏

 今回の配送サービスでは、米Cartkenのロボットが利用されている。同社CEOのクリスチャン・バスク(Christian Bersch)氏は、同社のロボットについて、米国内でのラストワンマイルの補完や、公道や私有地内、工場内での配送に活躍していると説明する。

 たとえば、混雑した道路や、大学のキャンパス内、ショッピングモールやオフィス、スーパーマーケット、レストラン、工場など、米国内では多くの場所で多様なユースケースに活用されている。

 ロボットには、360度あらゆる場所を撮影できるカメラを搭載しており、周りの環境を検知するだけでなく、リモートのオペレーターがモニタリングを実施するのに活用している。

 バッテリーも丸1日の稼働に耐える容量を備えており、日本国内では道路交通法に定める遠隔操作型小型車として最高時速5.4kmで走行する。ロボットにはライトが搭載されており、道路を走行する際や夜間での稼働時でも、周囲にロボットの存在を知らせながら走行できる。

 同社では、今回のロボット「Model C」以外にも、大型の「Model E」があり、このシリーズでは、棚を備えたものや箱形の物があり、さまざまなユースケースに合わせた製品ラインアップを展開しているとアピールする。

雨天でも安全に配送するロボット

 今回のデリバリーロボットによる配送サービスは、平日の10時~17時に稼働し、ロボットによる配送を了承した加盟店の商品を配送する。6日のサービス開始時点で、2つの加盟店の商品が配送される。

 注文するユーザーは、ロボットによる配送の対象となった場合、注文画面にその旨が紹介され、「ロボットによる配送を了承する」か、従来通りの「人による配送を希望する」か選択できる。ロボットによる配送を指定した配送には対応しない。

 ロボットによる配送となった場合、ロボットは商品を受け取りに加盟店の前まで移動し、到着すると加盟店の注文管理タブレットに通知が届く。加盟店のスタッフは、その通知を元にロボットと合流し、ロボットの蓋を開けて中に商品を入れる。

 商品が入ると、蓋が自動ロックされ、注文者の元に配送される。

 ロボットが注文者のもとに到着すると、注文者のアプリで通知がなされ、注文者がロボットに合流する。その後、アプリ操作で蓋のロックが解除され、注文者は蓋を開けて商品を受け取る流れになる。

 ロボットには、緊急停止ボタンを備えているほか、複数のカメラで選任のオペレーターが遠隔監視し、ロボットを操作する。また、現場対応スタッフを配置し、万が一の際は人間の配達パートナーと同様に対人対物損害補償を備えている。

 デヴラパリ氏は「あらゆる配達のニーズを満たせるのは遠い先」としたものの、「配達ニーズが高まる雨天時に、配達パートナーが少ない」といった直近の問題がロボットで補完されるなど、すぐにメリットが現れる場面もあると説明。将来的には、ビルのフロアや過疎地域などの配送ニーズを満たすなど、ロボットが活躍できる未来に向けて、さまざまな活用基盤を開発しているとした。

 実際の走行を見ると、成人の腰よりも低い高さ(スペック値のサイズは長さ71cm×幅46cm×高さ60cm)であるものの、フラッグや走行中に点灯するライトで、雨天という環境下でも通行人からもわかりやすくなっている。

走行時はライトを点灯
スマートフォンアプリで通常通り注文するだけで配送される
信号待ちするロボット
加盟店に到着すると、料理をロボットに収める
雨の中でも配送する
注文者は、アプリの操作で蓋のロックを解除し、中から商品を取り出す

 交差点進入時は、信号の現示にかかわらず一時停止し、確認の上進むようになっている。公道では、歩道を走行する。最高時速5.4kmで走行し、混雑していない場所では人が早歩きする程度の速度で進む。途中人が横切る場面があったが、すぐにブレーキが掛かり、車体も安定しているようだった。