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ドコモやNECなど、遮蔽物があってもつながる分散MIMOの実証実験

 NTTとドコモ、NECは、28GHz帯を用いた分散MIMOで、環境情報をシステムが把握し、基地局の分散アンテナを動的に切り替える技術の実証実験に世界で初めて成功した。

技術的な課題への解決策として

 5G以降のモバイル通信でさらなる高速化や大容量化を実現することを目指す際、現在活用されている周波数よりさらに高い周波数帯の活用が検討されている。

 しかし、高い周波数帯は、基地局とスマートフォンのような通信デバイスとの間に立ちふさがる物体(遮蔽物)の影響を受けやすい。そこで、一つの基地局から、多数のアンテナを分散して配置して、ユーザーの端末へ、さまざまな方向から無線を届ける「高周波数帯分散MIMO」が有効な解決策のひとつとみなされている。

 しかし、高い周波数帯では、伝搬距離を確保するため、アンテナの電波放射を特定の方向に集中させる必要があり、周辺の環境に応じて「分散アンテナ」のどれを使うか、その都度、選ぶ「動的な制御」が必要という。

 端末とアンテナがきちんと通信できるか、その品質の情報を得ることになるが、高い周波数帯では、通信品質が急激に変わり、いきなり切れてしまうことも珍しくない。「切断→次の品質情報の取得」まで、切れているかどうかわからないため、分散アンテナを適切に選べない、という課題があった。

 そこで、今回、分散MIMOアンテナ自身が、移動する端末の場所を予測し、適切なアンテナを選ぶ技術が開発された。

 これは、通信エリア内で、常に各アンテナの無線品質をチェックし、最適なアンテナを予測しておく。そして機械学習で、ユーザーの端末の位置を推定し、最適なアンテナがどれか予測。いわば、先回りして通信品質を確保できるアンテナを使えるようにしておくようにした。

実験は成功

 実験の成功により、ショッピングモールや工場など多数の遮蔽物がある環境でも、高周波数帯無線を安定した大容量無線伝送に活用できる可能性を示した。

 また、分散MIMOを用いて遮蔽物の位置を検出する無線センシング技術や、分散MIMOの広エリア化を実現する、次世代ICTコミュニケーション基盤の構想であるIOWNの光無線融合技術の一つであるA-RoF(Analog Radio over Fiber)伝送技術の基礎実証も行った。

 今後は28GHz帯より高い周波数帯、人体など遮蔽物が変動する環境、多数の移動端末収容下での検証を進め、高周波数帯分散MIMOの適用周波数やユースケースの拡大に向けて実証実験を引き続き進めていくという。

 さらに、無線センシングによる移動端末位置や周辺遮蔽物の自動認識の高度化技術、A-RoF活用におる分散アンテナの展開技術の検証も進め、高周波数帯分散MIMOのセンシング活用や設置運用も検討する。