ニュース

ドコモ、24年3月期Q3は増収減益 来期以降の回復トレンドに向け足場固める

 NTT(持株)は、2024年度第3四半期決算を発表した。本稿ではNTTドコモの決算についてお伝えする。

NTT 島田社長

増収減益の第3四半期

 ドコモの2024年3月期第3四半期の決算は、営業収益が4兆5673億円で前年同期比1.1%増、営業利益は8339億円で前年同期比7.6%減の増収減益だった。

 セグメント別に見ると、コンシューマー向けの通信事業は2兆5139億円で前年同期比1.8%の減収。金融などを含むスマートライフ事業は9044億円で前年同期比13.6%の増収だった。法人事業は1兆3396億円で前年同期比0.7%の減収となった。

 営業利益はそれぞれ、コンシューマー向け通信事業で4188億円の前年同期比17.9%減。スマートライフ事業では1978億円で前年同期比22.2%の増益。法人事業は2173億円で前年同期比5.6%の減益だった。

 モバイル通信サービスは前年同期比533億円の減収で、コンシューマー向け通信事業の減収をスマートライフ事業がカバーしているかたち。機器収入などは84億円の増収となったが、販促費用などがかさみ、利益減となった。

 今期は顧客基盤強化や通信品質の向上、ARPU向上に取り組む期とされており、来期以降の回復トレンドにつなげる狙い。

ARPUは上昇基調、商材組み合わせでトレンド維持

 コンシューマー向けの通信事業は、eximoの移行促進によりirumoの減収影響は低減した。移行率は61%という。ARPUは前年同期比で減少幅が縮小し、第3四半期は3920円だった。

 ユーザー当たりのサービスの利用額も上昇しており、irumoとeximoにおける実績では前年同期比で30~310円向上したとしている。MNPはプラス傾向を維持しており、ハンドセット解約率は0.63%で低い水準を保っているという。

 dカード PLATINUMの申込者の6割が「eximoポイ活」に加入、「爆アゲ セレクション」加入者がeximoに契約を移行する割合は4.4倍。ドコモでは、爆アゲ セレクションの拡充やポイ活関連などの商材を拡充してARPU向上を図る。

スマートライフ事業が伸長、新カードも年度内提供へ

 スマートライフ事業での決済・金融取扱高は11兆900億円。2024年11月に提供を開始した「dカード PATINUM」は、1月末で会員数34万7000を突破した。カード利用額やクレジットカード積立の利用額もdカード(含むGOLD)に比べて高いという。年度内にも新たなカード「dカード GOLD U」の提供が始まる予定。

 エンタメ事業の収益は1579億円。映像配信サービス「Lemino」が新たな顧客接点の創出につながっている。dアカウントの新規および12カ月未利用のユーザーの利用再開はおよそ23万会員だったとしている。金融サービスについても新規および2カ月連続未利用のユーザーの利用再開は約9万会員にのぼった。

質疑応答

――ドコモの料金プランの動向について。ahamoが30GBに増量されahamoとeximoで「ポイ活」プランがも出ました。どのあたりの料金プランが激戦区で好調なのはどこか?

島田氏
 旧プランからeximoへの移行は想定を上回る比率。ahamoについては容量を増やしたことでユーザー満足度も得られており(ユーザー数も)増加しています。irumoも計画内の数字なので、順調な推移です。

 量販店は厳しい戦いです。ユーザーのニーズに応えるものをおすすめして丁寧な対応をしていくことが重要です。それができるよう人員を量販店に投入していくことが大事なので、そういったこともしています。それが結果につながっていると思います。

――物価があがるなか、料金体系はどうあるべきと考えているか?

島田氏
 モバイルは競争が激しく、単純な値上げは難しいと考えています。どういう料金体系とニーズを踏まえて新プランを作るかということになりますが、ユーザーから見た価値も上がり、事業者としてもコストをある程度カバーできるプランを考える必要があります。

 ドコモも一生懸命考えていると思いますが、単純に値上げするというわけにはいきませんので、常に工夫して見直していかなくてはいけないと思います。

――24年12月に事業法ガイドラインが改正された。端末価格の値引き規制のドコモへの影響と「お試し割」はどう考えているか

島田氏
 お試し割をドコモがどう検討しているかは把握していません。もともと、楽天モバイルが提案したので、楽天モバイルからスタートするのが普通かとは思っています。

 端末価格については過去、規制が変化してきていますが、それぞれのタイミングで市場環境やミリ波利用の普及促進など、環境の変化があります。同じ規制体系を継続するのではなく、臨機応変に変わっていくことは重要だと思います。

――KDDIの社長交代への受け止めは

島田氏
 髙橋社長は強い競争相手でしたから、一抹の寂しさがあります。松田新社長とも新たなフェイズで戦えると思っています。KDDIは、髙橋社長がいろいろとチャレンジをされていました。新たなアイデアを出してもらえれば、それに対応して別のアイデアを出すという原動力になりますから、切磋琢磨できればいいと思っています。

――社名変更についての考えは?

島田氏
 内容は言えませんが検討はしています。定款の変更が発生するので、株主総会に付議する必要があります。5月の決算発表になると思いますが、提案を出していければと思います。グローバルで認知してもらい、存在感を出せるようにしていきたいです。

――ソフトバンクがOpenAIとCristal Intelligenceについて発表した。tsuzumiへの影響は?

島田氏
 Cristal Intelligenceは法人向けということですが、まだ中身について具体的に説明がないので、そこを見ながら対応していきたいです。tsuzumiは600社以上に提案できており、tsuzumi以外のAIでも100社ほどに提供しており、要望に応じて進化させていく必要があると思っています。

 tsuzumiは超軽量型として展開していますが、もう少しパラメーターを増やしてほしいというユーザーの声もあるので、年内に新しいものを出していきたいと思います。いろいろなAIが出てくると思いますが、負けないものを提供できる体制を充実させていきます。

――AIは新たなサービスが登場しているが、島田社長の見方を教えてほしい

島田氏
 DeepSeekについては、いろいろとよくわからないぶぶんがあります。競合相手になりますから研究所で今、調べているところですが詳細はよくわからないところがあります。いろいろなLLM(大規模言語モデル)が出ていますが、しっかりと見ていき負けない製品を作っていきたいです。

――フジテレビについて、ドコモが株主だが今回の件をどう受け止めているか。

島田氏
 フジテレビが早く通常のビジネスを提供できるかたちになるのが望ましいと思っています。第三者委員会で調査が進められていると聞いているので、まずはその結果を見せてもらうことが重要です。それをみたうえで、判断が必要であればドコモと相談していきたいと思います。

 ドコモとしてもコンテンツ制作で協業などしていくこともあると思うので、問題の解決をしてもらうことが重要だと考えています。