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「1円スマホ」は独禁法違反の可能性、公取委が調査結果を公表

 公正取引委員会(公取委)は、24日に公開された携帯電話の廉価販売に関する緊急実態調査で、スマートフォンが1円など極端に安い価格で販売されている実態について、独占禁止法で禁止される「不当廉売」に当たる可能性があると結論付けた。

14%超の端末が不当に廉価な販売

 2019年に施行された改正電気通信事業法では、携帯電話などの通信プランと端末をセットで契約・購入した際の端末代金の値引き額の上限を、2万円までと定めている。その一方で、端末のみを購入する場合は規制の対象外。また、端末のみの購入と通信契約と端末のセット購入を同条件で行う端末の値引きは同じく規制の対象外となることから、極端に安い端末の販売が続いていた。

 公取委では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話大手4社(MNO)とその販売代理店を対象に、市場の実態を調査。こうした販売方法がほかの事業者の活動を困難にさせる不当廉売に当たる可能性があると指摘した。

 調査中では、極端な廉価販売を行ったことがある販売代理店233社で、調査対象の40機種の販売台数のうち、極端な廉価販売が行われた台数の割合は14.9%に上るとされた。OS別に見るとAndroid端末が19.9%、iPhoneが11.9%で、4万円未満の機種における割合が30.4%と高かったという。さらに、新規契約時では13.9%だったのに対して、MNPで転入したユーザーでは33.6%と廉価販売の比率が高かった。

MNP獲得数の目標が代理店の重荷に

 こうした販売方法の影響として、公取委のヒアリングに応じたMVNO事業者からは「数年間使用した場合の通信費含めたコストやMNOで端末を購入後、MVNOで契約できることが消費者へ説明されるべき」や「MNOの廉価販売の訴求力が強い」としたうえで「こうした中ではMVNOに来る前にMNOに(ユーザーを)刈り取られる」といった声が上がった。

 また、携帯電話を取り扱う家電量販店からも「SIMフリー端末の取り扱いを伸ばす障害になる」とされ、中古端末の販売事業者からも「極端に廉価で販売された端末は中古市場でも価格が低くなる」と事業活動に影響する可能性が指摘された。

 このような極端な廉価販売が行われた背景としては、MNO各社によるMNPの獲得を重視した評価指標にあると見られる。販売代理店からは「MNOから指示があった」という声も多かったという。さらに大手事業者から課されるMNP獲得数の目標は「通常の営業活動では達成できない」や「達成するとさらに高い目標が設定される」といった声も取り上げられた。

MNOと代理店の取引、監視を強化

 公取委では、MNP獲得を重視した評価指標は、それ自体が直ちに独禁法上の問題とはならないとしつつも、高すぎる目標水準は端末の極端な廉価販売など、独禁法上問題となる不当廉売の原因となりえると指摘。独禁法違反行為の未然防止の観点から競争政策上望ましくないとした。

 調査中では、MNO4社のうち「通信事業でも赤字のため補填できていない」と回答した1社以外の3社が、通信料収入などから端末販売の赤字を補填していると回答している。こうしたなかで、1円端末などが大規模かつ継続的に横行する場合は、端末のみを取り扱う事業者の事業活動を困難にするおそれがあり、その場合は独占禁止法上問題となると指摘。加えて通信料金の下げ止まりや引き上げへの懸念も示した。

 今後、MNOと代理店の取引の監視を強化するとともに、独占禁止法違反行為が認められた場合は厳正に対処するとしている。