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NTT Comの「SIMのアプレット領域分割技術」が自販機に搭載へ、キャッシュレス対応の自販機拡大に一役

 NTT コミュニケーションズ(NTT Com)の独自技術「アプレット領域分割技術」を活用したSIMが、アイティアクセスの自動販売機向けのクラウド型決済端末に採用された。20万台規模の普及を目指す。

アイティアクセスの決済端末「VMPU-01L-E」

自販機のキャッシュレスを促進

 自動販売機のキャッシュレス決済を処理する端末向けに導入される。従来、決済端末内に保存していた個人情報などのセキュリティが求められる情報を、SIMのアプレット領域に保存する。決済端末にはソフトウェアとハードウェアの両面でセキュリティ対策が必要だが、今回のSIM導入によりセキュリティを堅牢化する必要のある範囲が狭まるため、決済端末の製造コストを下げる効果が見込める。

 自動販売機など、少額決済におけるキャッシュレス需要が増えるなか、そのコストが普及に歯止めをかけている。決済を通じてやり取りする情報には個人情報や支払いの情報など、セキュリティを担保する必要がある情報が多く含まれる。しかし、その対策には相応のコストがかかることが必至で、これまでビジネス展開を阻む足かせになっていたという。

 アイティアクセスは、非対面決済向けクラウド型決済端末でトップシェア。自動販売機向けに12万台の端末を展開しており今後、アプレット領域分割技術を用いるSIMを備える端末を20万台規模で展開することを計画している。

SIMに新たな付加価値

 アプレット領域分割の技術は、2022年にNTT Comが発表した。従来、通信事業者が管理していた、SIM内で任意の機能を実行できるアプレットと呼ばれる領域をSIMを利用する事業者に開放。機能開発には通信事業者との連携が必要だったこれまでと打って変わって、柔軟な機能開発の可能性を実現した。

 開発の背景には「IoT向けのSIMサービスが徐々にコモディティ化していることがある」とNTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 5G&IoT サービス部 IoTサービス部門 主査の村田一成氏は説明する。

 IoT市場が成熟するとともに技術が標準化し、広く普及する一方で提供事業者の増加や価格面などで競争が激しくなるなど市場環境が変化。導入を検討する企業も付加価値を提供するパートナーやエコシステムへの期待を示しているという。

 同技術を活用した仕組みとしてはこれまでにも、通信障害などを見据えたソリューションとしてNTT ComとKDDI(仏トランザテルによるローミング)の2回線を利用できる「Active Multi-access SIM」が発表されている。NTT Comでは、回線品質の判定や通信異常の検知のほか意図しない機器にSIMが接続されたことを判定する機能やルーターの初期設定をネットワーク経由で行う機能なども想定する。

 今後の展開としては、基地局を用いた簡易的な位置の特定やアプレットから送信されるデータを一元的に管理するコンソール機能、SIMへのアプリインストールをネットワーク経由(OTA)で行う機能の実現も見込む。NTT Comでは、今回のSIMを用いた新たな活用事例をパートナーとともに拡大していくとしている。