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どこでもリモートプレイができるように、KDDIの5G SAを使ったゲームストリーミング最新技術を体験してきた【TGS 2023】

 KDDIとソニーは20日、KDDIの5G SA(スタンドアローン)の商用ネットワークで、混雑環境下でのゲームストリーミングに関する実証実験に成功したと発表した。

 同社はこれまでも共同でゲームストリーミングに関する実証を進めてきており、今回は商用環境に近い「商用5G SA回線」を使った環境での実証を行ったという。

 今回は、実際に混雑が見込まれる「東京ゲームショウ 2023」(TGS 2023、千葉県千葉市の幕張メッセで開催)の会場内で、リモートプレイとリモート先と同じゲームハードで格闘ゲームをプレイしてきた。なお、22日~24日のTGS 2023では今回の取り組みの一般展示はされていない。

ネットワークスライシングを使ったゲーム体験

混雑した環境下では、ゲームプレイにも支障がでる

 あらためて、今回のサービスを技術面で掘り下げると、5G専用のコアネットワークを利用した5G SAでは、ネットワークを用途別に切り分けられる「ネットワークスライシング」技術がある。この「ネットワークスライシング」では、通常回線が混雑している場合でもいわば専用回線のように利用できるため、大容量かつ超低遅延の通信が確保できる。

 ネットワークスライシングでは、遠隔医療や遠隔工事など産業用途などでのユースケースが中心だが、今回の取り組みでは、自宅などのゲームハードと遠隔地にいるスマートフォンを接続し、低遅延のリモートプレイができるサービスの展開を目指している。

 前回の取り組みでは、商用サービス開始前の5G SA回線でネットワークスライシングを使った実証を実施していた。今回は、商用回線での実証に加え、ゲーム専用のネットワークスライシングについても帯域幅などを調整して実証を行っている。

リモートプレイでも違和感やカクつきがないプレイを楽しめる

左がリモートプレイ、右が現地設置のゲーム環境(上部の画面と右の白いコントローラー)

 今回は、TGS 2023のXperiaブース近くで体験してみた。

 使用するのは商用5G SAで接続したXperiaスマートフォンと、比較用に現地に設置したゲーム環境(リモートプレイではないもの)。5G SA回線については、今回用に特別に基地局を用意しておらず、常設されている既存の基地局を使って通信している。

 両方を一定時間プレイしてみたところ、Xperiaでのリモートプレイ環境でも、違和感を感じることなくゲームがプレイできた。

ラグやカクつきが感じられずにプレイできた

 同社が実証実験で使用した高負荷環境での実験では、ゲーム用にカスタマイズしたネットワークスライシングとカスタマイズしていないものとを比較している。

 カスタマイズ前のものでは、スループットが安定しておらず、カクつきがひどくまともにプレイできたものではないが、カスタマイズしたスライシングでは、一定のスループットが維持されており、快適にプレイができるようすが見られた。

どこでも大会に参加できる未来

 5G通信のサービスエリアについて、KDDIでは生活動線をメインにエリア展開を進めており、サービス開始当初よりエリアが拡大したとはいえ、住宅地などでは5Gエリア外だったり、LTEの転用周波数(NR)によるサービスだったりする。

 今回の実証では、Sub-6の周波数を使用しており、NRでのリモートプレイでは帯域などに課題があるという。

 サービスエリア自体は今後も拡大を期待したいところであるが、たとえば今回のサービスが利用できれば、リゾートホテルのプールサイドでeスポーツ大会に参加できたり、空港のターミナルで自宅のゲームをプレイできたり、据え置き型ゲーム機の大容量高画質なゲームを気軽に体験できる未来が来ることが想像される。

 今回の取り組みは、これまで法人向けソリューションが中心だった「5G SA」や「ネットワークスライシング」のコンシューマーサービスのモデルケースに位置づけられそうで、なかなか“これぞ5G”というサービスが登場しない中で特徴的なサービスになるかもしれないと感じた。