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総務省の電気通信事故検証会議、7月のKDDI通信障害の報告書を公開

 総務省は、2022年7月に発生したKDDIの大規模な通信障害について、「電気通信事故検証会議」の第1回~第3回で検証を行い、その結果を取りまとめた詳細な報告書を公開した。

 KDDIの通信障害については、本誌の過去記事でもその詳細を紹介しているが、報告書の内容に基づき、改めて概要から紹介する。

事故の概要

 2022年7月2日、KDDIおよび沖縄セルラーの多摩ネットワークセンターに設置されている、全国中継網コアルーターのメンテナンスにおいて、ルーティングの誤設定によって当該コアルーターを経由する一部のトラフィックが通信断となった。

 これによって、利用者の端末が送信する位置登録要求信号が繰り返し再送され、全国のVoLTE交換機と加入者データーベースが輻輳(ふくそう)状態となった。

 輻輳により全国的に音声通話とSMSが利用しづらい状況となり、さらに一部の端末では音声通信に必要な位置登録がしづらくなることで、データ通信にも影響を及ぼした。

 KDDIは、VoLTE交換機および加入者データーベースの輻輳を解消させるために、無線設備およびVoLTE交換機(呼制御機能)での流量制限などを実施すると共に、過剰な信号の発生原因となっていたVoLTE交換機6台をシステムから切り離すことで輻輳を解消した。

 事故の影響期間は7月2日1時35分~7月4日15時までの合計61時間25分、影響エリアは全国で、影響数は音声通信(VoLTE)サービスで約2316万人、データ通信(4G/5G)サービスで775万人以上の合計延べ3091万人以上と推計される。

 これらの利用者の中には、物流関連、自動車関連、行政サービス、銀行関連、交通機関など、多様な法人の利用者も含まれ、全国のKDDIおよびそのMVNOサービスの利用者に大きな影響があった。

利用者への周知に関する課題

 KDDIによると、今回の通信障害について、7月8日12時時点の集計で約13万件の問い合わせがあり、その主な内容は「電話がつながらない、使えない」や、「ネットが使えない」、「どれくらいで復旧するのか」、「障害の原因は何か」などであったという。

 KDDIおよび沖縄セルラーでは、自社のWebサイトにて通信状況や復旧作業の状況、復旧作業の見通しなどの情報を掲載、7月2日、3日、4日の合計3回記者会見を開催したほか、auショップやau Styleなどの販売代理店の店頭で周知を行った。

 しかしながら、事故発生直後に限らず、2日目や3日目も利用者から多くの問い合わせがあった。これを受けて、報告書では「利用者に対して必要な情報を十分に提供できていなかったと推測される」と、利用者に対するKDDIと沖縄セルラーの対応には改善の余地があったとしている。

 障害発生当初は利用者へ発信できる情報がほとんど無かったこともあり、障害発生から約2時間後の7月2日3時16分に障害報(第一報)を掲載してから14時間の間、情報のアップデートがされなかった。

 また、障害報(第一報)の内容はタイトル・日時・対象サービス・影響/影響エリアの4項目に限られ、利用者が見つけやすく、わかりやすい情報提供ができていなかった。

 復旧に関しても、「復旧作業終了」や「本格再開」とする表現について、KDDIでは復旧作業終了後に、流量制御などの解除および正常性の確認を経て、本格再開(回復)を想定して案内を行ったが、利用者および一部マスコミは「復旧作業終了」を、「本格再開(回復)」と同義ととらえられたため、混乱が広がった。

KDDIの案内、「復旧作業終了」と、その後の検証について触れている

 「電気通信事故検証会議」では、利用者やマスコミにとって分かりづらい表現や用語の定義が不十分な状態で情報発信を行ったことも、利用者の混乱を招いた要因となった可能性があると結論づけた。

 今回の紹介では、利用者が必要とする十分な情報が得られなかったため、各地の販売代理店で説明を求める利用者であふれるなど、多くの混乱が生じた。

 KDDIでは、利用者目線で影響が想定されるサービスおよび機種などの種類、影響の具体的な内容、復旧の進捗および復旧予定時刻を含む見通し、復旧に時間を要する場合には代替手段、原因や場所などが特定できる場合には原因と場所などの概要について、知り得る限りの情報を、やさしい用語で定期的かつ速やかに発信するという。