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通信の力で安全な登山&地域の魅力発信を、KDDIと御殿場市がタッグ

 KDDIと御殿場市が、通信を通じて富士山登山をより安全に楽しめる取り組みを開始した。あわせてVRを活用した新たな観光の実証実験が8月19日に実施される。

左=KDDI 嶋崎氏。右=御殿場市 勝又市長

映像発信で軽装登山を防ぐ

 両者ではこれまでも、外国人向けにタクシーでの翻訳サービスやコロナ禍におけるバーチャルガイドツアーなど、富士山の登山客に向けた施策を実施してきた。2023年は「安全登山」をひとつのテーマとする。

 富士山8合目付近の山小屋にネットワークカメラや気象センサーを設置。周辺の気象情報やリアルタイムの映像を「Mt. FUJI TRAIL STATION」(トレステ)や公式Webサイトでライブ配信する。通信には米スペースXの衛星ブロードバンド「Starlink」を用いており、これまでは難しかった山岳部からのリアルタイム映像伝送を実現した。

トレステでのライブ配信の様子

 御殿場市 市町の勝又正美氏は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に見直されたことでさらに多くの登山客・観光客が見込まれると見通しを示す。山や観光地に賑わいが戻る一方で懸念されるのが、登山客の遭難だ。富士山登山の経験のない登山者が軽装で登山を試みるなどの原因で救助の要請が舞い込む可能性が高くなる。御殿場須走口だけで例年20~30件の要請があるという。コロナ禍が明けて、多くの登山者が訪れるなか、遭難者の数も増えることが予想される。

 その対策として今回、ライブ映像や気温、天候などをリアルタイム配信することで事前に8合目の状況を確認できるようにして、登山者に適切な装備の着用を促す。これにより、より安全な登山環境の構築を目指す。あわせて、警察や消防なども含めて山岳遭難を防ぐ啓蒙活動や多言語表記のチラシなどでも軽装での登山や日帰りで登頂・下山を目指す弾丸登山が控えるよう呼びかけを進める。

 KDDIでは、登山シーズン中に富士山頂を5Gエリア化しているほか、登山口や登山道では1年を通して4G環境を提供している。KDDI 中部総支社長の嶋崎敏光氏によれば、7月下旬を目途に御殿場5合目付近も5Gエリア化されるという。開山期間には多くの観光客が訪れることから、同氏はそうした状況を踏まえ「ユーザーに安心してもらえる通信環境を提供する」とした。

御殿場市の魅力をVRで

 観光の復活にあわせて、御殿場市の課題となるのが、観光客が富士山を代表する有名観光地にかたよってしまうという点だ。

 KDDIと御殿場市では、課題解決のためスマートグラスを用いたVRソリューションを用いた実証実験を実施する。東京から御殿場市まで向かうバスツアーの一環として、車内でスマートグラスを提供。「auビジュアルガイド」を活用したもので、360度のVR映像で御殿場市の観光地を体験できる。

体験中のイメージ

 体験のなかでは、観光地にいる現地スタッフから、直接観光地に関する解説を聞くことができるほか、会話もできるためその場で魅力や疑問点を聞き出せるなど、これまでのガイドブックではできなかった新しい体験を創出する。観光コースは4つに分かれており、VR体験後に、好みのものを選ぶ仕組みになっている。

体験コースの例

 今回はあくまで実証実験としての位置づけで実施される。今後も継続するかどうかは実証中でのユーザーの反応によるという。