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どこでも快適にプレステで遊べるようになる?――KDDIとソニーが5G SAでゲームストリーミングの実証

 KDDIとソニーは、5G SAを活用したゲームストリーミングの実証実験を実施した。

外でもプレステ

 実証の内容は、プレイステーションのゲームを外出先のAndroidスマートフォンからスムーズにプレイできるというもの。

 ソニーでは、出先でもスマートフォンからプレイステーションのゲームができる「PS リモートプレイ」が提供されているが、こちらは4G LTE回線を経由するかたちとなっており、外出時の利用の場合は混雑時の安定性に課題を抱えている。

 今回の実証では、通信に5G SAを利用。SA(スタンドアロン)の特長のひとつである「ネットワークスライシング」を活用。ゲーム専用にネットワーク分割することにより、現在リモートプレイで抱えている安定性の課題の解決を図っている。実証中では15Mbps程度の通信がスムーズに流れるよう、設定されているという。

 KDDI 事業創造本部 次世代基盤整備室長の泉川晴紀氏は、スライシングについて、道路を例に出して説明する。乗用車やトラックなどさまざまな目的のクルマが一緒に走っているが、渋滞が起きると皆停車せざるを得ず、速達(=優先したい通信)が届かないといったこともある。

 そこで、目的別に専用の車線を与えるのが、ネットワークスライシングだ。映像が高精細かつ、プレイヤーの操作にリアルタイムに反応しなくていけないゲームでも、それ専用のネットワークで通信することにより、ほかの通信でネットワークが混雑していても、カクつくことなく安定したゲームプレイが可能になる。

 これが実現すれば、友人との協力プレイやゲーム内のイベントなど、どうしてもその時間にプレイしなくてはいけないというとき、たとえ外出中でも手軽に自宅と同様の環境でプレイできるなどのメリットがある。

新時代のエンタメを模索

 新型コロナウイルスの影響により、デジタル化の流れが急速に進む中、泉川氏は今後、「場所に縛られない新しい生活」が定着するとコメント。

 KDDIとソニーが共同で「場所に縛られないエンタメ」として、ゲーム領域以外でも動画やイベント参加などの取り組みを行ってきたことを紹介する。両社ではこれまで、8K動画のストリーミングや音楽アーティストの授賞式「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022」の無料配信などを実施してきた。

 ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部 第1ビジネス部 統括部長の木山陽介氏は同社の技術で「リアルタイムにリアリティにリモートの体験」を届けることに注力していると語る。

 テレビやカメラなど、AV製品でさまざまな体験をハードウェアベースで届けてきたソニーだが「リアルタイムに没入体験を実現するには5Gが必要」として、KDDIとタッグを組んだ。木山氏は「ハードウェアの提供のみではなく、5Gでの想像を超える体験の提供」に注力していくとしている。

たしかに快適

 KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部長の渡里雅史氏によれば、今回の実証では外出先と自宅内を想定する2拠点間を5G SAで接続。スライシングされたネットワークに接続されたスマートフォンと混雑した状態を模した通常のネットワークに接続された2つのスマートフォンが用意された。

左=専用スライス 右=通常スライス

 筆者自身も体験したところ、専用スライスに接続されたスマートフォンはまったく問題なく、リモートでプレイしているということも感じさせないほどに違和感なくプレイできた。

 一方で通常スライスのネットワークでは、頻繁に映像がコマ飛びしているといった印象で、快適なゲームプレイができるとは言いづらい。

左=専用スライス 右=通常スライス。スムーズさにかなりの差が感じられた

 今回は、スライシングを用いて安定したネットワークの提供ができるという部分の実証を行ったもので、現状ではユーザーにスライスをどう割り当てるかなどの技術的な課題もあるという。加えて、将来的には同様の仕組みを用いるサービスが増えると帯域不足になる可能性もあり、スライシングの方法についても検討が必要とされた。

 実際にどのような形態でサービスが提供されるかは検討中とされるが、近い将来には待ち合わせのちょっとした時間やバス、電車などの移動中でも気軽にコンソールゲームを楽しめる日が来るのかもしれない。