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短期解約や5G SAへの課題、総務省の有識者会合で携帯各社が現状について意見

 総務省は12日、「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」(第42回)を開催した。MNO各社や一部のMVNO事業者らが参加し、携帯電話業界を取り巻く競争環境についてヒアリングが行われた。本稿では公開された資料をもとに各社の意見を紹介する。

 12日に開催された第1回会合では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、インターネットイニシアティブ、オプテージ、テレコムサービス協会が各社や業界の状況、意見を述べた。

端末販売は減少傾向

 ドコモとKDDIからは、端末市場の動向が明かされた。ドコモによれば、2021年度比で端末販売は微減傾向。KDDIからは同じく2021年度比で「20%以上の減少」と具体的な数字を伴って実情が明かされた。

 ドコモは、端末単体での値引きによる熾烈な割引競争が生まれているとして、結果的に短期解約や転売など新たな課題が生まれていると指摘。キャリア主導での価格への介入は難しいとして、事業法で回線セット割引と端末単体での値引きを合計した額で端末割引の上限額を定めるべきとした。

 楽天モバイルは、過度な安値での端末販売を高額キャッシュバックなど、これまでの競争慣行が「形を変えて市場に残存した結果」と表現し「転売ヤー」の出現など公正な競争が阻害されていると訴えている。

 一方で楽天モバイルでは大幅な赤字は好ましくないとしつつも、同社が顧客獲得のためにやむを得ず赤字価格を設定していることを明かした。そのうえで過度な利益提供による競争慣行を根絶、通信と端末市場それぞれの公正競争を目指すべきと言及している。

 各社では、電気通信事業法第27条の3の規律遵守に向けた取り組みを紹介。回線契約や端末販売時に継続利用を求める案内や販売拒否などの事例が過去にあったことを踏まえ、各社ではあらためてその対策を継続実施している旨を示した。楽天モバイルでは短期解約の多発によりコストが増加しているとして、なんらかの対策を実施する意向を明かした。

ARPUは廉価プラン影響も持ち直しか

 ユーザー1人あたりの収益を示す「ARPU」については、ドコモとKDDIでは大容量プランの拡大によりドコモでは「ARPUは下げ止まりの状況」としている。

 ソフトバンクでは2019年度第3四半期に4400円、2022年度第3四半期で3840円だった具体的な数値も公開。収益体制を構築している海外の通信事業者との格差が拡大していると指摘。国際競争力への懸念があるとして今後の規制の検討は収益を考慮したバランスの取れた議論を求めた。

 楽天モバイルでは継続的な上昇を示しているとしており、2022年時点で1805円。今後も5Gの拡大に伴い、今後もデータ使用量の拡大が見込まれるとする。

 ドコモとKDDIでは、現行法に適合しない旧プランの既往契約は解消、ソフトバンクでもほぼ解消した。今後、MNO各社ではMNPをワンストップで完結する仕組みづくりをすすめる。ドコモでは開始当初は、MVNOの参加は限定的になると見通しており、総務省を通じて積極的な参加を促したいとする。

独立系MVNOは規制見直しを

 「IIJmio」を展開するIIJと「mineo」を展開するオプテージからは、事業法第27条の3について同社のような独立系MVNOにとって負担が大きいほか、市場活性化や新たな価値提供の観点から、独立系MVNOへの規律の緩和の必要性を主張した。

 同法では、独立系MVNOのうちシェア0.7%以上を規制の対象事業者としている。さらに、MNO各社の廉価プランで価格での優位性が低下したMVNOにとって市況は厳しいと指摘。MVNOがMNOに対して支払うデータ接続料については、現状ではMVNOがMNOと同等の品質でサービス提供するのは難しいとする。

 IIJでも、帯域増強などの施策は実施しているとしつつも、MNOと同等の品質にはさらに多くの帯域が必要になるとして、データ接続料のさらなる低廉化の必要性を示している。

 具体的な数字などは開示されなかったものの、mineoからの転出先はMNOのサブブランドが最も多く、廉価プランとあわせて大きな脅威という認識を示した。ARPUについては、IIJでは具体的な状況は公開されなかったが、オプテージでは「マイピタ」や「マイそく」の影響を受けて減少傾向にあるとした。

5G SA「L2接続相当」必要

 このほか、オプテージでは5G SAに向けた課題を指摘。SA(Stand Alone)では、スライシングやMECによる新サービス出現が期待されるが、その独自性を発揮できる「L2接続相当」と呼ばれる仕組みは現時点で実現時期が不透明な状態となっている。

 L2接続相当の場合、MVNOが独自に価格帯の設定が可能になったり、スライシングの活用などサービス設計の自由度が高いことなどのメリットがある。

 一方でMNO各社では徐々に5G SAサービスの提供を進めており、MVNOの市場参入が遅れている。提供時期が大幅に遅れた場合、4GのようなMNOの寡占状態になると懸念が示された。オプテージでは、サービス設計の自由度や料金に課題が残る、L3接続相当での情報は提供されているものの、同社ではL2接続相当でのMVNOへの機能提供時期の明確化が必要とした。

「ホッパー」対策訴え

 IIJによれば、主にMNOへのMNPを目的とした短期解約は「一定の水準で推移している状況」という。テレコムサービス協会からも事業法改正の効果はあったとしつつも、短期解約など新たな課題が生まれている実態が明かされた。

 要因のひとつとしてはMNOによる端末の安値販売とされており、MNP転出手数料や違約金を廃止した事業者側では対応が難しい。IIJとオプテージでは、総務省など行政側での対策を求めた。

 これについて、MNOからは、店舗スタッフの不適切な案内やユーザーの意思に反した乗り換え提案のほか、SIMのみ契約の場合は割引の2万円上限規制の対象外とされていることなどが原因として指摘された。今後、同ワーキンググループ内で端末のみの割引のあり方などについても議論があるとみられる。