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iPhone 15やApple Watchはもっとエコに、カーボンニュートラル推進のAppleの取り組み

 米アップル(Apple)は、2030年までにサプライチェーンを含めたカーボンニュートラル達成を目標とする「Apple 2030」の実現に向けて取り組んでいる。

 先日行われたAppleのグローバル発表会「Apple Event」でお披露目された新製品「Apple Watch Series 9」や、「Apple Watch Ultra 2」は、新しいバンドと組み合わせると、カーボンニュートラルを達成することが発表された。Appleがカーボンニュートラルとなる製品を発表するのは初めて。

「Apple Watch Series 9」(ミッドナイトアルミニウム+ミッドナイトスポーツループ)
「Apple Watch Ultra 2」(新しいオレンジ/ベージュのトレイルループ)

 「Apple Watch Series 9」および「Apple Watch SE(第2世代)」と新しいスポーツループの組み合わせおよび、新しいトレイルループまたはアルパインループと組み合わせた「Apple Watch Ultra 2」がカーボンニュートラルな製品で、これらの製品におけるカーボンニュートラルは、SCS Global Servicesの認証を受けている。

 また、全ての製品ラインでレザーの使用を廃止し、新たに「ファインウーブン」素材を使ったバンドや、iPhone用ケースを発売するなど、Apple Watch以外の製品でも環境負荷の低い製品開発を重視している。

 Appleのこれまでの実績として、2020年には自社事業におけるカーボンニュートラルを達成した。Appleは、2015年と比較して炭素排出量を45%以上削減する一方で、同期間の売上高は65%成長させるなど、脱炭素を推進しながら成長を続けている。

「ファインウーブン」素材のケース、再生繊維を活用したアクセサリ

 Appleは、カーボンフットプリントが多いレザーを全ての製品で廃止し、代わりに「ファインウーブン」素材を用いた、新しいMagSafe対応ファインウーブンケースや、MagSafe対応ファインウーブンウォレット、新しいApple Watchのバンドを発売する。ファインウーブン素材は、レザーに比べて炭素排出量が大幅に削減されいる。

MagSafe対応ファインウーブンウォレット

 新しい「iPhone 15」および「Apple Watch」のラインアップは、100%再生希土類を使用したマグネットや、100%再生コバルトを使用したバッテリーが含まれ、どちらも2025年までに主要部品に100%再生素材を使用する目標に向けて前進しているという。また、新しいスポーツループは82%再生繊維を使用して再設計された。この原糸には、廃棄された魚網からの素材が含まれている。

新しいスポーツループは82%リサイクルされた原糸を使用

 Appleでは、2025年までにプラスチックを一切使わないパッケージにする目標を掲げている。新しいApple Watchとバンドのラインアップは、100%繊維ベースのパッケージを実現しているほか、「iPhone 15」の全モデルのパッケージは、その99%以上が繊維を基にした素材で作られている。

新しいApple Watchとバンドのパッケージは100%繊維ベース

 製品の輸送は、Appleのカーボンフットプリント全体の約9%を占めるが、Appleは多くの製品の輸送を、航空輸送と比べて炭素排出量の少ない海上輸送や鉄道輸送などに移行している。

 Appleの算出によると、同じ製品を航空輸送から海上輸送に切り替えることで、炭素排出量を95%削減できるという。

 カーボンニュートラルを達成する製品の輸送では、その総重量の50%以上を航空以外の輸送手段により輸送し、輸送による炭素排出量を約半分に削減する。また、「Apple Watch Series 9」や、「Apple Watch SE(第2世代)」の全てのモデルのパッケージを再設計して小型化することで、一度に出荷できるデバイスの台数を25%増加させた。

環境に優しい時間帯に電力を使いやすくする「グリッド予報」

 Apple自身とサプライヤーが脱炭素化を推進するだけでなく、ユーザーが環境への影響を理解して対処することを手助けするアプリケーションとして「グリッド予報」を提供する。

 「グリッド予報」は、Apple製デバイスのホームアプリに追加されるツールで、ユーザーの電力網に比較的クリーンなエネルギー源や、クリーンではないエネルギー源がある時間帯を表示する。

「グリッド予報」

 たとえば、風力発電と太陽光発電が電力網で使用するよりも多くのエネルギーを生み出す時はエネルギーの一部が無駄になる。また、より少ない炭素排出量で電力が生み出される時間帯もある。こうした、通常よりもクリーンな時間帯に電力を使用することで、家庭で使う電力が気候変動に及ぼす影響を軽減できる場合があるという。

クリーン電力の利用促進

 カーボンニュートラルなApple Watchモデルの製造は、Appleとサプライヤーの投資および調達による100%クリーン電力でまかなわれている。これらのモデルのパーツや部品を製造する全てのサプライヤーは、2030年までに全てのApple製品の製造において、100%再生可能電力を使用することを確約しているという。

 Appleでは、自社のデータセンターとオフィスへの電力供給を目的に、太陽光および風力発電施設への建設と投資を10年以上前に開始した。2018年以降、Appleのオフィス、データセンター、直営店の電力はすべて再生可能電力によって供給されている。

 これらの取り組みにより、Appleとサプライヤーは、既に全世界で15ギガワット以上のクリーンエネルギーを生み出している。これは、米国の500万世帯以上に電力を供給するのに十分な量という。

 「Apple 2030」の実現に向け、Appleの直接製造費の支出先の90%以上に相当する300社以上が、Appleのサプライヤークリーンエネルギープログラムに参加し、2030年までに全てのApple製品の製造で100%再生可能電力を使用することを確約している。

 デバイスの製造および充電に使われる電力は、Appleの全製品ラインで最大の炭素排出源であり、充電の問題に対処するために、Appleは世界各地で大規模な太陽光および風力発電プロジェクトに投資している。カーボンニュートラルなApple Watchのモデルでは、ユーザーの充電による電力使用量をAppleが予測し、その100%相当をAppleが相殺する。