ニュース

「RHINOSHIELD」が100%リサイクルできるスマートフォンケースを開発、リサイクルコストを抑えたヒントは「単一素材」にあり

左から、RHINOSHIELD APAC市場エリアマネージャーのボア・ハン(Ba Hung)氏と、ブランドサステナビリティ部門ディレクターのダニエル・リン(Daniel Lin)氏

 C.Simumのアクセサリーブランド「RHINOSHIELD」(ライノシールド)は、100%リサイクル素材を使用したスマートフォンケースを開発するなど、サステナブルに着目した製品開発を進めている。

 「RHINOSHIELD」のこだわりや、サステナブルへの取り組みは、どこから来ているのか。今回は、ポップアップイベントの開催にあわせて来日しているブランドサステナビリティ部門ディレクターのダニエル・リン(Daniel Lin)氏から、世界のスマートフォンケースのリサイクル状況など、同社の取り組みも合わせて聞いた。

ブランドサステナビリティ部門ディレクターのダニエル・リン(Daniel Lin)氏

自社工場で生産する「RHINOSHIELD」

 「RHINOSHIELD」は、台湾発のスマートフォンアクセサリーブランドで、北米や欧州、アジア太平洋地域で展開している。ダニエル氏は、ほかのアクセサリーメーカーと異なる点を「自社工場で生産していること」と指摘する。

 台中に生産拠点を置いており、自社工場であるため、素材の研究開発などにも力を入れることができているという。

 ダニエル氏によると、「RHINOSHIELD」の創業者は当初「ケースを開発したい」という思いで始めたのではなく、素材の開発研究中に高い耐衝撃性の素材開発に成功し、その素材の活用ニーズを探っている中でスマートフォンケースに行き着いたと説明。創業した約10年前のiPhoneは表面にガラス素材を使用していたため、耐衝撃性の素材との相性が良いのではという発想で、研究開発が進められたとしている。

プラスチック問題の解決

 「RHINOSHIELD」では、ケース開発だけでなく、将来のビジョンとして「プラスチック問題の解決」を目標に掲げている。ケースの大半はプラスチック素材を使用しており、ダニエル氏は「今一番地球が直面しているプラスチック問題に密接した関係も持っている」と関係性を説明する。

 プラスチック問題の解消について、ダニエル氏は過去と現在、未来の3つの角度から見ることができるという。

 過去の角度では、過去の人類が考えたプラスチックの利用方法は“誤りだった”とし、より有効性の高い利用方法を考える課題があると説明。

 また未来の角度からは、今はまだ存在していない地球に与える問題を起こさないために、よりサステナブルな素材を開発することという。

 そして、現在の課題は「使用された材料をどのように使うか」ということだと問題提起する。

廃棄プラスチックの多くは処分されている現状

 ダニエル氏によると、廃棄プラスチックのうちリサイクルされているのは9%で、多くは埋め立てや不法投棄、焼却処分などの運命を辿っている。

 ダニエル氏は、リサイクルが進まない要因は「リサイクルコストが高い」ことを挙げる。プラスチックのリサイクルでは、素材ごとに分解分別する必要があり、回収し分解するコストが高くなってしまい、リサイクルが進まないと分析する。

 一方、ペットボトルはほとんどがリサイクルに回されているという。プラスチックと比較しペットボトルのリサイクルが進んでいる要因として、「ペットボトルは単一素材を使用している」ため、分解分別がしやすいと説明。リサイクルされた素材も、100%再利用に回せるという。

 スマートフォンケースの現状を、ダニエル氏は「毎年生産される10億個のケースのほとんどが、複数の素材で作られている」とし、これらのケースはリサイクルコストが高く、使用後はただのゴミになってしまうと指摘する。

 「RHINOSHIELD」では、設立3年目からプラスチック問題に取り組みはじめ、さまざまな研究を進めてきた。ペットボトルのリサイクル率95%に対し、ケースのリサイクル率は1%以下の現状を打破すべく開発したのが、独自のリサイクルシステムだという。

「RHINOSHIELD」独自のリサイクルシステム

 「RHINOSHIELD」のリサイクルシステムでは、6つのポリシーをもって独自の循環システムが形成されている。

 まず、材料調達にあたっては、有害物質を含まない素材を採用する。デザイン面では、単一素材の使用を原則とし、リサイクル率の最大化を図るという。

 また、製品自体の耐久性を向上させるため、数多くのテストを行うほか、製造工程を最適化し、製造効率向上による二酸化炭素排出量の削減といった、リサイクル以外の環境問題にも力を入れている。

 これらの取り組みの中で、今回登場したケースは、単一素材のケースをリサイクルして製造した100%循環リサイクルできる製品「CircularNext」だ。ダニエル氏は、これを「真のサステナビリティ。すべてを持ち合わせた製品」とアピールする。

「CircularNext」がなぜ画期的なのか

 他社のケースでは、高い保護性やデザインのために異なる素材を2種類以上使用している。複合素材を用いて製造されたケースは、分解分別が難しく、リサイクル工程で高いコストがかかってしまうため、経済性の問題からリサイクルされないという。

 「CircularNext」では、素材となる使用済みの製品自体が単一素材でデザインされたものであるため、そのまま100%リサイクルできるようになっている。

 また、「CircularNext」自体も同様に単一素材で製造されたケースであるため、これ自体を再度リサイクルし「CircularNext」の製品として製造できるという。「CircularNext」では、リサイクルされた回数が異なる素材同士が混ざらないよう、製品ごとに追跡できる二次元コードが印刷されている。

 たとえば、再利用2回目のケースであれば、同じ2回目のケース同士の素材を使用し製造される。この際に製造されたケースには、「リサイクル3回目」の二次元コードが印刷される。「CircularNext」では、最大6回までの再利用ができる素材が使用されているという。

 ダニエル氏は、「CircularNext」で使用される素材について、「(ブランドとして)より品質の高いケースをと取り組んできたが、高耐久性と環境性能を両立できる素材ができた」とコメントする。

一般ユーザーへの浸透が今後の課題

 一方で、リサイクルシステムの構築ができても、それにユーザーが参加しなければ機能しない。たとえば、今回の「CircularNext」では、製品を作る際の素材となる「使用済みのスマートフォンケース」が適切に回収できなければ、これまでのケースと同様廃棄処分されてしまう運命を辿ることになる。

 「RHINOSHIELD」では、すでに台湾などで販売チャネルや環境保全団体などと提携し、循環エコシステムを回す取り組みを実施しているという。日本においても、オンライン/オフラインの両面でユーザーとの交流を続けていくとしている。

 日本においては、今後オフラインでの販売や、実店舗を開設する予定があるといい、将来的には「ケース購入時にそのままリサイクルボックスに使用済みのケースを入れて帰る」といった循環エコシステムが成立しそうだ。

「CircularNext」の循環サイクルイメージ
さまざまな環境からスマートフォンを守ってきたケース
リサイクルボックスで回収される
同じ製品ごとに集められ
粉砕される
できあがったプラスチック
リサイクル素材で整形される
製品試験も行われ
パッケージングされて新たな製品として出荷される
ポップアップイベントでもリサイクルボックスが設置される。こちらは、他社製品でも持ち込み可能

 「RHINOSHIELD」(ライノシールド)のポップアップイベントは、4月4日~7日まで「代官山T-SITE GARDEN GALLERY」(東京都渋谷区)で開催される。