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KDDI「αU」がいよいよフルラインアップに、中馬氏が語る新サービスの狙いと今後のメタバースの行方とは

 KDDIは24日、メタバースサービス「αU」の新サービス「αU live」と「αU place」、「αU metaverse」の新コンテンツなどを発表した。

 新サービス発表会では、KDDI 事業創造本部 副本部長の中馬 和彦氏から約半年間のサービスの振り返りや今後の展望が語られたほか、後半には渋谷区の長谷部 健区長が登場し、今週末から開催される「バーチャルハロウィーン2023」への期待などをコメントした。

約半年の振り返り

KDDI 事業創造本部 副本部長の中馬 和彦氏

 中馬氏は、KDDIは早くからメタバースに着目、取り組みを続けていたとし、これまでのサービスを開発していく中での課題を反映させていると説明。

 今回のαUでは、サービスごとに5つのものが用意されているが、バーチャル渋谷開発時に「“One metaverse”(1つのメタバース空間でさまざまなサービスを展開する)を目指していたがうまくいかなかった」とし、ECを切り離したサービスを展開するなど、独立させたサービス展開で使いやすいサービスを提供していく方針になっているという。この経験が、今回のαUにも生かされていると中馬氏は語る。

 αUのサービス開始から約半年が経過した、中馬氏は、手応えとして「メインのプラットフォームで配信者が1000人を超える規模にまで成長している」とその好調ぶりをアピール。

 特に、法人や地方自治体向けでは、「観光地のWebサイトからメタバース空間でチラ見せができたり疑似体験を提供できたりする企画」などで「予想以上の盛り上がり」(中馬氏)を見せているという。法人事業での好調ぶりについて中馬氏は、最初のステージから次のステージに移行しつつあると感じているという。

 配信などイベント開催時は盛り上がりを見せる一方で、それ以外の“定常利用”という点ではまだ定着していないという認識を示した。配信されている部屋では人も多く盛り上がっているが、街に一歩出てみると人が少ないといったことが多いという。

 中馬氏は、この定常利用を促進するために「ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活性化によるコンテンツ不足の解消」への取り組みを進めていると説明。コンテンツ投稿のユースケースが確立していなかったり、メタバース上の3Dコンテンツを制作するために一定のスキルが必要である点が壁になっていると指摘する。

 ただ、コンテンツ制作のハードルは、生成AIを活用することで下げられるとし、近い将来誰でもできるようになりつつあるとした。

αU metaverseでは、配信の一般開放やカラオケ機能をリリース

 メインのプラットフォームにおける定常利用促進をすべく、αU metaverseでは、配信の一般開放とカラオケ機能がリリースされた。

配信の一般開放

 これまでは、一部のクリエイターに限定して提供していた配信機能を、一般ユーザーも利用できるようにする。コンテンツ不足という点で見ると、配信ユーザー数の増加による「数」で不足を補う格好だ。

 取り組みを説明する事業創造本部 Web3推進部 1Gの青木 里穂氏は、多様なユーザーが配信者となることで、視聴ユーザーの裾野も広がり、新たな出会いやコミュニケーションが生まれることを期待しているとしている。

事業創造本部 Web3推進部 1Gの青木 里穂氏

メタバースカラオケ「カラオケボックスαU」

 メタバース空間上でカラオケが楽しめるコンテンツ「カラオケボックスαU」を展開する。期間は2024年1月23日まで、無料で利用できる。

 歌える楽曲は100曲で、エクシングの通信カラオケ「JOYSOUND」が音源を提供する。

 サービスでは、大小さまざまな部屋が設けられており、ユーザーは自由に部屋に出入りできる。リアルのカラオケルームさながら“キー”や“テンポ”も変えることができるほか、歌唱後には採点機能で自分の歌唱を比べられる。

メタバース上で、カラオケ店のフロントから部屋まで入り、手元で楽曲を予約し、歌唱できる。歌唱後は採点機能で採点される

NFTやクリエイターエコノミーに関する取り組みも

 また、αUではブロックチェーン技術を活用したNFTも、これまでに1万点以上を展開しているという。主要国産ブロックチェーンへの対応などを進める。

 クリエイター向けには、先述のNFTのほか、AIがプロデュースする取り組みも進めている。実際のプロデューサーの要素をAIで学習させ、時間に関わらず稼働できるAIにより、多くのアーティストと接点を持てるようにすることで、クリエイティブ活動促進が期待できるとしている。

 中馬氏によると、現在プロデューサー数名を巻き込んで学習中としており、年内のリリースを目指しているという。

「バーチャルハロウィーン2023」

 後半では、KDDIと渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会が10月27日~31日に実施する「バーチャルハロウィーン2023」が紹介された。

 中馬氏は、新型コロナウイルスによる制限があった第1回目から多くのユーザーが楽しんだ実績を挙げつつ、今年のテーマはこの1回目の開催と同じ「Stay Virtual」であることを取り上げる。

 コロナによる制限が緩和された2023年の渋谷は、土日になると渋谷の路上が混雑しており、渋谷でのハロウィンイベント開催には大きな問題があることを指摘。「渋谷はハロウィン会場ではない」という渋谷区の広報もあり、今回“まさしくバーチャルハロウィンの出番”とし本心に帰った気持ちで臨む姿勢を示した。

 今回のバーチャルハロウィンでは、αUのほかクラスターなどさまざまなプラットフォームで展開されるといい、機能やサービスが拡充されたαUなどでユーザー自身が体験できる「リアル以上」を提供すると意気込みを見せた。

 渋谷区の長谷部 健区長は、年々増加する来場者に対して対処療法的に対応してきたが「1回トラックがひっくり返されるという事件があり、ここが分岐点になり『ハロウィンを楽しむのではなく、お酒を飲んで暴れる来場者』が目に付くようになってきた」とコメント。

渋谷区の長谷部 健区長

 長谷部氏は「街でパーティーをせずにバーチャルで楽しんでほしい」とあらためて呼びかけた。