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石野純也が「iPhone 14」シリーズの実機をチェック、注目すべきは「通信機能の進化」

iPhone 14シリーズは、通信関連でも注目機能が多い

 iPhone Xから続いてきた“ノッチ”をついにやめ、メインカメラもピクセルビニング対応の4800万画素センサーにパワーアップしたiPhone 14 Pro。初の大画面版・無印iPhoneとなるiPhone 14 Plusが登場するのも話題だ。その一方で、iPhone 14シリーズ全体の共通点としては、“通信機能の進化”が挙げられる。発表会や実機を見て、eSIMや衛星通信への対応など、携帯電話として無線通信機能に対するチャレンジも多い端末という印象を受けた。

 米国版のみで、日本のユーザーにはあまり関係のない話にはなってしまうが、1つ目として挙げておきたいのが、物理SIMスロットの廃止だ。ハンズオンエリアに展示されていたのも、その米国版。iPhone 13シリーズでは、左側面に配置されていたSIMカードスロットがなくなっていた。左側面はアンテナのスリットと音量ボタン、マナーモード切り替えスイッチのみ。凸凹がなくなり、よりスッキリとした見た目になっている。

米国版は、無印、Proモデルの双方が、SIMカードスロットを非搭載。左側面はすっきりした印象になった

 その布石として、アップルはiPhone 13シリーズでデュアルeSIMを採用していた。物理SIMカードなしでデュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)を実現するもの。iPhone 14シリーズにも、その仕様は踏襲されている。物理SIMかeSIMかはあくまで手段にすぎず、目的はDSDSを実現すること――そう考えれば、デュアルeSIMを採用した今、あえてSIMカードスロットを搭載しておく必要はなくなるはずだ。

 一方で、eSIMへの対応にはキャリアの準備も必要になる。日本もMNO4社はすでにメインブランド、サブブランドとも、eSIMに対応しているため、米国と同じモデルを採用することもできそうだが、未対応のMVNOもまだまだ多く、仮に導入されていたとしたら、混乱を招いてしまっていたかもしれない。キャリアによっては、まだまだ手続きの仕方がこなれていないこともあり、物理SIMスロットを残す判断は正解だ。

発表会で紹介されていたように、eSIMプロファイルは複数端末内に保存しておくことが可能。iPhone 13シリーズ以降は、最大2回線まで有効化できるようになっている

 発表会では、米国の3大キャリアであるVerizon、AT&T、T-Mobileの名前が挙がっていたが、アップルのおひざ元なだけに、こうした調整がしやすかったのかもしれない。とは言え、デュアルeSIMを採用した時点で、将来的な方向性として、“スロットレス”を目指していることに間違いはないだろう。世界的にeSIMの対応がもっと進めば、SIMカードスロットを搭載したバージョンの方が珍しくなるかもしれない。

当初は米国3大キャリアのみの対応だが、アップルがスロットレスを目指しているのは間違いなさそうだ

 eSIMのみだと再発行の手続きを取らなければならず、面倒な手順が増えると考える人もいるだろう。アップルは、こうした障壁も徐々に取り除こうとしている。発表会で紹介されていたように、iOS 16には、eSIMを移行する機能が搭載されている。これは、Bluetooth経由でeSIMのプロファイルを転送するというもの。

 eSIMは端末内のチップとインストールしたプロファイルが紐づけられているが、丸ごと新しい端末に転送してしまうという。機種変更の利便性が高まったことも、米国版がスロットレスに踏み切った理由と考えられる。

iOS 16では、セットアップ時などに、eSIMのプロファイルをBleutooth経由で以降できる。ただし、こちらもキャリア側の対応が必要になる

 通信面でのチャレンジとして、おもしろいのが「衛星経由の緊急SOS」だ。米Globalstarとの提携で実現した機能で、緊急時のみ、データサイズの小さな短いテキストを送れるようになる。山間部など、キャリアがエリア化できていない場所はまだまだ多い。日本でも、楽天モバイルがASTの衛星で、このような場所のエリア化を目指している。遭難時など、本当の意味での緊急時に利用するもので、衛星のある方向を表示する機能やテンプレートからメッセージを作成できる機能も備えるという。

「衛星経由の緊急SOS」に対応した
選択肢を選んでいくだけで、短いメッセージを送信できる機能を用意

 同機能は提供開始が11月からで、当初の国は米国とカナダのみ。2年間は無料で提供されるが、それ以降の料金体系は不明だ。中継センターや緊急サービス提供者との連携も必要になるため、展開国は徐々に広げていく可能性が高い。ただし、日本で発売されるSKUも、Globalstarが運用するBand 53/n53には対応することが明らかになっている。あまり想定したくはないが、対象となる国や地域で万が一遭難したような場合は、この機能を有効にできる可能性がある。

スペック表を見ると、日本で発売されるバージョンもBand 53/n53に対応する

 通信機能が進化したのは、iPhoneだけではない。Apple Watchのセルラー版にも、新たな機能が加わる。国際ローミングへの対応が、それだ。残念ながら、ハンズオンエリアに展示されていた実機にはeSIMがセットされておらず、設定メニューなどを見ることはできなかったが、発表会では、日本の対応キャリアとしてソフトバンクの名前が挙がっていた。

Apple Watchは、新たにUltraが加わり、3モデル展開に
新機能として、国際ローミングに対応。海外でもApple Watchを単体で利用できる

 Apple Watchのセルラー機能は、ランニングやスイミングなどの際に、母艦であるiPhoneを持つ必要なく通信するためのもの。これまでは海外渡航中に同機能が利用できず、利用シーンがが限定されてしまっていたが、国際ローミングが可能になったことで日本にいるときと同じような感覚で使うことができるようになりそうだ。ドコモやKDDIの対応も期待したい。